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【別記1】
平成19年度地区獣医師大会決議要望事項等に対する対応の考え方(案)
(今後における獣医師及び動物医療施策の方向)

1 公益法人制度改革が間近にせまる中,今後とも社会的要請に即した獣医師及び動物医療政策の着実な進展を期するためには,先ずは,高度専門職業人としての各職域の獣医師が獣医師会活動を通じ,行政当局の指導と関係機関・団体との連携の下で動物医療提供の質の一層の確保に向けて結束して当たることが求められる.
2 動物医療の質の確保をはじめとする関係施策の実施については,本会においても,これまでも各地方獣医師会等からの要請を踏まえ,関係部会における検討をへ,本会事業に逐次,反映させ推進するとともに,制度的課題については,各関係省庁をはじめ行政機関・団体に要請し,その実現に努めてきているところであり,昨年,9月には,獣医師需給対策等に係る関係省庁(農林水産省,厚生労働省,環境省,文部科学省)担当課室長を一同に会しての需給に関する懇談会を開催し,対応を協議・検討したところである(本誌第60巻第11号753頁〜755頁参照).
3 また,前記2の経過を踏まえ,昨年12月開催の平成19年度第4回理事会においては,獣医師及び動物医療に関する政策課題取り組みの方向を協議し,本会としての基本的考え方と課題に対する対応の方向を「獣医師及び動物医療政策に関する要請の考え方」として取りまとめた(本誌第61巻第2号109頁〜111頁参照).
4 一方,今後における獣医師及び動物医療施策や各地域の獣医師会活動の推進の方向,更には獣医師会活動の課題等については,平成19年度においても,各地区において開催された地区獣医師大会における決議要望事項等として本会に提出いただいたが,本件の対処については,前記3に示したとおり,別紙1に示した考え方を基本に,今後とも必要に応じ本会部会で細部の検討を行った上で事業活動に反映させるとともに,地方獣医師会の協力・支援の下で関係機関・団体とも連携を図り制度問題の実現に向け要請活動等を通じステップアップを目指す.
5 なお,平成19年度地区獣医師大会決議要望等の個別事項ごとの対応の考え方は,別紙1の案によることとするが,関係する課題については,各地域,現場における取り組みについて,引き続き部会の各委員会において各地区連合会獣医師会推薦委員等の参加の下で検討を進める(本誌第60巻第10号686頁〜688頁参照).
【別紙1】
平成19年度地区獣医師大会決議要望事項等に対する対応の考え方(案)
1 日本獣医師会が主として対応する事項
 (1)獣医学教育体制の整備・充実
ア 獣医学教育(産業動物臨床)の整備・充実(北海道地区)
イ 大阪府立大学への獣医学研究科・獣医学部の設置(近畿地区)
ウ 国立大学獣医学科の獣医学部規模への整備(九州地区)
エ 大学における家畜衛生分野教育の充実(家畜衛生職員会)
 〔考え方・対応等〕
ア 「獣医師及び動物医療政策に関する要請の考え方」の2の(1)(略)に示したところによる(本誌第61巻第2号109頁参照).教育改善の必要性は関係者の一致した要請であり.大学をはじめ関係機関の合意形成にむけた努力が求められる.
イ なお,文部科学省においては,高等教育振興施策の一環として複数大学間の共同設置学部を解禁し,これを支援するための戦略的大学連携支援事業を平成20年度新規事業として要求したところであり,今後,獣医学教育課程についても,このような各学間の連携を促進する仕組みを通じての再編による獣医学部体制への整備を期待し,支援する.
 (2)動物診療におけるチーム医療提供体制の整備(動物看護職を含むパラメディカル専門職のあり方)
ア 動物看護師の公的認定(北海道地区)
イ 動物看護士の資格制度創設(中部地区,近畿地区)
 〔考え方・対応等〕
ア 「獣医師及び動物医療政策に関する要請の考え方」の2の(3)(略)に示したところによる(本誌第61巻第2号111頁参照).
イ 今後,動物看護職の社会的認知をはじめ職域環境の整備については,動物診療の質の確保のためのチーム医療体制の確保を目指す中で位置づける必要があるが,小動物臨床部会における検討においては,当面,動物看護職の活動の母体となる全国協会の立ち上げ,中期的には現行の民間認定5団体の認定システムの一元化と養成校(施設)の全国協議組織の実現等を通じ動物看護職の高位平準化対策を,更にこれと併行して動物看護職の出口対策として動物診療に係るパラメディカル専門職の資格制度化を位置づけることとされた.今後とも関係団体・機関の合意形成に努める.
2 日本獣医師会及び地方獣医師会がともに対応する事項
 (1)獣医師需給対策の推進と処遇の改善
ア 産業動物・公衆衛生獣医師の確保対策等(中国地区)
 ・需給バランスの調整,獣医学教育におけるカリキュラムの整備,修学資金給付事業の拡充など
イ 公務員獣医師(勤務獣医師)の処遇対策(東北地区,中部地区,中国地区,四国地区,九州地区)
 ・勤務獣医師の社会的貢献度に見合う処遇の確保(獣医給与表の制定,調整給の充実)
 ・保健所長への獣医師の登用
ウ 家畜衛生関係公務員獣医師の処遇改善と獣医師調査研究費の拡充(家畜衛生職員会)
エ 産業動物診療獣医師の処遇対策(中部地区,中国地区,四国地区)
 ・家畜共済診療技術料の引き上げ・獣医師雇上げ手当て引き上げ
 ・農業団体勤務獣医師の公務員獣医師並みの処遇の確保
 〔考え方・対応等〕
ア 「獣医師及び動物医療政策に関する要請の考え方」の2の(2)(略)に示したところによる(本誌第61巻第2号110頁参照).
イ なお,産業動物診療獣医師の確保については,産業動物臨床部会の検討を踏まえ検討を行い,農林水産省に対し,[1]産業動物臨床教育の充実,[2]職域における獣医師紹介,受入れネットワークシステムの導入,[3]就学資金制度の整備,[4]特定職域・地域優先入学枠の導入,[5]雇上げ獣医師手当ての引き上げ,[6]家畜共済診療点数表の見直し等を要請した(「家畜衛生対策をはじめとする動物医療関係施策の整備・充実について(平成19年8月22日付け19日獣発第122号)」)ところであるが(本誌第61巻第10号682頁参照),今期も引き続き「産業動物診療獣医師の養成・確保と家畜共済事業運営のあり方」について検討する.
ウ また,公務員獣医師の処遇改善については,職域団体である家畜衛生職員会・全国公衆衛生獣医師協議会と連携しながら対応を協議し,[1]都道府県各職域における主務課長ポストの確保,[2]獣医師専管の職場以外の職場における獣医師専門職の配置,[3]地方行政での獣医師が関連する職場の連携,動物行政の一元化,[4]獣医師の処遇改善を含む職場環境の向上のための1ランク上の調整給の確保,[5]産前産後休暇・育児休暇のための代替人員の確保等の処遇改善等について,地方獣医師会と公務員獣医師団体が連携・協調して都道府県当局への対応を進めることを確認した.更に,昨年末,全国知事会会長に対し,本会から獣医師需給問題の解決のための公務員獣医師の処遇改善の必要性について,[1]公務員獣医師への医療職俸給表(一)の適用,[2]採用時から勤務年限に応じた初任給調整手当の継続支給等を要請した(「都道府県勤務獣医師(公務員獣医師)人材確保のための処遇改善対策について(平成19年12月20日付け19日獣発第222号)」)ところであり(本誌第61巻第2号111頁参照),地方獣医師会においても公務員職域団体と連携し,公務員獣医師の処遇対策は,単に職域環境の整備のためとするのではなく,公務員獣医師に対する行政需要に対応した人材確保を図る上において不可欠であるとの観点に立ち,自治体の首長に対し働きかけを行うよう願いたい.
(2)家畜衛生対策の充実・整備
ア 家畜伝染病防疫体制の強化(四国地区)
 ・共通感染症対策,輸入検疫対策,情報の収集・提供
 ・防疫指導獣医師の養成・確保,開業獣医師の家畜防疫活動への参加
イ 家畜衛生組織・施設設備の整備・充実(家畜衛生職員会)
 ・検査・監視指導部門への要員の確保
 ・労安法対応のバイオハザード施設設備の助成
 〔考え方・対応等〕
ア 家畜防疫対策の充実・強化については,畜産・家畜衛生部会等の関係部会における検討を踏まえ,農林水産省に対し,[1]家畜保健衛生所の組織及び機能の整備・充実,[2]都道府県獣医師会との連携の推進,[3]家畜保健衛生業務と食肉衛生検査業務の連携の推進等を要請した(「家畜衛生対策をはじめとする動物医療関係施策の整備・充実について(平成19年8月22日付け19日獣発第122号)」/本誌第60巻第10号682頁参照).
イ 診療獣医師向の技術向上対策については,地方獣医師会の協力の下,平成15年度から恆S国競馬・畜産振興会からの助成を受け,「獣医師育成研修等強化対策事業」により畜種ごとのHACCP方式に基づく衛生管理手法の農場への導入について,技術講習会を,また,動物用医薬品の適正使用対策については,「動物用医薬品残留基準値ポジティブリスト制導入周知啓発事業」により中央講習会と地区講習会を実施した. また,要指示医薬品の適正使用の遵守に対する獣医師の指導と技術研修対策については,産業動物臨床部会において「動物用医薬品指示書交付の手引き」を策定し,産業動物診療獣医師及び都道府県の薬事監視担当部局に送付した.
ウ なお,畜産・家畜衛生部会においては,「家畜防疫推進のための地域ネットワーク体制整備のあり方―特に獣医師会と産業動物診療獣医師の果たす役割―」をテーマとして引き続き検討を行っている.
(3)共通感染症対策の充実・強化
ア 人と動物の共通感染症対策の強化(近畿地区,九州地区)
 ・高度診療施設の整備,国による広域防疫運営の実施,資材の確保
 ・防疫従事者の安全の確保,関係機関との連携
 ・輸入防疫,獣医師専門職の配置,MC導入の促進
 ・医療用狂犬病ワクチン安定供給,動物取扱業者への普及啓発など
イ 動物由来感染症に対する正しい知識の普及啓発(関東・東京地区)
ウ 危機管理の視点からの狂犬病予防対策の取り組み(近畿地区)
 ・行政当局による普及啓発活動の強化,演習・訓練
 ・予防対策必要性の獣医師,獣医師会による発信の継続
エ 狂犬病対策の充実・強化(東北地区,中部地区,中国地区,四国地区)
 ・登録率・予防注射率の向上
 ・都道府県の市町村に対する指導強化
 ・マスメディア活用(TV,ラジオ)による普及啓発,DVDの作成,ガイドラインの改訂
 〔考え方・対応等〕
ア 共通感染症対策については,公衆衛生部会での検討を踏まえ,厚生労働省に対し地域における共通感染症対策の整備・充実として,[1]本庁の感染症対策部門と動物対策部門との一元的な事務執行体制の確保,[2]動物管理センター等を共通感染症対策の中核施設として位置付け,獣医師専門職の配置の促進,[3]共通感染症の検査・診断について動物管理センターと地方衛生研究所の役割分担の明確化,[4]診療獣医師に対する相談窓口の動物管理センターへの設置,[5]「動物由来感染症予防体制整備事業」の活用による診療獣医師と医師及びその関係機関によるネットワークの構築,[6]獣医師会と連携した公務員獣医師,診療獣医師両者に対する技術研修会の開催,[7]公衆衛生部門と家畜衛生部門との連携の一層の交流等について指導を行うとともに,共通感染症の普及・啓発の充実を要請した(「地域における共通感染症対策の整備・充実について(平成19年9月10日付け19日獣発第68号)」/本誌第60巻第10号685頁参照).
イ 厚生労働省においては,従来より地域における共通感染症の体制整備を推進するための動物由来感染症予防体制整備事業の予算措置を講じているが,地方獣医師会においても,事業への積極的取り組みを都道府県に働きかけ,行政機関との連携による共通感染症対策の推進を願いたい.
ウ 狂犬病予防対策については,アジア諸国における狂犬病の蔓延と我が国の狂犬病予防対策の現状等を踏まえ,本会から厚生労働省に対し,[1]地方自治体と獣医師会が連携した犬の登録,予防注射率の向上のための地域ネットワークの整備,[2]狂犬病対策に係る普及・啓発の推進,[3]犬の登録制度におけるマイクロチップによる個体識別の導入等の要請活動を行った(「狂犬病対策の充実・強化について(平成19年3月2日付け18日獣発第244号)」/本誌第60巻第4号251頁参照).厚生労働省においては,本会の要請活動等の働きかけに対し,狂犬病対策の充実・強化を都道府県等に通知した.同通知においては,地方自治体が法に基づき実施する狂犬病予防対策の中で,法第4条の規定に基づく飼育犬の登録業務と法第5条に基づく定期予防注射業務に関しての獣医師会の果たすべき役割について明確化が図れるとともに,地方獣医師会と地方行政の連携強化による地域ネットワークの整備を図る必要性の明文化,登録事務についての行政窓口及び集合注射会場における登録の他,動物病院における事務の代行等の検討,自治体の普及啓発の積極的対応と獣医師会等の関係団体との協力.が明記された.
エ 一方,公益法人制度改革が本年12月から実施されることに伴い,地方獣医師会事業として推進する狂犬病予防注射事業については,狂犬病予防法等の関係法令に基づき前記ウの局長・課長通知による地域ネットワークの柱として地方獣医師会及び会員獣医師の機能の発揮が求められるところである.公益法人制度改革を控えての狂犬病予防注射事業のあり方については,これまで数次に渡り,地区獣医師会連合会,全国獣医師会会長会議をはじめ理事会における協議の結果を受け,検討の方向の指針のとりまとめを行ったところであり,地方獣医師会におかれては,順次,当該指針(「今後における狂犬病予防注射のあり方(特に公益法人改革を控えて)」)も参考に関係自治体との連携の一層の確保とともに,管内の診療獣医師との結束の強化に努めていただきたい.
オ なお,人用狂犬病ワクチンの確保については,ワクチンメーカーに対し,狂犬病予防注射事業に従事する診療獣医師に対するワクチンの確保を要 請するとともに,厚生労働省に対しても,ワクチンの備蓄管理に関する検討を推進するよう要請した(「医療用狂犬病ワクチンの供給確保について(平成19年6月12日付け19日獣発第86号)」/本誌第60巻第7号486頁参照).
(4)小動物医療提供体制の整備
ア 獣医師専門医制の体制整備(中国地区)
イ 小動物臨床長期研修(新卒獣医師対象)制度の創設(中部地区)
 〔考え方・対応等〕
ア 小動物診療提供体制の整備については,小動物臨床部会の検討を踏まえ,農林水産省に対し[1]小動物臨床における卒後臨床研修の実効確保,[2]高度専門医療及び夜間・休日診療体制の提供体制の整備,[3]獣医核医学等の先端・高度医療提供体制の整備,[4]獣医師法等の法令の適用の強化等を要請した(「家畜衛生対策をはじめとする動物医療関係施策の整備・充実について(平成19年8月22日付け19日獣発第122号)」/本誌第60巻第10号682頁参照).
イ この中で,獣医師専門医制については,学術部会において専門医の統一的認定機関としての専門医機構の役割等,今後の推進方向等を取りまとめ,その報告を受けて制度整備の推進について農林水産省に支援を要請するとともに,大学,関係学術団体に対して獣医師専門医認定機構の立ち上げを呼びかけた(「獣医師専門医制の取り組みについて(平成19年8月8日付け19日獣発第137号)」)ところであり(本誌第60巻第10号681頁参照),今後,大学,各専門医に関係する既存の学術団体との協議を前提に専門医制の取り組みの合意形成が求められる.
ウ 小動物診療における卒後臨床研修については,小動物診療提供の現状を踏まえ,獣医学系大学を拠点に小動物診療施設を農林水産大臣の指定診療施設として地域での卒後臨床研修の取り組みを推進する仕組みができたが,小動物臨床部会において現在,各地域ぐるみで卒後臨床研修を行うに当たってのモデル例の検討を行っている.
(5)獣医師及び動物医療の信頼の確保
ア 獣医師への信頼の確保と社会的地位の向上(関東・東京地区)
・獣医療理念の徹底と公共福祉活動の充実
イ 獣医師倫理の向上対策(中部地区)
ウ 規制強化(薬事法,獣医療法改正)による適切な獣医療の確保(関東・東京地区)
 〔考え方・対応等〕
ア 高度専門職業人としての獣医師については,高い職業倫理が求められるところであり,当然の責務としての法令遵守・コンプライアンスの確保がある.職業倫理については,本会として[1]インフォームドコンセントの徹底宣言に始まり,診療料金についての目安と情報の公開.また,[2]獣医師道委員会の義をへて,獣医師職業倫理綱領,動物臨床の行動規範を定め対内・対外の普及・啓発と社会的アピールを行うとともに,大学の獣医学教育課程における臨床教育の整備・充実,この中での倫理教育の徹底として,日獣の定めた獣医師職業倫理規程集のテキスト採用への働きかけを行ってきた.
イ 法令遵守については,飼育動物の診療独占権を国家資格として有する獣医師の最低限の責務であり獣医師サイドの自覚ともに,その指導監督に当たる行政庁自らの責任において,徹底すべき事柄と考える.取締の形骸化が「安かろう悪かろう診療」の助長につながるとすればゆゆしきことであり,本会として行政庁に再三再四要請してきた経緯がある.
ウ その結果を受け,平成15年11月26日付け農林水産省から都道府県主務部長に対し,獣医師法をはじめ関係法令違反,特に広告制限違反を含め法令遵守の指導の徹底と県と獣医師会との綿密な連携による現場情報の入手と報告の確保が通知されたところである.
エ 重要なのは,動物医療の質の確保であり,需給緩和の中で益々拍車がかかるであろう「安かろう悪かろう診療」の排除がひいては動物飼育者の利益に適う,この一線で論じ対処することにある.この10年間でみても行政処分が増加している中,獣医師道に対する重大な背反行為による処分例まで出現している.このような状況が続くということになれば,今後,獣医師免許のあり方を問われかねない事態も懸念される.昨年8月,獣医師法18条及び薬事法12条に違反する獣医師が摘発されたこと等を受け,獣医師倫理及び法令遵守徹底を通知し,さらに会員獣医師に限らず獣医師または関係者が獣医事関係法令に違反する事例の情報に獣医師会が接した場合は,「指導強化通知」に基づき獣医師会の活動区域を管轄する獣医事監視取り締まり当局に対して通報の上,当局による是正指導,告発等のしかるべき対応を求める旨再度周知徹底を依頼した.食の安全確保を率先してリードする立場にある獣医師としての資質が問われることとならないよう一層の注意喚起が必要となる.現行の獣医師免許制度は,一方で獣医師に対し法令遵守はもちろんのこと高い職業倫理が課せ られていることと表裏一体で確立しているとの原点に立った上で行動することが求められている.
(6)学校飼育動物対策の推進
ア 学校獣医師制(学校における獣医師の配置)の確立(関東・東京地区,九州地区)
イ 文部科学省から教育委員会に対する指導,学校飼育動物対策事業の充実(中部地区)
ウ 学校飼育動物活動へのサポート(四国地区)
 〔考え方・対応等〕
ア 学校飼育動物対策については,小動物臨床部会において学校飼育動物活動を安定的に推進するための関係者・関係機関とのネットワーク体制や学校への獣医師の配置の促進のための方策,全国における先進的な活動事例報告書を報告書として取りまとめ,地方獣医師会及び都道府県教育委員会に送付するとともに,文部科学省に対し,[1]学校獣医師制の確立,[2]学校教育における動物飼育の必要性の規定,[3]教員養成,獣医師養成過程における学校飼育動物にかかわるカリキュラムの確立,[4]教員への学校飼育動物に係る研修の実施等を要請した(「学校飼育動物活動の推進について(平成19年8月30日付け19日獣発第138号)」/本誌第60巻第10号682頁参照).
イ 本件については,小動物臨床部会に新たに動物介在活動推進検討委員会を立ち上げたところであり,学校飼育動物活動を広く動物介在活動の一翼を担う動物介在教育としての位置づけを含め,教育関係者を含め検討を進める.
(7)動物愛護対策の推進
ア 動物愛護活動への取り組み(四国地区)
 ・適正管理の普及啓発,不妊・去勢手術の奨励など
イ 動物救護とMCの促進(関東・東京地区)
ウ MCによる動物登録の推進(九州地区)
 〔考え方・対応等〕
ア 平成17年の動物愛護管理法の改正に当たっては,動物愛護管理基本計画制度の創設をはじめ,動物取扱い業及び危険動物に対する対応の強化,実験動物福祉規程の整備,当該動物等の適正飼養の推進など,本会の要請事項のほとんどが盛り込まれた.また,小動物臨床部会において,災害時動物救護対策について検討を行い,各地域における災害時動物救護活動マニュアルの策定に資するため「災害時動物救護の地域活動マニュアル策定のガイドライン」を策定し,地方獣医師会,都道府県動物愛護担当部(局)に送付するとともに,環境省に同ガイドラインを送付し,各地区における活動の参考に供するよう指導方要請した(「災害時動物救護対策の推進について(平成19年8月24日付け19日獣発第128号)」/本誌第60巻第10号684頁参照).さらに,本ガイドラインについては,記者発表を行い,マスコミからの反響も大きかった.
イ マイクロチップによる個体識別については,改正動物愛護法において危険動物の,また,外来生物法において飼育許可に係る外来動物の個体識別装置として位置づけられたところである.一方,AIPO事業については,大日本住友製薬のデータベースが動物ID普及推進会議(AIPO)のデータベースに統合されたこと等を受け,(社)日本動物保護管理協会の運営するAIPOデータベースにおける動物の登録頭数は飛躍的に増加している.本会としては,今後もAIPOの構成団体の一員として動物愛護団体と連携しながら,マイクロチップの普及推進について環境省等関係各所に働きかけていく. なお,法改正に伴い自治体における収容動物の引き取り譲渡の一層の推進が計画目標として明示されることとなったことに伴い,自治体におけるMC読み取り体制も順次進展していると考える.基本計画制度における都道府県動物愛護管理推進計画の策定に当たっては各自治体において地方獣医師会と協議することとされているところであり,推進計画の策定に当たっては,犬猫に対するMC個体識別の取り組みの推進が収載されるよう尽力願いたい.
(8)外来生物・野生動物対策の推進
ア 日本固有種の保護と自然環境保全(関東・東京地区)
イ 動物専門家としての獣医師の野生動物対策への取り組み(近畿地区)
ウ カエルツボカビ対策の獣医師の積極的対応(九州地区)
 〔考え方・対応等〕
ア これまで小動物臨床部会等において,[1]外来種新法制定に当たり移入種対策の実行性と動物愛護管理法が定める飼養育責任原則との整合性の確保,[2]外来生物法の制定に伴う獣医師会としての野生動物対策取り組みの方向,[3]野生動物救護対策の現状と活動のあり方,を順次取りまとめ国及び地方自治体等関係機関における事業推進の指針としての活用を提言してきたところであるが,昨年は,「外来生物に対する対策の考え方(特定外来生物の安楽殺処分に関する指針及び外来生物法に基づく防除実施計画策定指針を含む.)」を取りまとめ,外来生物対策に係る施策推進に活用するとともに,地方公共団体が特定外来生物防除実施計画を策定・実施を行う際の参考に資するよう要請した(「外来生物対策の推進について(平成19年7月31日付け19日獣発第123号)」/本誌第60巻第10号681頁参照).
イ カエルツボカビ対策については,環境省及び関連する学会・研究会等からの要請をうけ地方獣医師会及び構成獣医師に対し情報提供を行うとともに,動物専門家である獣医師としてその推進に積極的に対応するよう要請したことこである.
ウ なお,今後,野生動物対策については,職域総合部会において検討することとし,対策の整備充実について,[1]野生動物対策にあたる獣医師専門職の配置の推進,[]地域における野生動物対策の活動事例等について検討を開始した.
(9)地方獣医師会の公益法人認定に向けての対応推進(中部地区)
 〔考え方・対応等〕
ア 公益認定にかかる環境整備については,本会と地方獣医師会双方において検討・協議することとなるが,公益認定に際しての認定基準の適合条件にかかる課題と対応については,職域総合部会において,また学会組織と事業運営のあり方については,学術部会において検討・協議を開始した.地方獣医師会との連携については,各地方獣医師会推薦の委員が参加される職域総合部会,学術部会での,意見交換と提出された検討課題に対する対応について検討・協議を行っていきたい.また,検討結果については,各地区から推薦された委員から,地元ブロックへ情報伝達を依頼するとともに,別途本会より各地方獣医師会に,委員会の開催の都度必要な情報を通知することとしたいので,各地方獣医師会における検討・議論に際しての活用を願いたい.
イ 本会から地方獣医師会長あて「公益法人認定に当たっての課題と対応」について通知し,課題と対応について照会を依頼したが,いただいた個別の課題を職域別総合部会で議論,検討するとともに,本会と地方獣医師会が逐次整理し,共通の認識を得るよう努めたい.
3 その他事項
 (1)地方獣医師会要望・要請事項の取り扱い(中国地区)
 ブロック提出の要望事項の適切な処理,要請先における対応状況の通知
 〔考え方・対応等〕
ア 地区獣医師大会等において採決され提出される要望事項の扱いについては,今後とも冒頭の「本文」において示した考え方に即し,受けとめ対処することとしたい.
イ なお,制度的課題等に対する要請先の対応状況については,逐次,理事会に報告することとしており,地区担当理事を通じ伝達を,また,必要に応じ日本獣医師会会誌にも掲載の上,周知を図ることとしている.
  (2)診療行為としての「診療」の明確化等(中部地区)
  インターネットを介しての診断・処方の適法性いかん
 〔考え方・対応等〕
ア 違法性と取締の必要性の判断は,対象行為内容の形式要件とともに,当該行為による公益(飼育者利益)侵害の程度,更に,実行行為者が獣医師資格者か否か(獣医師である場合は,獣医師と対象の患者動物との日頃の診療関係など)等の個々の事項に照らし総合的な判断が必要となる.
イ また,法令解釈と運用は,規制当局の権限とされている.従って,違法性及び取締の必要性の判断については,当該行為の詳細を把握願い,報告いただいた上で,本会から規制当局に照会することで対応することとしたい.
 (3)獣医師賠償責任保険の結果通知のあり方(中部地区)
 保険請求事務における所属獣医師会の役割の見直しと適正な位置づけ.
 〔考え方・対応等〕
 賠償責任保険加入者(会員)における賠償事故発生に伴う保険金請求の審議結果については,個人情報保護法に配慮し,保険会社の判断により平成18年以降,所属獣医師会への通知が中止され,加入者のみの通知に変更された経緯があるが,今回の要望を機に保険会社と協議を重ね,今後は,加入者の同意を得た上で獣医師賠償責任保険審議会から審議結果の通知を所属獣医師会に行うこととした. 獣医師賠償責任保険は,会員のための職域専用保険であり,同保険の加入推進及び保険金請求等の事務手続きの適正確保については地方獣医師会の協力が不可欠である.今後とも特段の理解と支援をお願いする.

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