4 今後の課題
二次・紹介診療を行うにあたり,課題の一つとして地域開業獣医師とのよりきめの細かい紹介制度の構築が挙げられる.20年近く大阪において夜間診療を行ってきたことにより十分ではないものの,概ね問題のないスタートが切れたと考えている.その他,高度専門診療を担う獣医師の確保・育成,夜間勤務スタッフの確保や健康管理を含めた福利厚生の充実,高額な医療機器等への設備投資,地域獣医師会,各獣医系大学との連携等課題は多い. 5 今後の展望 紹介制度の更なる発展のためには,診療内容の充実をはかることはもちろん,各獣医師会をはじめ,地域獣医師とのコミュニケーションの重要性を強く感じる.お互いの顔がみえる診療を目指し,電子カルテの共有等による,各開業獣医師との積極的なネットワークの強化を推進していきたい.また,現在わが国では専門医制度がほとんど整備されていないのが現状であり,(株)ネオ・ベッツでは独自の留学システム等により獣医師の養成を行っているが,民間施設のみでは限界があることは明らかであり,業界全体として専門医養成に係わるシステムの構築が望まれる.そのためには獣医師会,獣医系大学,民間の施設の円滑な連携が不可欠であると思われる.夜間診療に関しては,大阪府下にERセンター,ER堺の2つの施設を運営し,ERセンターは地域の夜間診療病院の中核を担うことを目的に,夜間症例に対してもより充実した診断,治療の実践を目指している一方,ER堺はサテライト的な意味合いが強い.ERセンターと連携をはかることで,診察時間の短縮,休診日の設定も可能であり,地域の開業獣医師の協力も含め人材確保も容易であると思われ,同一地域での複数の夜間診療病院の設立の意義は大きい.各地域の開業獣医師が積極的に夜間診療に携わり,各病院間の連携をはかり,飼い主のニーズに応えていくことが重要であると思われる.今後当施設では放射線治療機器,人工心肺装置の導入等も検討しているが,今後とも安定した経営状態を維持し,従業員の安定雇用等にも努力していく考えである. 6 お わ り に 平成17年11月25日付けで(株)ネオ・ベッツが大阪府に申請した「経営革新に関する計画」が,中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律第9条第3項の規定により承認を受けた.このことは獣医業界のなかで,既存の施設の経営を圧迫することのない新しい事業モデルとして公に認められたからに他ならない.現在も個人開業病院が大多数を占めている獣医業界において,個人では対応しきれない診療(高度専門医療,夜間休日診療),高額な設備投資,飼い主から求められる医療の高度化,多様化を考えると,高度専門医療(二次・紹介診療)施設の存在は不可欠なものになるであろう.全国的にも名古屋市獣医師会,兵庫県獣医師会が運営をする夜間診療施設も開設されており,業界全体としてこれらの問題の解決に努めることが我々小動物臨床獣医師の責務であると思われる.ネオ・ベッツVRセンターとしても,紹介症例の診療から得られた貴重な情報,経験を積極的に開示することにより多くの獣医師と問題意識を共有し,高度専門医療,夜間休日診療体制の更なる発展にむけ努力をしていく所存である. |
† 連絡責任者: | 本田善久(ネオ・ベッツVRセンター)
〒537-0025 大阪市東成区中道3-8-15 TEL 06-6977-0760 FAX 06-6977-0761 E-mail : office@neovets.com |