人の抗体保有状況

 C. burnetiiに対する抗体は,表3に示すように,微量凝集反応,補体結合反応,間接蛍光(IF)抗体法,酵素抗体法などにより測定されるが,このうちIF法は感度が高く一般的に用いられている.しかし,IF抗体価の何倍以上を陽性とするかは諸家により異なる(16倍から64倍以上の抗体価).著者らは16倍以上の抗体価を陽性と判定している. これまでに報告された成績を表3にまとめた.著者らの成績では,一般の健康者は1990年の調査で60名中3.3%[11],1998年の調査で1,051名中17.4%が陽性,このうち16名は256倍以上の高い抗体価を示し,9名から遺伝子も検出された.仮に64倍以上を陽性と判定しても,44名(4.4%)から抗体が検出される.獣医師に関しては,公衆衛生関係の従事者で約22%[11, 35],小動物臨床の従事者では37%から抗体が証明され,21名は256倍以上の高い抗体価を示し,3名から遺伝子も検出された.また,食鳥処理場の従業員107名中11.2%[11],呼吸器疾患患者では15.2〜45.8%から抗体が検出され[9, 17, 18, 26, 31],畜産関係者,呼吸器疾患患者およびサルコイドーシスの患者に抗体保有率が高く,C. burnetiiによる不顕性感染あるいは顕性感染の可能性が血清学的に示唆される(表3).

表3 人  の  IF  抗  体
由  来 採血年 検査数 抗体(%) IgG IgM IgA 報 告 者
一般の健康者(成人) 1990 60 2(3.3) 1 1 0 Htweら(1994)
  1998 1,051 183(17.4) 150 82 11 石原ら (1998)
獣医師(公衆衛生) 1991 9 2(22.2)       小田ら (1992)
獣医師(公衆衛生) 1979〜1991 275 62(22.5) 48 17 11 Htweら(1994)
獣医師(小動物臨床) 1998 181 67(37.0) 61 22 1 石原ら (1998)
食鶏処理従業員(成人) 1985 107 12(11.2) 8 4 2 石原ら (1994)
インフルエンザ様疾患 1993 55 18(32.7) 18 15 0 長岡ら (1995)
呼吸器疾患(成人) 1982〜1990 184 28(15.2) 12 15 2 Htweら(1994)
呼吸器疾患(小児) 1996 72 33(45.8)       尾内ら (1996)
異型肺炎患者(小児) 1985 56 20(35.7) 7 20 0 To Hoら(1996)
サルコイドーシス(成人) 1998 91 65(71.4)       石原ら (1999)
大学病院来院者(成人) 1996 3,000 155(5.2)       Zhangら(1996)
IF 抗体価16倍以上を陽性,抗体:Polyvalent (heavy- and light-chains)