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横田貞夫†(日本中央競馬会馬事部獣医課課長)
1 は じ め に 「競走馬のドーピング」というと皆様は何を思い浮かべられるだろうか? 一昨年,世界の最高峰の競馬と称されるフランスの凱旋門賞競走において日本で最強馬の称号を欲しいままにしていたディープインパクト号が3着入線後,失格となるという事件が発生した.詳しくは当時のマスコミ報道等を参考としていただきたいが,JRA日本中央競馬会はホームページ上で下記のように掲載している.
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2 ドーピングとは 競馬における薬物規制制度を紹介するにあたっては,ドーピングあるいはアンチ・ドーピングというものについて,まず述べさせていただきたいと思う. ドーピング(doping)という言葉はdopeから来ている.この語源はアフリカ東南部の原住民カフィール族が祭礼や戦いの際に疲労回復あるいは士気向上のために飲む「強い酒ドップ(dop)に由来すると言われている.これが後に「興奮性飲料」という意味合いなり,さらに「麻薬」という意味でも使われるようになった.近年は,ドーピングとはスポーツ競技における不正な薬物使用のことを意味し,覚醒剤や麻薬等の不法薬物の乱用(Drug abuse)とは,区別して用いられている. 人のスポーツの世界で一番話題になったのは,1988年ソウルオリンピック陸上男子100mの優勝者ベン・ジョンソンが金メダルをR奪されたことではないだろうか.ソウルオリンピックの前年(1987年)にローマで開催された世界陸上選手権大会男子100mで,前回のロスアンゼルスオリンピック金メダリストであるカール・ルイスを破って9秒83の世界記録を樹立.ソウルオリンピックでも9秒79の世界新記録で優勝したものの,競技後のドーピング検査で蛋白同化ステロイド(筋肉増強作用のある)スタノゾロールが検出され,金メダルとともに記録もR奪されたという事件であった.オリンピックの花形競技でのドーピング失格ということで,非常に衝撃的な出来事だった.その後のオリンピックでも何件かの薬物陽性事案が発生しており,失格となる選手が出ている. 日本においても,昨年からドーピング検査を抜き打ちで実施することになったプロ野球において,福岡ソフトバンクのガトームソン投手から内服用育毛剤であるフィナステリド(体内で男性ホルモンに影響し,筋肉増強剤の使用を隠す効果があるために隠蔽剤として禁止薬物に指定されている)が検出され,処分された. これらのドーピングコントロールは,「ドーピングのないスポーツに参加するという競技者の基本的権利を保護し,もって世界中の競技者のために健康,公平性と平等性を促進する.」(世界アンチ・ドーピング規程より引用)とされている. 日本のスポーツ界では,プロ・アマを問わずアンチ・ドーピングに対して意識が希薄であるといわれているが,これは薬物を取り扱う日本の医師の社会的地位の高さや,日本人の国民性から他国に比べてドーピングという行為が「違法」で「卑怯」な行為であるという思いが強く,ドーピングをしてまで競技に勝とうとする者が少なかったことによると考えられる.しかしながら,最近は大相撲等でもドーピングの噂が絶えず,ドーピング検査はアマスポーツはもとより,プロスポーツにおいても今後はさらに厳格に行われていくものと考えられる. オリンピックをはじめ,各種スポーツ競技におけるアンチ・ドーピングを統括する組織として,1999年に創設されたWADA(World Anti-Doping Agency:世界アンチ・ドーピング機構)という機関があるが,ここで2003年3月5日に『世界アンチ・ドーピング規程』が定められ,競技参加にあたって使用が禁止される薬物や行為をリストとして公表している. → http://www.wada-ama.org/rtecontent/document/WADA_Code_Japanese.pdf |
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3 競馬におけるアンチ・ドーピング
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