診     断

 人の症状は,ウイルスおよび細菌による呼吸器疾患ときわめて類似し臨床的に鑑別が難しい.また,動物ではほとんど症状がない.したがって,診断は病原学的,遺伝学的[38, 40]および血清学的に行われるが(表8),わが国では診断用抗原や血清が普及していなく,検査材料の種類,検査目的,経済性などを考慮して,各所で実施できる簡単な診断法の早急な開発が望まれている.著者らは人をはじめ各種動物血清に応用できる簡便な高比重粒子凝集反応を開発した[21, 22].

表8 Q  熱  の  診  断
病原体の分離 病原体の同定 遺伝子診断 血清学的診断
実験小動物 抗原(菌体)検出 Com1遺伝子プライマー 微量凝集反応
 マウスやモルモット  蛍光抗体法 htpB遺伝子プライマー 補体結合反応
発育鶏卵(SPE)  Gimenez染色 QpH1プラスミド遺伝子
  のプライマー
間接蛍光抗体法
 卵黄嚢内接種 PCR法による遺伝子検出   酵素抗体法
培養細胞 電顕による形態学的観察 QpRSプラスミド遺伝子
  のプライマー
イムノブロット法
 BGMやHEL細胞など     高比重粒子凝集反応

治     療
  テトラサイクリン系の抗生物質,ニューキノロン系の抗生剤,リンコマイシン,エリスロマイシンなどが有効で,3〜4週間投与する.臨床症状の改善があっても3週間以上投与しないと再発することがある.

日本分離株の諸性状
  日本分離株は以下のような性状を示す.すなわち,(1)16S rRNAの塩基配列は株間で99.4%以上の高い相同性を示し,本菌は1属1種であることが確認された[13, 14].(2)27KDa主要外膜タンパク質をコードするCom1遺伝子の塩基配列は,相同性がきわめて高く,PCR用のプライマーとして遺伝子診断に応用できることが明らかになった[37, 39].一方,Com1遺伝子は特定の塩基が株により異なり,人の病態別由来株や動物由来株などにより4群に分けられた[37, 38].(3)低分子量(33〜14KDa)のポリペプチド構成と抗原性は株により異なり,病態別や動物由来株などにより4群に分けられた[28].(4)野外にはLPS構造の異なるI相型,II相型および中間型の菌が存在することが明らかになった[1, 27].(5)野外にはモルモットに対し病原性の異なるI相菌が存在すること明らかになった[25, 27].現在,分離株のより詳細な性状を解析している.