【参考】

米国における1996年の狂犬病調査

John W. Krebs, Jean S. Smith, Charles E. Rupprecht, James E. Childs

the Viral and Rickettsial Zoonoses Branch, Division of Viral and Rickettsial Diseases, National Center for Infectious Diseases, Centers for Disease Control and Prevention, 1600 Clifton Rd NE, Atlanta, GA 30333.

 著者一同は,各州,自治領,および特別区の保健当局,農業当局,および研究機関による狂犬病調査データの提供,カナダ政府とメキシコ政府による狂犬病調査データの概要の提供,および国立感染症センター(National Center for Infectious Diseases),ウイルス症リケッチア症部門(Division of Viral and Rickettsial Diseases),バイオメトリック・アクティビティのKaroyle Colbertと疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention),全国免疫プログラム・データ管理部門のTara Strineによる図表作成への協力に謝意を表する.

要  約
  1996年には,49州,コロンビア特別区,および自治領プエルトリコから疾病管理予防センターに対し動物の狂犬病症例7,124件,人間の狂犬病症例4件の報告が行われた.全症例のうち,92%近く(6,550件)が野生動物で,8%(574件)が家畜であった.報告された症例の総数は1995年の7,881件から9.6%減少した.この減少は大部分,アライグマの狂犬病報告症例の減少によるものであるが,大部分の動物グループに症例減がみられている.犬変異株に起因するテキサス州中西部におけるキツネの狂犬病とテキサス州南部における犬とコヨーテの狂犬病の別個の同種動物間流行に関連する症例数は減少をみせている.テキサス州の1996年の症例報告は1995年に比較して,キツネの狂犬病が56.2%減(60件),犬の狂犬病が72.7%減(15件),およびコヨーテの狂犬病が76.3%減(19件)である.全国のコウモリの狂犬病の件数(741件)は5.8%減少したが,陸続きの48州中46州で報告されている.狂犬病ウイルスのアライグマ変異株の地域的流行がみられる4つの東部沿岸諸州では症例報告総数が大幅に増加した.メイン州(29.7%,101件から131件),メリーランド州(44.2%,441件から636件),ノースカロライナ州(59.0%,466件から741件),およびヴァージニア州(33.3%,459件から612件).この他,フロリダ州(6.4%,251件から267件)とジョージア州(3.1%,294件から303件)でも増加が報告されている.家畜の中で狂犬病症例の報告が最も多い動物は引き続き猫であった.家畜の症例数は,猫が266件(7.6%),牛が131件(3.7%),および犬が111件(24.0%)と減少している.1996年には31州とコロンビア特別区で動物の狂犬病の減少が報告された.1995年に減少が報告されていたのは,18州と自治領プエルトリコであった.1996年に狂犬病の症例報告がなかったのはハワイ州だけである.人間について報告された狂犬病症例のうち2件は米国内でコウモリに関連した狂犬病ウイルス変異株に感染したものであり,残りの2件は米国外で感染したもので,犬に関連する変異株によるものと同定されている.