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行政・獣医事

新型インフルエンザ対策と鳥インフルエンザ
感染予防対策の徹底の要請


 1 新型インフルエンザ対策
 (1)新型インフルエンザ対策行動計画とは
 ア ヒトの新型インフルエンザ及び高病原性鳥インフルエンザの発生に関して,関係省庁の緊密な連携を確保し,政府一体となって対応するため,「新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザに関する関係省庁対策会議」が設置されている.同対策会議においては,新型インフルエンザ対策行動計画(平成19年10月最終改訂)を定め,新型インフルエンザのパンデミックが起こる前からパンデミックがピークを迎えるまでを状況に応じ6つのフェーズに分類し,それらの対応([1]計画と連携,[2]サーベイランス,[3]予防と封じ込め, [4]医療,[5]情報提供・共有等)が規定されている.
 イ 行動計画の策定以降,これに即し,次のような取組が各省庁等において展開されている.
 (ア)都道府県においては,対策本部の設置,行動計画の策定等の体制整備
 (イ)厚生労働省を中心に関係府省庁においては,対策を迅速・確実に実施するためのガイドラインの策定
 (ウ)農林水産省においては,厚生労働省検疫所の協力を得て,主要国際空港における鳥インフルエンザ発生国からの全ての入国者に対する靴底消毒の徹底
 (エ)総合科学技術会議においては,科学技術振興調整費を活用した新型インフルエンザ・ワクチンの生産に関する緊急調査研究の指定
 (オ)外務省,厚生労働省,農林水産省等においては,タミフル等必要物資の備蓄・配布,研究者・医療関係者・動物衛生専門家の能力強化,インフルエンザ・ワクチンの開発等の支援を内容とする国際協力等の推進
 (2)感染症法及び検疫法の一部改正によるインフルエンザの分類
 ア 新型インフルエンザの発生による被害を最小限に食い止めるために,発生前後に必要な対策を迅速かつ確実に実施するため,感染症法と検疫法の一部が改正されることになり,改正法案が,平成20年2月に国会に提出され,衆議院においては4月24日可決,参議院では4月25日可決・成立.5月2日に公布され,5月12日より施行された.
 イ 改正内容の主要な事項は以下の通り.
 (ア)新型インフルエンザ等感染症の類型化
 新型インフルエンザ注1と再興型インフルエンザ注2による感染症を「新型インフルエンザ等感染症」とし,新たな感染症の類型として追加され,インフルエンザは[1]「毎年流行するインフルエンザ:五類感染症」,[2]「鳥インフルエンザ(H5N1以外のもの):四類感染症」,[3]「鳥インフルエンザ(H5N1):今回の改正により二類感染症」,及び[4]「新型インフルエンザ及び再興型インフルエンザが今回の改正により新型インフルエンザ等感染症」とされ全部で4つにインフルエンザが分類されることとなった.
 (イ)鳥インフルエンザは,これまで四類感染症に分類されていたが,H5N1型のウイルスについては病原性が高く,東南アジアを中心に人への感染事例も増加してきています.そのため,我が国での人への感染事例はないものの,発生すれば直ちに入院勧告等の二類感染症並の措置が講じられるよう,平成18年6月から政令指定による指定感染症とされていたが,今回の改正により鳥インフルエンザ(H5N1)は二類感染症に追加された.
 (ウ)疑似症患者に対する法律の適用
新型インフルエンザ等感染症の疑似症患者及び,新型インフルエンザ等感染症の無症状病原体保有者については,新型インフルエンザ等感染症の患者とみなして法律の規定が適用されることとなった.
 (エ)医師の届出,獣医師の届出,感染症の発生の状況・動向・原因の調査の対象に新型インフルエンザ等感染症が追加された.
 (オ)その他新型インフルエンザに関する規定の追加

 2 防疫業務従事獣医師等の鳥インフルエンザ感染予防対策の徹底の要請
 今回,九州地区獣医師会連合会(会長:沖縄県獣医師会福村圭介会長)から,国が備蓄するプレパンデミックワクチンの事前接種の対象に検疫担当者や医療従事者に加え,防疫業務に従事し感染の危険性の高い獣医師もその対象に追加すべきこと等を関係省庁に要請する必要がある旨が,提起された.
 本件については,前記1の(1)に示した「行動計画」におけるプレパンデミックワクチン事前接種の対象を含め,新型インフルエンザ対策の実施における社会機能維持者としての防疫業務従事診療獣医師の位置づけ等を厚生労働省担当官と協議・確認した上で,なお,鳥インフルエンザ等の防疫業務に従事し,鳥インフルエンザをはじめ新型インフルエンザの感染に対し高い危険性を有する診療獣医師に対する,トリ・ヒト感染及びヒト・ヒト感染予防対策については十分な配慮が必要であるとの観点に立ち,今般,鳥インフルエンザ感染予防対策の徹底を別紙により厚生労働省,農林水産省及び環境省に要請した.

注1:新型インフルエンザ
 新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって,一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから,当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの.
注2:再興型インフルエンザ
 かつて世界的規模で流行したインフルエンザであってその後流行することなく長期間が経過しているものとして厚生労働大臣が定めるものが再興したものであって,一般に現在の国民の大部分が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから,当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの.


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