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6 さ い ご に 米国におけるVT制度を概括すれば,まず,[1]VTの教育は,AVMAによって養成プログラムの認定が行われ,平準化が図られており,[2]VTの資格認定は,各州の法令に基づき,州獣医事委員会によって行われ,ほとんどの州においては,AVMAの認定施設の過程を修了した後,全国試験(VTNE)を受験してその成績を各州の獣医事委員会に提出させるとともに,州によっては独自の試験を実施し,両者の成績によって合否の判定がなされ,[3]認定を受けたVTの業務の内容等については,州ごとの法令にゆだねられているということになる. これは,米国における獣医師の資格制度とほぼ同様であるといえる. カリフォルニア州でのVTの業務実態については,獣医師の監督下において,診断,予後判定,処方,手術を除いたほとんどの業務をVTが実施していた.一方,別途実施した米国の動物診療施設へのアンケート調査結果では,VTの業務範囲はカリフォルニア州で訪問した動物診療施設で実施しているものに比して限定される傾向にあった. VTの処遇については,制度に基づいて資格を得たものとして,相応の処遇を受けているとの実態を聴取できた.ただし,日本と同様に生涯の職業としてふさわしいキャリアを積むとともに地位と報酬がステップアップしていくような環境が整備されているとは言い難い現状があることは否めないようである. カリフォルニア大学デイビス校付属獣医学教育病院で小動物臨床管理部門のマネージャーを務め,また,カリフォルニア州の獣医事委員会の委員でもあるVTのCindy Savely氏は,初老に差しかかろうかという年齢の婦人であるが,今回の一連の調査活動の中で彼女の言葉が最も印象に残っている.「この職種は,比較的新しい職種であり,技術面においても,処遇面においても向上が著しい.私はカリフォルニア州でVTの認定制度が始まったときに,第1期のVTとして認定されて以降30年間VTとして勤務してきたが,当時と現在ではVTをめぐる状況は全く異なる.今後,獣医学術の進展とともにVTの技術が向上すれば,より社会的評価が高まり,それによって処遇も向上し続けるであろう.」という言葉は,彼女がこれまでVTとしての技術研鑽と職域環境の改善の道のりを確実に歩んできたという自信と,VTという職種の将来を託すことができる後進が着実に育成されていることに対する希望に溢れていた. 米国獣医看護師全国協会(NAVTA)の前身である北アメリカ獣医看護士協会が組織されたのは,1981年である.それ以降,彼/彼女たちは,団結して獣医師・獣医師会と連携し,自らの技術を研鑽しつつ,処遇をはじめとする職域の環境改善に努力した結果,現在の立場を獲得した. それから4半世紀を経過した今,我が国の動物看護職はようやく当時の米国と同じスタートラインに立とうとしている.道のりは長く,平たんではないと思われるが,彼/彼女らの今後の健闘に心からのエールを送るとともに,獣医師・獣医師会,動物看護職養成施設,認定団体,その他の関係団体・企業の方々の温かいご支援を期待したい. |
† 連絡責任者: | 細井戸大成(日本獣医師会) 〒107-0062 港区南青山1-1-1 TEL 03-3475-1601 FAX 03-3475-1604 E-mail : info@nichiju.lin.go.jp |