参考:米国における1996年の狂犬病調査

 両症例ともCJDの疑いがあったので,組織学的試料の準備に必要なプロセスによってどちらの症例も狂犬病の診断が1カ月以上遅れた.狂犬病の判断は,既知の感染歴がない場合でも,疑いのあるウイルス試料の急速進行性脳炎の鑑別診断で行うべきである.この2つの症例は,1993年以降,死亡後に狂犬病と診断された6番目と7番目の症例である.
  1997年3月以降,狂犬病ウイルスのアライグマ変異株に感染したアライグマの症例がオハイオ州から継続的に報告されている.この症例はペンシルヴェニア州西部のアライグマ狂犬病の同種動物間流行の伝播に関連したものである.感染地域の特定のために,当該地域では,州全域での受動的監視システムに加えて,CDCの支援を得て能動的監視プログラムによってデータ収集が行われた.1997年3〜8月の6カ月間でオハイオ州で75件の狂犬病症例が発見された.うち55件は陸生動物のもので,アライグマが51件を占めている.アライグマ狂犬病の報告があったのは,マホーニング郡(38件),コロンビアナ郡(7件)およびトラムバル郡(6件)の3郡である.残りの陸生動物4件のうち3件(スカンク1件と猫2件)はマホーニング郡からの報告症例で,狂犬病ウイルスのアライグマ変異株に感染したものであった.4件目はホルムズ郡での犬の報告症例で,中北部のスカンク変異株に感染したものであったc).中西部諸州へのアライグマ狂犬病のさらなる伝播を防ぐため,1997年に約25万回分のV-RG(狂犬病ワクチン糖蛋白質組み換え型)ウイルスワクチンがオハイオ州の3つの郡の総面積700平方マイル(約1,800平方キロメートル)の地域に配布された.
補  遺
  脱稿後,新たに2件の人間の狂犬病症例がCDCに報告された.1件は1997年10月17日にテキサス州ハリス郡出身の71歳の男性がヒューストンにおいて狂犬病で死亡したもの,もう1件は1997年10月23日にニュージャージー州モリス郡出身の32歳の男性が同州デンビルにおいて狂犬病で死亡したものである.暫定的な情報によると,どちらの症例でも患者はコウモリとの接触歴があり,気付かずに咬まれた可能性がある.両症例についての調査は継続している.
(米国獣医師会雑誌211巻12号,1997年12月15日発行から)


c)オハイオ州コロンバス郡にあるオハイオ州保健局のSmith KAからの個人通信,1997年.

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