農務省の政策:日本の厚生省生活衛生局乳肉衛生課に相当するFSISは米国では農務省食品安全局に属しており,農場から食卓までの一貫した政策が立てやすい構図になっている(図7).APHISに属する獣医局にある疫学および家畜衛生センターには,3つのセンターが置かれているが,家畜疾病情報解析センターは他の2つのセンターの危険性査定に基づいて危険性解析を行い政策を立案している.家畜衛生監視センターでは,鶏肉と鶏卵の安全性確保における基本計画であるNPIPとともに,その他の家畜に関しても家畜衛生監視国家システム(NAHMS)が同様に展開されている.家畜の健康,管理,生産性などについて実施した全国調査に基づき,生産性向上と品質保証に関する査定を行っている.たとえば,「肉牛のフィードロット管理」[23]の膨大なデータ集から,282ドル/頭に相当する注射痕によるサーロインの損害について,接種部位や同種ワクチンの複数回接種等の査定がなされ品質管理に生かされている[24, 25].生産過程における品質管理政策は,畜産関係だけではなく,農場および輸入農産物局危険性管理部では「危険性管理教育計画(RME)」[21]を展開し,その趣旨は次のように説明されている.「農業者は,ほんの数年前とはまったく異なった新しい危険性管理という状況に直面している.米国の生産者は,正しく適用するための危険性管理についての技術と知識を必要としている.RMEの使命は,わかりやすい危険性管理教育を実施し,生産者が種々の危険性を効果的に管理できるように取引先にもこの計画に接する機会を与えることにある」.これは危険性の情報交換の一部であり,また,米国農産物の国際販路拡張のための戦略でもあろう.

図7 畜産物の品質と安全性に関連する米国のおもな行政計画