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行事等報告


 〈獣医師問題議員連盟 谷津義男会長〉

 60年という歴史を刻んできた獣医師会の皆様に心から敬意を表する次第です.
 本日は獣医師問題議員連盟事務局長で法務大臣でもある森先生に出席いただいておりますが,宮路幹事長は本日開催の税制調査会の正副会長会議に出席されており,私もこの後,会議に出席いたしますが,宮路先生には祝賀会の方への出席をお願いしておりますので,その旨ご理解のほどお願い申し上げます.
 山根会長からご挨拶がありましたが,この60年の間に様々なことが起りました.92年ぶりの口蹄疫の発生にはじまり,今,インフルエンザが猛威を奮うことが懸念されています.このようなときに必ずご対応いただくのが獣医師の先生方で,その苦労を察する次第です.特に最近,従来日本になかった疾病が発生していますが,先生方も学習,研究をするとともに,至急,対策を講ずるという,二律背反的な対応をされる等大変な努力をされています.
 先ほど斉藤大臣が父親を見て獣医師になるまいと思ったと話されたが,私は近い経験をしています.私の事務所の隣に農業共済組合の事務所があり,共済の方たちが遠方に出かけるときに,国会議員になってからも,夜,留守番させられたことが数回あります.そういうときにかぎって問題が噴出します.急患の連絡で,すぐに獣医師へ電話しようと試みますが,電話番号もわからず,あたふたしていると先方から早くしろと電話で怒鳴られるといった経験をしており,先生方の大変さを身をもって理解しています.
 石破大臣も話されましたが,産業動物診療獣医師が不足している問題は,一つには共済事業における,診療点数表に基づく診療料金の低額等の問題があり,これを改善する必要があると考えています.また,小動物を診療する獣医師については,街の至る所に動物病院の看板があり,これを見ても,多くの先生が活躍なさっていることと理解し,感謝を申し上げる次第です.
 今後,重要な問題が起こった際も,私の同期生である北村直人先生にすぐに相談し,制度の改正や資格の問題の他,学校飼育動物等の様々な課題について,一つ一つ獣医師問題議員連盟でしっかり対応してまいりたいと考えています.
 また斉藤大臣から話のあった,生物多様性基本法は先の国会で議員立法により成立することができました.これを中心的にまとめられたのは議員連盟の先生方で,世界に先駆け本法が成立したことは嬉しいかぎりですが,これには獣医師の先生方にご示唆いただいたという経緯があり,今後色々な面でご意見ご指導いただきたいことをお願い申し上げお祝いの挨拶といたします.

(4)来賓ご紹介・祝電披露
司会から来賓(別記)の紹介が行われた.

(5)事業報告
大森専務理事から次のとおり事業報告が行われた.
〈社団法人日本獣医師会 大森伸男専務理事〉

 日本獣医師会が,昭和23年に日本獣医協会として農林大臣の認可を受けて60年を経過いたしました.その歩みについては,お手元にお配りした記念誌にお示ししたとおりですが,最近10年間における主な歩みにつきましてご報告をさせていただきます.
 先ほど,山根会長より挨拶させていただいたとおり,この10年間,食の安全の確保,食料自給率の向上,各種の感染症対策,また,人と動物の共生や自然災害対策を含む地球環境の保全,更には,専門職業人を含め,業界団体・企業の倫理が社会的関心を集めてきました.これらはいずれも我々獣医師の職責に直接関わる課題であり,日本獣医師会は,会員である地方獣医師会ともども問題意識を共有し,獣医師会活動を推進してきたところです.
 先ず,獣医学教育の改善問題につきましては,日本学術会議をはじめ,全国大学協議会などと合同して獣医学教育のあり方懇談会を組織し,獣医学教育課程を学部体制に整備すべく,特に国立大学獣医学課程の再編統合と獣医学教育の外部評価体制作りに努力してきました.
 獣医学術の振興・普及につきましては,平成17年度の日本獣医師会学会年次大会を日本獣医学会学術集会との初の連携大会として,秋篠宮殿下ご臨席のもと,つくば国際会議場において開催しました.また,獣医師の自己研鑽と自己学習とを支援し,獣医師の社会的評価と人材育成を推進させるための獣医師生涯研修事業を平成12年度から開始しました.
 感染症対策と食の安全確保対策としては,平成13年9月にBSEが確認されたとの報告を受け,いち早く,
五十嵐会長緊急提言をとりまとめ,原因の究明と感染源の排除,家畜死体の適正処理,家畜個体識別の制度化,食肉衛生検査の徹底と診断法の整備・確立の4点を与党対策本部及び関係省庁に要請するとともに,BSEの病名について,狂牛病を改めBSEとしての適正呼称について,マスメディアに対し,冷静,かつ,科学的根拠に基づく報道を求めました.
 平成14年には,感染症法の改正が政府部内で検討されたことを受け,共通感染症の予防,診断,まん延の防止に係る獣医師の果たすべき役割の明確化などを求め,改正感染症法において獣医師の果たすべき責務が明文化されました.
 更に,狂犬病対策につきましては,折しも平成18年11月のフィリピン帰国者に相次ぐ狂犬病の発症死亡例の発生を受け,与党の先生方のご指導を仰ぎ,国内の予防対策について自治体と獣医師会との連携による地域ネットワーク体制の枠組み整備を推進することができました.
 動物愛護管理対策としては,平成11年に外来生物・移入種の遺棄・逃亡,一方で,希少種の保護等による生物多様性の確保の必要性を訴え,外来生物新法の制定に寄与させていただいたほか,平成13年には,身体障害者の方の介助の役割を果たす補助犬の育成と利用の円滑化に果たすべき獣医療の役割を提言し,身体障害者補助犬法の制定をみました.
 また,平成16年の動物愛護管理法の見直しに際しては,与党の先生方のご指導を仰ぎながら,動物の個体識別による所有者明示措置,動物愛護管理基本計画制度の導入,危険動物の管理規制の強化,動物取扱業者登録制度,実験動物福祉規制の導入を提言し,これらの全てが法改正に反映されたところです.
 更に,法律の改正と並行して,家庭動物のマイクロチップによる個体識別登録事業にいち早く取り組み,平成14年度からは動物愛護全国団体の4団体と協同で動物ID普及推進会議(AIPO)を立ち上げ,環境省のご指導の下で個体登録事業の全国一元運営を推進しているところです.
 次に,日本獣医師会の組織内の対応について報告します.
 会員組織につきましては,平成10年に社団法人川崎市獣医師会,また,平成12年には仙台市獣医師会に会員加入をいただき,現在,全国の55の社団法人都道府県・政令市獣医師会により組織されるに至ったところです.
 平成15年には,獣医師の職域の多様化の動向等を踏まえ,日本獣医師会の公益事業活動の企画推進の場を整備することとし,職域別の事業運営機関として6つの部会制を導入したところです.これまで,部会活動の成果としては,先ほど報告させていただいたとおり,各般の獣医療政策提言活動を行うとともに,阪神淡路大震災,有珠山噴火,三宅島噴火,新潟中越地震等における動物救護活動での経験を踏まえ,緊急災害時動物救護活動ガイドライン,学校飼育動物支援ガイドライン,要指示医薬品の適正使用ガイドライン,野生動物救護対策ガイドライン等の獣医師会の活動推進に当たっての各般の指針の整備を行ったところです.
 獣医師の職業倫理対策としては,各方面において専門職業人の職業倫理が厳しく問われる中,日本獣医師会におきましては,平成11年にマスメディアに対し,インフォームド・コンセント徹底宣言を行ったところですが,その後,動物臨床の行動規範として産業動物,小動物臨床の指針を定め,先に平成7年に定めた獣医師の倫理綱領と合わせ集大成し,会員獣医師に対する職業倫理の普及と獣医学教育課程の倫理教育テキストとしての活用を求めたところです.
 最後になりますが,国民生活の安定,社会経済の発展に占める獣医師及び動物医療の果たすべき役割を広く一般市民に普及・啓発する.このことにより,今後の動物医療の発展と動物関連業界の一層の振興を期するべく,昨年度から動物関係団体・業界の方々から多大な支援とご協力をいただくとともに,関係省庁ご当局からのご後援を頂戴し,「動物感謝デー in JAPAN」の事業を開始したところです.
 以上,創立60年のうち,最近の10年間における主な事業の実施概況を紹介させていただき,事業報告とさせていただきました.



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