参考:米国における1997年の狂犬病調査
本報告は,獣医や公衆衛生担当官に,米国における狂犬病の実態を知らせることを目的としている.提供する情報は,狂犬病の地理的な分布や,各種狂犬病の報告例にみられる長期的・短期的な傾向に関するものである.長期的な傾向は,1955年以降の報告の検討によって把握している.短期的な傾向は,1997年の報告例を1996年のものと比較したり,いくつかの種について季節的なパターンを調査したりすることによって見出している.
また,米国と国境を接し,人や動物の出入りが多いという点から,カナダとメキシコについても1997年の調査データの概要を掲載している.さらに,手短な最新情報として,1998年にCDCに報告された狂犬病の症例やその他関連する活動状況についても報告している.
データ収集法
データの収集法は,以前にも記した方法とほぼ同じである.1997年1月1日〜12月31日までに,米国の50州とコロンビア特別 区およびプエルトリコからCDCに報告された動物の狂犬病症例数を参考にした.各州は,症例数のデータを,郡別
および動物種別に毎月提出しており,ほとんどの陸生哺乳類について,一般 名(通常は,少なくとも属のレベルを掲げ,しばしば種のレベルまで分類されている)にしたがって報告している.しかし,コウモリについては,目(もく)のレベルでしか報告されていないことが多い.各州はまた,ファクシミリやEメール,フロッピーディスクなどによって,年末報告も寄せている.一部の州では,Public
Health Laboratory Information System(PHLIS)という動物の狂犬病検査結果 を記録・報告するデータ管理ソフトや,Laboratory Information Tracking
System(LITS)(関連のあるPHLISのカテゴリーも含む)を使って,データの報告をおこなっている.すべてのデータは,州や準州の衛生局員と年末の総計を電話で照合するなどして確認されている.カナダのデータは,Dr.
Ron Rogers(Animal Health and Production Division, Canadian Food Inspection Agency)から,メキシコのデータは,Dr. Jorge
Dominguez(Director Zoonosis Control, Under-secretary for Disease Prevention and Control, Secretaty of
Health)から提供された.
狂犬病感染の疑いがある動物の診断は,州および各地方の衛生部局の指示にしたがい,直接免疫蛍光抗体(DFA)による脳内の狂犬病ウイルス抗原の染色テストをもとにおこなわれた.一部の症例の確認にあたって,神経芽腫細胞の培養物やマウスを利用したウイルスの分離も実施された. |