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オ CAPP活動を全体的に見て
 アンケートの質問項目[2]―「1.利用者様は,活動を楽しみに,または楽しんでいらっしゃると思われますか」に対しては,合わせて97%の施設スタッフがやや同意する〜強く同意すると回答している.質問項目[2]―「2.活動日以外にも,利用者様がこの活動について話題にしていることがありますか」に対しては,合わせて65%の施設スタッフがやや同意する〜強く同意すると回答している.また,質問項目[2]―「3.利用者様にとって,活動はさまざまな意味で役立っていると感じますか」に対しては,合わせて92%の施設スタッフがやや同意する〜強く同意すると回答している.そして,質問項目[2]―「4.この活動は利用者様のご家族からご好評をいただいていると感じますか」に対しては,合わせて83%の施設スタッフがやや同意する〜強く同意すると回答している.
 このことから,活動と活動の間隔が広いため,日常生活にまで継続し反映して精神的効果やリハビリ効果,健康への効果は期待できないけれど,長年に渡って定期的に動物と一緒に訪問活動を続けてきたCAPP活動は,さまざまな意味で施設を利用している高齢者の生活の質やQOLの向上において役立っていると施設スタッフに認識されていることが分かる.そして,それは高齢者の家族にも認識されていることだと言える.
 今後更に,CAPP活動のあり方や活動内容を検討し工夫しながら,CAPP活動での動物とのふれあいをきっかけにして,高齢者の日常生活が楽しみの多い,生き生きとしたものになることを期待できるような活動を展開していくことが課題である.
アンケートの質問項目[2]

カ 施設スタッフから見たCAPP活動
 アンケートの質問項目[3]―「1.活動を導入したことについて」に対して,95%の施設スタッフが導入して良かったと思うと回答しており,活動している動物について,質問項目[3]―「2.動物の衛生管理について」及び「3.動物の行動(しつけ)について」は,それぞれ90%の施設スタッフが信頼している,88%の施設スタッフが良いと回答している.また,92%の施設スタッフが活動の現場に携わって楽しい,92%の施設スタッフが活動に使用する時間は有意義である,88%の施設スタッフが自分が老人ホームに入所する ことになったとしたらCAPP活動はぜひあって欲しいと回答している.
このことから,20年以上に渡って試行錯誤を繰り返しながら高齢者施設での活動を展開してきたCAPP活動は,導入して良かった,活動は有意義な時間であるとの評価を受け,活動する動物の衛生管理やしつけについても信頼していると評価される活動に育ってきたことが分かる.また,CAPP活動の現場に携わっていて楽しい,自分が高齢者施設に入所することになったらCAPP活動がぜひあってほしいと感じている施設スタッフがそれぞれ約90%前後いることから,CAPP活動は高齢者施設を利用している高齢者だけでなく,施設スタッフにとっても意味のある良い影響をもたらす活動であることが分かる.自由回答の中でも,スタッフにとっても良い影響があり,スタッフが施設を利用している高齢者と接するきっかけになるという意見が多数書かれていた.
 CAPP活動が施設スタッフにどのように影響していて,どのような効果があるのか,さらに施設スタッフと利用している高齢者との関係作りにどのように役立っているのかについては今後の研究課題でもある.
アンケートの質問項目[3]

  アンケートの質問項目[3]  

4 全体の考察
 今回行った,「CAPP活動でのビデオ撮影による高齢者の様子及びコミュニケーションの観察」及び「アンケートによる施設スタッフに対してのCAPP活動に対する意識調査」から,高齢者入居施設においてCAPP活動時には動物の存在によって参加している高齢者に笑顔が増え,施設スタッフやボランティアとの会話によるコミュニケーションやうなずきや笑顔を見せることによる非言語コミュニケーションが増えることが分かった.
 動物の存在が高齢者に笑顔をもたらし,人とのコミュニケーションを活発にするという過去の調査・研究の結果と同じ効果が (社) 日本動物病院福祉協会のCAPP活動にもあるということが分かった.しかし,アンケート調査からは,このCAPP活動時に見られる笑顔やコミュニケーションの増加は日常生活に反映され,継続的には見られることはないと多くの施設スタッフが感じていることが分かった.
 施設スタッフからは,CAPP活動の回数を増やしたり活動内容を工夫したりすることによって,日常生活にも反映できるような効果が期待できるのではないかとの意見も多くあった.CAPP活動の,その場その時だけの“笑顔”や“会話”だけでなく,それを日常生活に継続させ,反映させるにはどのようなCAPP活動のあり方が有効なのか,協会事務局と施設,そしてボランティアとの活発な意見交換が必要である.
 「高齢者との会話のきっかけを作ってくれる」や「高齢者との会話が増えた」,「自分自身,CAPP活動を楽しんでいる」等,高齢者施設においてのCAPP活動が施設スタッフに与える影響が大きいことは予想外の結果であったが,大きな収穫でもあった.CAPP活動は,発足当初より,高齢者への効果ということを目的として進められてきたが,職場で動物と接する機会があることによって施設スタッフの仕事への取り組み方や介護職に見られる“燃え尽き”等に変化は見られるのだろうか.高齢者への効果だけでなく,施設スタッフへの効果を明らかにしていくことは今後の大きな研究課題となるだろう.
 活動回数を増やすだけでなく,活動時にさまざまなふれあい方が可能となるように環境を工夫したり,自然な形で動物とのふれあいを楽しめるような雰囲気作りも大切なのではないだろうか.そして,このような動物とのふれあいを積極的に自然な形で楽しめる施設は,その施設を利用する高齢者だけでなく施設スタッフにとっても良い環境となるのではないだろうか.



† 連絡責任者: 水谷 渉(日本動物病院福祉協会)
〒162-0814 新宿区新小川町1-15池田ビル
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