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解説・報告

米国における動物看護職制度

細井戸大成 (日本獣医師会理事),古賀俊伸(日本獣医師会事務局次長)

 1 はじめに
 我が国の動物看護職をめぐる状況が変革の時期を迎えている.
 多数の小動物診療施設において動物看護職が雇用され,一つの職業分野として定着しつつある現状を踏まえ,本会においては,時宜に応じて動物看護職の在り方についての検討を実施してきた.
 平成18年,小動物臨床部会に設置された動物診療補助専門職検討委員会(以下「検討委員会」)における検討の結果,動物看護職に係る諸問題に対応するためには,まず動物看護職自身が大同団結して現状を認識し,動物看護技術と知識の研鑽に励むとともに,資格制度の創設を含め将来目標に向けての方策を等しく共有することこそが肝要であり,そのための組織化が喫緊の課題であるとされた.
 検討委員会の結論を受け,平成20年2月10日,民間動物看護職認定団体等,関係各位の強力な支援のもと,高松市で開催された日本獣医師会三学会年次大会において,動物看護職の組織化のための動物看護職全国協会設立準備会(準備会)が発足した.平成21年1月の日本獣医師会三学会年次大会(岩手)においては,全国協会の発足に向けて「日本動物看護職協会発起人会等合同会議」が開催される予定である.
 全国協会発足後は,動物看護職の職域環境の整備,教育制度の平準化,認定制度の統一と資格制度の設立等に向け,動物看護職自らが団結して精力的な活動が実施されることとなる.動物飼育者の動物医療に対する多様で高度な要請に応えるためには,動物診療におけるチーム医療体制を確立することが必要であり,獣医師・獣医師会としても,このような動物看護職の活動に対する格段の支援が望まれる.
 このような状況の中で,農林水産省では,平成19年度農林水産研究高度化事業として,「獣医療行為が家畜に及ぼす影響とそれに基づく獣医療行為の明確化」に関する事業を東京大学に委託し,日本獣医師会は,本事業のうち「欧米における獣医療「補助者」の獣医療行為の実態調査」(米国)を受託して,米国の動物看護職の[1]教育制度及び教育内容,[2]資格制度,[3]動物診療施設における業務の実態調査を行うこととなった.
 調査に当たっては,まず,インターネット等を利用して米国各州の動物看護職に関する法令を収集し,動物看護職の認定制度及び動物看護職が実施することを認められている動物医療に関係する行為について解析するとともに,米国内の動物診療施設に対して動物看護職の業務実態に関するアンケートを実施した.
 さらに,カリフォルニア大学デイビス校(UCデイビス)を中心として先進的な動物診療施設が分布していると思われるカリフォルニア州において,動物看護職養成施設,動物診療施設,UCデイビス付属獣医学教育病院等を訪問し,動物看護職の養成状況,認定状況,勤務状況等について実情を調査したので,その概要を以下に述べる.
 なお,米国においては,動物看護職のことを通常はVeterinary Technician : VT(獣医看護士)と呼んでおり,本稿においても,以降米国の動物看護職をVT(獣医看護士)と呼ぶこととする.

 2 調査日程
 平成20年3月3日〜20日

 3 調査実施者
 細井戸大成,古賀俊伸

 4 訪問施設
 (1)VT養成施設
 ウエスタンキャリアカレッジ
  (Western Career College)
 コンサムネスリバーカレッジ
  (Consumnes River College)
 (2)動物診療施設
 シトラスハイツペットホスピタル
  (Citrus Heights Pet Hospital:小動物診療施設)
 ルームスベイシン獣医クリニック
  (Looms Basin Veterinary Clinic:小動物・馬の診療施設)
 アーバービュー獣医クリニック
  (Arbor View Veterinary Clinic:小動物診療施設)
 バード&ペットクリニック,ローズビル
  (Bird & Pet Clinic of Roseville:小動物・エキゾチック動物の診療施設)
 カリフォルニア大学デイビス校獣医学教育病院
  (Veterinary Medical Teaching Hospital, University of California, Davis:獣医学系大学付属動物病院)



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