参考:米国における1997年の狂犬病調査

野生動物の狂犬病
 1997年に報告された狂犬病の症例のうち,野生動物のものはおよそ93%を占めている.また,その7,899例という報告数は,1996年の6,550例を20.6%も上回る数字である.野生動物で最も報告が多かったのはアライグマ(1997年の動物全体の症例数の50.5%)であり,それに,スカンク(24.0%),コウモリ(11.3%),キツネ(5.3%),げっ歯類やウサギを含むその他の野生動物(1.8%)が続いている.コウモリ,スカンク,アライグマ,キツネの報告数は,それぞれ1996年の総計に比べ,29.3%,23.2%,19.6%,8.7%増加している.
 アライグマ―1997年には,4,300例にのぼるアライグマ(P. lotor)の狂犬病が報告されている.これは,1996年の3,595例を19.6%も上回る数字であり,1993年に5,912例という最高値を記録して以来3年間の減少(39.2%)に終止符を打つものとなった.報告の増加はほとんど,以前からアライグマの狂犬病が流行している東部諸州に集中している.1997年にアライグマの狂犬病の増加が報告された州としては,コネチカット州(91.8%; 1996年の182例から1997年の349例へ),ジョージア州(5.7%; 212例から224例へ),メイン州(145.3%; 53例から130例へ),マサチューセッツ州(98.2%; 55例から109例へ),ニュージャージー州(63.2%; 76例から124例へ),ニューヨーク州(22.0%; 685例から836例へ),ノースカロライナ州(16.7%; 581例から678例へ),オハイオ州(5,800%; 1例から59例へ),ペンシルヴァニア州(8.8%; 250例から272例へ),サウスカロライナ州(104.8%; 62例から127例へ),ヴァーモント州(9.8%; 82例から90例へ),ヴァージニア州(12.0%; 383例から429例へ)があげられる.また,北東部および中部大西洋岸の諸州(コネチカット州,デラウェア州,メイン州,メリーランド州,マサチューセッツ州,ニューハンプシャー州,ニュージャージー州,ニューヨーク州,オハイオ州,ペンシルヴァニア州,ロードアイランド州,ヴァーモント州,ヴァージニア州,コロンビア特別 区,ウエストヴァージニア州)では,1997年に3,025例(アライグマの総計の70.3%)が報告されており,南東部諸州(アラバマ州,フロリダ州,ジョージア州,ノースカロライナ州,サウスカロライナ州)では,1,267例(アライグマの総計の29.5%)が報告されている.
 一方,1996年に比べ,狂犬病に感染したアライグマの報告数が減少した州としては,アラバマ州(26.8%; 56例から41例へ),デラウェア州(23.1%; 52例から40例へ),フロリダ州(<1%; 198例から197例へ),ニューハンプシャー州(30.8%; 26例から18例へ),ロードアイランド州(54.5%; 22例から10例へ),ウエストヴァージニア州(22.2%; 63例から49例へ)があげられる.テキサス州(80.0%; 25例から5例へ)およびアイオワ州(2例から0例へ)でも報告数の減少がみられるが,これらの地域にはアライグマ型の狂犬病は存在せず,報告されているアライグマはいずれも別 の型の狂犬病ウイルス(主として,テキサス州ではハイイロギツネ型,アイオワ州ではスカンク型)に感染していた.カリフォルニア州(2例)やミシガン州(1例)でもアライグマの狂犬病が報告されているが,これらも別 の型の狂犬病ウイルスによるものである.オハイオ州を除いて,北はオハイオ川よりも西側,南はアパラチア山脈よりも西側の州は,1997年の時点では,まだアライグマ型の狂犬病ウイルスに冒されていないものと思われる.

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