参考:マレーシアにおけるニパウイルス病 発生状況の予備報告

 豚における疾病
一般に致死率は低いが罹患率は高い.
豚の農場内あるいは農場間の疾病の伝播方法は不明であった.
(1)臨床症状
1.離乳豚
軽度から重度の発咳,致死率,罹患率については種々の報告あり.
2.種雌豚,種雄豚
本病がさらに顕著になると,呼吸困難,定期的なけいれん,死亡に特徴づけられる重度の呼吸障害(痰を伴わない深い咳もしくは開口呼吸)がみられた.
雄豚では急性経過をとり,数時間で死亡することもある.そこまで激症でないものでは鼻からの粘液膿性の分泌物がみられ,肺炎の症状を示すものが多かった.
3.哺乳豚
けいれんおよび他の神経症状
(2)剖  検
肺はおもに横隔葉におけるさまざまな段階の硬化と肥大,小葉間結合組織の肥厚
気管断面にはさまざまな粘度の滲出液が認められる
腎は皮質,髄質とも充血
点状出血のあった1例をのぞいて脳は正常
その他の内臓器官は正常
 他動物の症状
 感染地域では犬,猫,馬および山羊は血清学的に陽性であった.
 犬; 症状を示した犬の病変は豚の場合もしくはジステンパーに類似し,腎では高度の出血および充血,気管および気管支では滲出物がみられた.
 伝播様式
 豚における感染実験はオーストラリアの連邦科学産業研究機構のAAHL(家畜衛生研究所)で行われた.
 (1)豚での経口感染実験
臨床症状が発現するまでの潜伏期は14〜16日間
症状および剖検では軽度
ウイルス分離は継続中
(2)非経口的感染実験
ウイルス接種された2頭の豚は重度の症状を示し,1頭は中枢神経系の異常,もう1頭は呼吸器系の異常を示した.攻撃試験から7〜10日以内に症状が発現.
(3)接触感染実験
暴露おそらく接触試験時にただちに起こる.中和抗体は14日目に検出されたが症状は示さなかった.
扁桃と気管上皮においてウイルスが増殖し,気道内に汚染細胞片があることからして,このウイルスは少なくとも咽頭および気管支分泌物により伝播されるということが示唆される.
他の結果については現在調査中.

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