牛海綿状脳症(BSE)サポーティング・ドキュメント
4.未発生国における予防措置
BSEの潜伏期間は長いことから,該当する危険因子が存在する国では,病原体が,その確認に十分な発生を起こさずして存在する可能性がある.これらの国では,感染牛が摘発されずに処理され,牛用の飼料として再利用されている可能性がある.さらに,BSEの発生が認められていない国では,可能な限り,
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危険因子がどの程度存在するのかを確認するための調査を実施すべきである.すなわち,すべての動物のTSEの発生率,哺乳動物の副産物の廃棄および処理の方法,反芻動物に給与される飼料中の肉骨粉の飼養の有無,由来,配合比率. |
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TSE病原体を高濃度に含む組織を反芻動物用の飼料から排除することを検討するのが望ましい. |
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飼料用の肉骨粉を生産するための哺乳動物の副産物の処理の最低基準を検討するのもよい. |
5.人および動物へのリスクの最小化
人および動物へのリスクは,感染への暴露を減らすことにより,排除することができる.予防的措置は,感染性の組織別分布に関する知見(上述)および可能性のある感染ルート(上述)を考慮して決定すべきである.
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飼料を介して感染に暴露された牛のみが,本病に感染しているリスクを有する.感染性は,6カ月齢以前のBSEの潜伏期間にある牛のどの部分にも検出されないと考えられる.6カ月齢以降の牛では感染性はCNSおよび細網内皮系に限定されると考えられる.したがって,人および他の動物への理論的なリスクを低減させるための制限は,感染に暴露された6カ月齢以上の牛の次の組織(特定リスク物質:SRM)およびこれらの組織由来の蛋白質を対象に適用されるべきである.―脳,眼,三叉神経節(これらの組織の制限は,舌を除いた頭部を指定することにより理想的に行うことができる.),脊髄,扁桃腺,胸腺,脾臓,腸(十二指腸から大腸まで),後根神経節(尾椎を除く脊髄を指定することにより理想的に制限することができる.). |
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これらの制限は,本病の発生が高頻度でみられる場合または危険因子により相当数の発生が将来みられることが示唆される場合に検討されるべきである.さらに,枝肉のカット処理中に露出する肉眼で識別可能な神経組織およびリンパ組織を除去・処分することにより安全性が高まる.これらの組織は明らかに,部分肉への処理時に除去することができる.国際的に取引された枝肉からのこれらの組織の除去は,輸入国の問題である. |
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感染効率は,消化管を介してより非経口的な暴露による場合の方が高いことから,同量の組織が投与される場合には接種される(故意的にまたは偶然に)場合の方がリスクは大きい.この要因は,人用または動物用医薬品の原料用の牛組織の規定に関する決定を行う際,または,接種が生じるおそれがある分野に従事する従業員への衛生的指導を行う際に考慮する必要がある. |
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BSEの発生が疑われる牛は,どの国でも,強制的に殺処分し,マニュアルに定められている診断方法に基づき脳を検査すべきである.BSEが確認された牛の死体は,いずれの部分も食用,飼料用その他の目的に利用されないよう,完全に処分されるべきである. |
VII 定義および説明
1. |
OIE国際家畜衛生規約においては,肉骨粉は,動物組織の副産物の熱処理(化製)により生産される蛋白製品と定義され,中間製品も含む. |
2. |
OIE国際家畜衛生規約第3. 2. 13. 5.章に関し,英国は1996年4月,哺乳動物の肉骨粉の家畜用飼料または農業用肥料としての使用を禁止する新たな規制を導入した. |
参考文献(省略) |