参考:米国における1997年の狂犬病調査

 キツネ―キツネ(主としてV. vulpes)は,1997年に報告された全狂犬病感染動物数の5.3%を占めている.その1997年の報告数は,1996年の412例を8.7%上回り,448例となっている.アラスカ州では,212.5%の増加を示している(8例から25例へ).キツネの狂犬病が今なお増加している地域の多くは,アライグマの狂犬病が流行している州に相当する.メイン州(32例),メリーランド州(44例),ニューヨーク州(53例),ペンシルヴァニア州(31例),サウスカロライナ州(30例)では,それぞれ1996年に比べ,17例,10例,17例,11例,16例の増加を示している.また,フロリダ州(38例),ジョージア州(31例),ヴァージニア州(46例)でも,それぞれ7例,7例,8例という顕著な増加をみせている.メイン州の一部,ニューハンプシャー州北部,ニューヨーク州,ヴァーモント州といった米国北東部を除いて,東部諸州で報告されているキツネの狂犬病の大半は,アライグマ型の狂犬病ウイルスの感染によるものと思われる.報告数の大幅な減少がみられたのは,テキサス州(1996年の60例から1997年の13例へ)とヴァーモント州(23例から2例へ)である.テキサス州における減少は,現在実施中の野生動物に対する経口型ワクチン投与プログラムが効果 をあげたものとも考えられる.
 その他の野生動物―プエルトリコでは,マングース(Herpestes auropunctatus)の狂犬病が53例報告され,1996年の36例を47.2%も上回った.その他の動物で 狂犬病が報告されたものとしては,ウッドチャック(Marmota monax)が55例,ボブキャット(Felis rufus)が18例,コヨーテ(C. Latrans)が7例,ビーバー(Castor canadensis)が5例,カワウソ(Lutra canadensis)が5例,オポッサム(Didelphis virginiana)が3例,ウサギ(Oryctolagus cuniculus)が3例,オオカミと犬の雑種(C. lupus×C. familiaris)が2例,マスクラット(Ondatra zibethicus)が1例,リス(Sciurus sp)が1例あげられる.ノースダコタ州で報告されたマスクラットの症例を除いて,げっ歯類およびウサギの狂犬病はすべて(主としてウッドチャック[55/65例]),アライグマの狂犬病が流行している州で報告されている.また,テキサス州南部のコヨーテ型狂犬病に感染したコヨーテの数は,減少を示している(1997年において4/7例).
家畜の狂犬病
 家畜は,1997年に報告された全狂犬病感染動物数の7.2%を占めている.その報告数は,1996年の574例から6.3%増加して,1997年には610例となっている.犬および猫の狂犬病の報告数は,それぞれ1996年に比べ,13.5%と12.8%という増加を示しているが,牛の狂犬病の報告数は,6.9%減少している.猫の狂犬病の報告数は,犬あるいは牛の報告数の倍以上となっている.州単位 で見た場合,家畜の狂犬病の報告数が最も多いのはアイオワ州(63例)であり,ペンシルヴァニア州(58例)がそれに続いている.
 猫―猫の狂犬病は,1997年に300例報告されており,1996年の266例に比べ,12.8%の増加を示している.猫の狂犬病のほとんどは,アライグマの狂犬病が流行している州で報告されている.それ以外のケースは,主として中央平野部の諸州で報告され,その大半はスカンク(テキサス州ではキツネも考えられる)の狂犬病が飛び火したものと思われる.11の州では,10例以上の猫の狂犬病が報告されている(フロリダ州で17例,ジョージア州で13例,アイオワ州で27例,メリーランド州で23例,マサチューセッツ州で10例,ニュージャージー州で15例,ニューヨーク州で21例,ノースカロライナ州で22例,オクラホマ州で10例,ペンシルヴァニア州で35例,ヴァージニア州で33例).一方,18の州とコロンビア特別 区では,猫の狂犬病は報告されていない.

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