参考:米国における1997年の狂犬病調査

カナダとメキシコにおける狂犬病
 1997年にカナダで報告された家畜および野生動物の狂犬病は,検査により確認されたもので234例,臨床的に診断されたもので4例であった.両者の合計は,1996年の297例という報告数を19.9%下回っている.減少の原因はおもに,キツネの狂犬病の報告数が減ったことにある.キツネの報告数は51.2%減少し(1996年の82例と比べ,1997年は40例),1997年の全狂犬病感染動物数の16.8%(40/238)にあたる.一方,コウモリの狂犬病の報告数は30%増加し(1996年の40例と比べ,1997年は52例),全狂犬病感染動物数の21.8%(52/238)を占めている.この他に1997年の報告数で比較的大きな割合を占めている動物種としては,最も報告頻度の高いスカンク(40.3%:96/238)を筆頭として,牛(10.1%),犬(6.3%),猫(3.4%)が挙げられる.カナダでは,1997年,人の狂犬病感染例は報告されていない.
 1997年にメキシコで報告された家畜および野生動物の狂犬病は,検査により確認されたもので715例であった.この数は,1996年の1,203例を40.6%下回っている.また,狂犬病の感染が確認されたすべての動物の数のうち,犬が73.1%(523/715)を占めている.犬の狂犬病の症例数は,1996年(859例)と比べ,39.1%の減少を示している.犬以外の動物では,牛で118例,猫で28例,スカンクで11例,ウマ科で9例,コウモリで6例,コヨーテで1例,山羊で1例,豚で1例が確認され,その他15例については種が不明である.一方,人については23例が確認されており,1996年(22例)に比べ,4.5%の増加を示している.感染源と思われる動物は,20例が犬,2例がコウモリ,1例がキツネとされている.
考   察
  報告の提出やサンプルの検査については,州ごとに異なる方法が採用されている.調査の方法も,多くの州では受けた報告をまとめる形態をとっているが,なかにはもっと積極的な調査を行っている州もある.狂犬病の検査を行った動物の数に関しては,報告のない州が多い.報告のある州については,検査で陽性が確認された動物のパーセンテージが,さまざまなファクターによって,実際の値からずれている場合もある.したがって,そのような報告の値は当該の州における狂犬病の傾向をおおまかに示しているにすぎず,しかもそれは,今述べたずれを補正しない限り,報告の提出方法やサンプルの検査方法が同じ期間のみでしか通 用しないものと見るべきである.狂犬病の罹患率(あるいは発生率)は,ほとんどの動物種について,明確に把握できていない.報告されている症例数は,病気の発生状況をおおまかに反映しているにすぎず,その地域の野生動物や家畜のあいだでどのぐらいの範囲にウイルス感染が及んでいるかを示すものではないのである.本報告では,検査により狂犬病と確認され,州や準州やコロンビア特別 区の衛生部局からCDCに報告されたケースのみを扱っている.したがって,検査を受けていないために狂犬病と認知されていない動物も多数存在する.

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