【資  料】

獣医師の呼称について

1.はじめに(「獣医師」という名称の由来等について)
(1) 日本語の「獣医師」という名称の由来をみてみると,その前身の呼称は,大宝元年(701年)に制定された大宝律令の官位令のなかにうたわれている「馬医(うまくすし)」〔注:馬医を「伯楽」(昔,中国で馬の良否を見分けた人の名に由来する)と称した時期があった〕とされており,「獣医」という名称がみられるようになったのは,寛文2年(1662年)に著わされた療騏大成逢原集(湯原信里著)の序のなかが初めてとされている.その後,いつ頃から「獣医」が「獣医師」と呼称されるようになったのかは明確ではないが,明治45年頃から獣医師法の制定運動が始まり,少なくとも大正元年に全国の獣医師1,000余名が連著のうえ議会に提出した獣医師法制定の請願書のなかで「獣医師」という名称が使用されたとされている.なお,旧獣医師法は,大正15年4月7日に公布(法律第53号)されているが,旧医師法は,旧獣医師法に先駆けてすでに明治39年には公布されている.【日本獣医史学会・長尾壮七日大教授】
(2) 一方,獣医師の呼称を主要外国語でみてみると,次のとおりである.

(3) ちなみに,英語の「Veterinarian」,フランス語の「」,スペイン語の「Veterinario」等の言葉は,もともとはラテン語の「Veterinaria」に由来しており,その語源は,vee(牧獣),teeren(病獣),aert(施術者)からきているとの著述がある.【小澤温吉「獣医の説」から,共立獣医会季報第1号,明治14年5月,共立獣医会発行】
(4) なお,ドイツ語には,「」という言葉と「Tierarzt」(注:「Tier」は動物の意,「Arzt」は医師の意.)という言葉があるが,前者は専門用語として,後者は一般的な呼称として用いられているようである(注:連邦獣医師法の名称は,「」).また,日本語の「獣医」という名称は,中国語の「医」に由来しているものと考えられる.