| 獣医行政システム 最近,欧米の獣医行政を見てきて感じたことは,(1)アメリカでは外国育ちの一世が獣医行政府や研究所のかなり高い地位に多数採用されており,獣医行政の国際化やグローバリゼーションに力を注いでいることである.また,行政の重点は,自由貿易の推進,情報システムの超近代化,緊急対応システムの強化と国際化,薬品・生物製剤の国際標準化,国際貿易関係のリスク評価,検疫システムの強化や防疫対策等への経済的評価システムの適用等に置かれており,経済重点主義の行政が敷かれている.(2)ヨーロッパでは,欧州連合(EU)に北欧諸国が加盟したこともあって,EU諸国内でもむしろ高いレベルの獣医行政を維持することに重点が置かれ,新しい法案や国際基準作りが進められており,それを基に国際獣疫事務局(OIE)を通してヨーロッパ中心的グローバリゼーションを押し進めようとする動きがみられるようになってきた.しかし,EU行政には環境問題や市民感覚が反映されているように思える.(3)オーストラリアやニュージーランドでの行政の民営化はわれわれの想像以上に進んでおり,行政の指導権はすでに畜産業界が握っており,日本でいえば獣医師会に相当する組織が獣医行政府を動かしているといっても過言ではない. かような国際情勢下にあって今後の日本の長期の獣医行政はどうあるべきか.行政官やそのOBのみだけでなく,産・学・民の意見をよく取り入れた長期ビジョンを作り,そのために新しい組織や制度を作っていく必要がある.明治以来続けられてきた中央官庁の官僚の運営システムの基本は年功序列型で,2〜4年ごとに配置転換(たらい回し)が繰り返されており,その間に昇進することになっている.この制度は少数のエリート・コースの人々にとっては必要であるかもしれないが,それがよりよい指導者を産むために必要な条件とは思えない.また,この制度では担当官は,よほどの事件でも起こらないかぎり,新しい政策(法律改正など)や防疫計画を作ることをできるだけ避けて通る傾向が強いのは人情である.担当官にやる気を起こさせるためにはおのおのに長期の担当分野を与え,責任を持ってその分野での改革と改善に本腰を入れられるような制度に切り替えてゆく必要があるのではなかろうか. |