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行政・獣医事

全国知事会会長に対する公務員獣医師処遇の要請活動


全国知事会麻生会長(右)に要請を行う日本獣医師会
全国知事会麻生会長(右)に要請を行う日本獣医師会
山根会長(左手前)と福岡県獣医師会藏内会長(左奥)
  都道府県等の自治体に勤務する公務員獣医師の処遇問題は,獣医師会の長年の懸案事 項であり,かねてから,獣医学修業年限6年制に見合う処遇の確保について全国家畜衛生職員会,全国公衆衛生獣医師協議会と協議を重ね,対応してきたところである.
 昨年,農水省が設置した獣医師の需給に関する検討会の報告においては,産業動物診療獣医師,公務員獣医師の不足が指摘されているが,その要因として,供給不足職域における処遇問題が指摘されているところである.特に公務員獣医師の処遇については,他の職種に及ぼす影響が大きいため,単に公務員獣医師の職域環境の整備のためだけではなく,動物医療の需要動向に即した人材確保を図る上においても重要なポイントとなっている.地方公務員の処遇は,基本的には地方自治法に基づき,各自治体の裁量とされている.
 このたび,日本獣医師会藏内勇夫副会長(福岡県獣医師会会長,福岡県議会議員)の尽力により,全国知事会の会長である麻生 渡福岡県知事に対し,日本獣医師会山根義久会長と福岡県獣医師会藏内会長の連名で要請書(「都道府県勤務獣医師(公務員獣医師)人材確保のための処遇改善対策について」:別紙2)を提出し要請活動を行った.
 本要請活動にあたっては,平成19年12月18日に開催された日本獣医師会理事会においてその趣旨を説明して理解を得た上,各地方獣医師会がそれぞれを所管する自治体の長に対して同様の要請を行うことが合意された.
 要請活動は,平成19年12月20日,山根会長が訪福し,藏内副会長とともにホテルオークラ福岡(福岡市)で麻生全国知事会会長に面談して行われた.
 要請に当たり,山根会長から公務員獣医師の処遇と需給に関する概況が説明され,公務員医師と公務員獣医師の処遇について,同じ6年制教育を受けながら,両者に適用される俸給表が違い,さらに医師の場合は多額の調整手当て等が支給されるためその差が拡大していること,公務員獣医師の確保のためにはその処遇の抜本的な改善が必要であること等が説明された.具体的には,全国知事会のリーダーシップの下で,地方公務員獣医師に対する医療職(一)の俸給表の適用及び調整手当ての支給等の実現に尽力いただきたい旨要請された.
 また,併せて獣医界を巡るもう一つの課題として,わが国の獣医学教育の現状が問題視されていることが,海外事情を紹介,比較しながら説明され,国立大学の再編整備を含む改善の必要性が訴えられた.
 麻生知事からは,「要請のご趣旨は十分に理解した.持ち帰って検討させていただきたい.」との回答をいただいた.
 なお本件については,以下のとおり地方獣医師会会長宛に通知したところである.
 このたびの要請活動は,地方公務員の処遇改善に関し影響力を持つ自治体の首長に対する全国統一的な働きかけの第一歩であり,この活動の成否は,各自治体の首長が本件に対してどれほどの理解を示し,指導力を発揮するかに左右される.まず,地方公務員獣医師の処遇改善問題が全国知事会における論議の俎上に乗ることを目指して,各地方獣医師会からの都道府県知事及び関係自治体の首長に対する積極的な働きかけが望まれる.

 

19日獣発第227号
平成19年12月26日
地方獣医師会会長 各位
社団法人 日本獣医師会
会 長 山根義久
(公印及び契印の押印は省略)
公務員獣医師処遇対策の要請対応について
 都道府県勤務獣医師(公務員獣医師)の処遇対策につきましては,本会としてかねてより,獣医学修業年限6年制に見合う処遇の確保について公務員獣医師職域団体(全国家畜衛生職員会,全国公衆衛生獣医師協議会)とも協議を重ね,対応してきたところであります.
 一方,本年5月農林水産省から獣医師需給の見通しが公表され,その中で獣医師の職域偏在(産業動物診療獣医師の不足と公務員獣医師の採用難等)が改めて指摘され,今後,獣医療法に基づく獣医療基本計画制度における職域偏在是正に向けての施策推進の必要性が再認識されたところでありますが,本会においては,都道府県における公務員獣医師の確保が困難な事情の要因として,処遇問題が存在すると基本的に認識しているところであります.
 このため,去る12月8日に開催した第4回理事会において,今後,獣医師及び動物医療が社会的要請に応えていく上において,獣医師の需要動向に即した適正配置と動物医療の質の確保が不可欠との判断の下,特に,[1]獣医学教育の整備・充実,[2]獣医師の需給対策と獣医学系大学入学定員抑制策,[3]動物診療におけるパラメディカル専門職資格の導入によるチーム医療体制の確保の3点を政策的課題として推進することが必要である旨を取りまとめたところでありますが(別紙1参照),その中において,獣医師職員不足自治体における専門職としての公務員獣医師の処遇改善の必要性を改めて指摘した(別紙1の2の(2)のイのb参照)上で,今般,福岡県獣医師会(藏内勇夫会長(本会副会長))と連携し,全国知事会会長(麻生 渡福岡県知事)に対し別紙2の要請を行ったところであります.
 ご承知のとおり,自治体職員の処遇は,地方自治法等の関係法令に基づき基本的には各自治体の首長及び議会の裁量によるべきものでありますが,全国知事会会長におかれては,本件を全国知事会において論議するに際しても,このことに対する各都道府県知事の認識が不可欠となるとのことであります.
 つきましては,各地方獣医師会長におかれては,以上をご理解の上は,公務員獣医師の処遇改善は,単に公務員獣医師の職域環境の整備のためだけではなく,動物医療に対する需要動向に即した人材確保を図る上において不可欠であるとの観点に立ち,貴会を管轄する都道府県知事及び関係自治体の首長に対し,別紙2を参考に処遇対策の推進について,積極的に働きかけを行われたくお願いします.

 

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