その他,野良猫が感染源と推定される症例,保菌ダニ糞の吸入により感染したと推定される症例,感染源不明な壊死性リンパ節炎,髄膜炎[32]および発疹[12]の症例もある(表1).また,急性Q熱の回復期に本菌によると推定される壊死性多発性血管炎で死亡した症例もある.一方,静岡県衛生環境センターの長岡および秋山は,Q熱患者の発生した家族の血清学的および病原学的調査を行った結果,健康な家族と飼育犬および猫の全例から抗体と病原体が検出される例があることを報告し,飼育愛玩動物が感染源になった可能性を示唆している(表2)[19, 20].
  外国では大小の集団発生が食肉処理場,羊毛処理場,乳肉加工場などで多数記録され,また伴侶動物や家禽などからの散発発生例や集団発生例もある.さらに,小・中学校や大学で飼育中の動物から児童や学生に集団発生した症例も多数ある.わが国では,1993年に長岡らが静岡県内でインフルエンザ様症状を呈した7集団の学童55名のペア血清中,18検体に抗体価の上昇を認め,このうち13例の急性期血清から本菌を分離し,日本で最初の集団発生例と推定される[18].

表2 Q熱患者の家族構成
患者(年齢,性)   検体採取年月日 抗 体 価 病原体分離
家族および 診断名
飼育動物   IgM IgG
患者A(13,男) 不 明 熱 1994.8.16 32 16
 犬   1994.9.2 NT 16
患者B(14,男) 頸部リンパ節炎 1995.6.30 16 16
 父   1995.7.10 <16 <16
 母   1995.7.10 64 <16
 姉   1995.7.10 32 64
 犬(1)   1995.7.10 NT 32
 犬(2)   1995.7.10 NT 16
患者C(14,女) 不 明 熱 1995.7.3 16 <16
 母   1995.8.11 <16 <16
 姉(1)   1995.8.11 <16 <16
 姉(2)   1995.8.11 16 <16
 妹   1995.8.11 <16 <16
 犬   1995.9.20 NT 128
患者D(10,女) 不 明 熱 1995.3.8 32 64
    1995.4.3 32 256
 父   1995.3.17 <16 <16
 母   1995.3.17 <16 16
 祖母   1995.3.17 <16 16
 姉   1995.3.17 <16 <16
 猫   1995.5.12 NT 128
患者E(5,男) 水 痘(不明熱) 1995.1.19 128 32
 妹   1995.7.11 16 32
 猫(1)   1995.7.4 NT 64
 猫(2)   1995.7.4 NT 32
静岡県衛生環境センターの長岡宏美および秋山真人博士の成績