参考:米国における1997年の狂犬病調査
犬―犬の狂犬病は,1997年に126例報告されており,1996年の111例に比べ,13.5%の増加を示している.犬の狂犬病の報告数が最も多いのはノースカロライナ州(18例)であり,プエルトリコ(15例)とテキサス州(11例)がそれに続いている.テキサス州南部では,コヨーテと犬のあいだで流行している狂犬病に感染した犬のケースが2例確認されているが,1993年に同地域で記録した42例と比べると,大幅な減少を示している.この他に犬の狂犬病の報告数が5例を超えた州としては,ジョージア州(8例),アイオワ州(6例),オクラホマ州(7例),ペンシルヴァニア州(6例)が挙げられる.一方,21の州とコロンビア特別
区では,犬の狂犬病は報告されていない.
その他の家畜―牛の狂犬病の報告数は,1996年には131例であったが,1997年には122例に減少している.牛の狂犬病の分布は,中央部諸州ではスカンクの分布に従い,北東部および中部大西洋岸の諸州ではアライグマの分布に従っている.牛の狂犬病の報告数が特に多いのは,アイオワ州(25例),ニューヨーク州(15例),ノースダコタ州(15例),ペンシルヴァニア州(12例),サウスダコタ州(10例)である.この他に牛の狂犬病の報告数が5例を超えている州は,テキサス州(9例)とオクラホマ州(7例)だけである.牛以外の家畜で狂犬病の感染が報告されているケースとしては,ウマ科(馬,ロバ,ラバ)が47例,めん羊が7例,山羊が6例,フェレットが1例,豚が1例ある.
季節的な傾向
アライグマの狂犬病の報告頻度曲線は,ほぼ単峰形をなしている.春には4月にピークを迎え,その後夏の7月まで減少を続け,9月にわずかな増加を見せるが,最低値を記録する11月までふたたび減少を示すのである.一方,スカンクの報告頻度曲線は双峰形をなしている.春の4月にピークを迎えた後,夏まで減少するが,10月に2回目のピークを迎える.コウモリの狂犬病の報告頻度は,最低値を記録する1月から徐々に増加して9月にピークを迎え,その後12月まで急激な減少を示す.キツネの狂犬病は,月当たりの報告頻度が低く(5月と6月[いずれも65例]を除いて50例未満),その曲線は3月から8月にかけて高い値を示す単峰形をなしている.
猫の狂犬病の報告頻度曲線は,単峰形をなし,7月に顕著なピークを示している.しかし,犬の狂犬病の報告頻度曲線は波状のパターンを示し,明確なピークは存在しない.牛の狂犬病の報告頻度は,1月に最頻値を示した後,3月から5月にかけてふたたび増加を見せている.この3月から5月にかけての増加は,スカンクでみられる春のピークを反映しているものと思われる. |