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行政・獣医事

薬事法等の法令遵守による畜水産物の
安全性の確保等について


 畜産物の安全性の確保に係る法令遵守について,平成19年9月21日付けで,農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長から標記の件について通知があり,地方獣医師会長あて次のとおり依頼した.

19日獣発第174号
平成19年10月5日
地方獣医師会会長 各位
社団法人 日本獣医師会
会 長 山根義久
(公印及び契印の押印は省略)
薬事法等の法令遵守による畜水産物の安全性の
確保等について
 本件に関しては,先に,獣医師職業倫理の徹底等について(平成19年9月3日付け19日獣発第148号.(別紙1))により,貴会関係会員に対し畜産食品の安全性の確保を自らが率先し,また,生産者を指導する立場にある専門職業人たる獣医師としての職業倫理意識の高揚を図るとともに,動物医療に係る法令違反事例に対処する上での都道府県取締当局との連携の推進をお願いしたところですが,今般,平成19年9月21日付け19消安第7176号をもって,農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長から別紙2のとおり通知がありました.
 別紙2による通知は,診療獣医師による未承認薬品の製造販売,無診察での要指示医薬品の販売等,薬事法(昭和35年法律第145号)及び獣医師法(昭和24年法律第186号)に違反する行為の発生を受け,薬事法等の法令遵守による家畜の健康保護と食品の安全性確保のため,[1]獣医師への違法行為の周知,[2]獣医師の診療行為及び[3]薬事法等の法令違反への対応について周知徹底を求めてきたものです.
 食品の安全性に対する国民の関心が高まる中,本件のような不適切な事例が繰り返されれば,国民の獣医師に対する信頼の失墜につながることは必至であり,農林水産省においては,獣医師に対し薬事法等の法令遵守を改めて求めるとともに,法令違反に対しては刑事告発,獣医師法に基づく免許取消等の行政処分等の厳正な対応を行うとしたところであります.
 要指示医薬品の処方・指示の任に与る獣医師の要指示医薬品制度の適正な運営の確保については,先に,要指示医薬品制度に関する法令遵守の徹底について(平成15年12月10日付け15日獣発第229号.(別紙3))及び動物用医薬品指示書交付の手引きの策定について(平成19年3月20日付け18日獣発第248号.(別紙4))により貴職より貴会会員獣医師に対する周知をお願いしたところですが,今回の事例の発生を受け,動物用医薬品の適正処方を含む関係法令の遵守について,別紙1,2,3及び4による通知の周知・徹底を改めて図られたくよろしく対応の程お願いします.

 

【別紙1】
19日獣発第148号
平成19年9月3日
地方獣医師会会長 各位
社団法人 日本獣医師会
会 長 山根義久
(公印及び契印の押印は省略)
獣医師職業倫理の徹底等について
 獣医師については,その任務の公共性から専門職業人としての高い職業倫理が求められ,一旦,獣医師としての適性を欠く行為を行った者に対しては,獣医師法の規定に基づき免許取り消しや業務停止の行政処分が科せられることとなります.
 獣医師に対する行政処分については,それが実施された都度,再発の防止に向けての会員獣医師への指導とともに,獣医師の社会的信頼確保と職業倫理の一層の高揚をお願いしてきているところですが,行政処分の動向を見ると,処分数は,漸次増加傾向にあり,最近においては,獣医師業務の不適切執行に起因し獣医師道に対する重大な背反行為を犯したとして刑罰の有無を問わず処分される例も出現するに及んでおります.
 このような中において,今回,熊本県下において産業動物診療獣医師による,獣医師法第18条に違反する無診察による医薬品の処方と薬事法第12条に違反する医薬品の無許可による製造販売が確認され,しかも製造販売が継続して行われ,製造に係る未承認医薬品が県内,県外を問わず販売された模様とのことが,県当局からプレスリリースされたところです.現在,県当局による事実関係の確認と食品衛生分野における影響等の調査が実施されていますが,本件が事実であるとすれば,畜産食品の安全性の確保を自らが率先して指導する専門職業人の立場にある獣医師として重大かつ深刻な背反行為であり,獣医界に対する信頼確保を大きく失墜させかねない由々しき事態でもあります.
 本会においては,これまで,[1]獣医師職業倫理の高揚を図るため,獣医師道委員会の議を経て獣医師の倫理綱領としての「獣医師の誓い―95年宣言」を,更に動物臨床の行動規範としての「小動物医療の指針」及び「産業動物医療の指針」を定め,法令遵守をはじめとする業務推進に係る職業倫理意識を,また,食品衛生法に基づくポジティブリスト制度の施行を受け,産業動物委員会の議を経て畜産食品の安全性の確保を図る上で重要となる抗菌性物質製剤等の動物用要指示医薬品の適正処方・指示体制を確保するため,獣医師の診察に基づく自らの使用及び獣医師の指示に基づき使用する場合の主治の獣医師による診察・処方,指示書の交付・報告,使用の確認等に至る間の留意事項を「動物用医薬品指示書交付の手引き」として定める一方,[2]獣医師及び動物医療の適正確保については,獣医師に対する行政処分及び獣医業適正確保に係る指導強化等について(平成15年12月6日付け15日獣発第223号(以下「指導強化通知」という.))により貴会の会員獣医師に対する普及・啓発をお願いしてきているところですが,最近における獣医師による不祥事発生の報告を受け,法令遵守をはじめとする獣医師職業倫理の一層の徹底を期するため,獣医師が常に職業倫理意識を踏まえた一定の緊張感を持ち業務の適正な執行に当たられるよう,特に下記の事項に十分ご配慮の上,貴会会員獣医師に対する指導を徹底願いたく宜しく対応の程お願いします.


  1. 日本獣医師会獣医師倫理関係規程集(平成19年(改訂版))に収載した「獣医師の倫理綱領」及び「動物臨床の行動規範」を会員獣医師が熟知の上,法令遵守をはじめとする獣医師職業倫理の徹底を期すること.
     なお,獣医師については罰金以上の刑罰に処せられた場合のほか,獣医師道に対する重大な背反行為,獣医事に関する不正な行為があった者などについても免許取り消しや業務停止の行政処分に処せられることとなることに十分留意すること.
  2. 貴会において,会員獣医師に限らず獣医師又は関係者が獣医事関係法令に違反する事例の情報に接した場合は,「指導強化通知」の別添1獣医師に対する行政処分について(平成15年12月9日付け15消安第3609号.農林水産省消費・安全局衛生管理課長通知)の記の規定に基づき,貴会の活動区域を管轄する獣医事監視取り締まり当局に対し通報の上,当局による是正指導,告発等の然るべき対応を求めること.

 

【別紙2】
19消安第7176号
平成19年9月21日
社団法人 日本獣医師会会長 殿
 農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長
薬事法等の法令遵守による畜水産物の安全性の
確保等について
 今般,熊本県の開業獣医師による未承認医薬品の製造販売,無診察での要指示医薬品の販売等,薬事法(昭和35年法律第145号)及び獣医師法(昭和24年法律第186号)に違反する行為が確認されました.
  貴職におかれては,下記の事項を徹底していただき,薬事法等の法令遵守による家畜の健康保護と食品の安全性確保が一層図られるようお顔いします.


  1. 獣医師への違法行為の周知について
    次の行為は薬事法又は獣医師法の規定に抵触するものであり,畜水産物の安全性確保の観点からも・禁止されていることについて,十分周知すること.
    (1)動物用医薬品について農林水産大臣の承認を受けずに,又は農林水産大臣の許可を受けない者が,業として製造又は販売すること.(薬事法83条第1項の規定により読み替えて適用される第12条第1項,第13条第1項,第14条第1項及び第24条第1項並びに第83条の2第1項に抵触)
    (2)自ら診察しないで次の医薬品を処方すること.(獣医師法第18条に抵触)
    [1]毒劇薬
    [2]生物学的製剤
    [3]要指示医薬品(薬事法第49条第1項の規定に基づき厚生労働大臣又は農林水産大臣が指定した医薬品)
    [4]使用規制対象医薬局(薬事法第83条の4第1項又は法第83条の5第1項の規定に基づき農林水産大臣が使用者が遵守すべき基準を定めた医薬品)
  2. 獣医師の診療行為について
     獣医師が行う次の行為は,承認されている動物用医薬品では治療の効果が期待できない等診療上やむを得ない場合のみに限定されるべきものであること.特に食用に供される動物に未承認医薬品を使用する行為は,食品安全基本法第8条の食品関連事業者の責務として,厳に慎まなければならないこと.
    (1)医薬品の適用外使用
    • 動物用医薬品の承認の範囲を超えて使用すること
    • 動物用医薬品の使用の規制に関する省令(昭和55年農林水産省令題42号)第3条で定められた使用者が遵守すべき基準に従わず使用すること
    • 動物用医薬品として承認されていない人用医薬品を使用すること
    (2)個人輸入された医薬品等未承認医薬品の使用
  3. 薬事法等の法令違反への対応について
     今般のように悪質な事案に対しては,既に「要指示医薬品制度に関する法令遵守の徹底について」(平成15年12月8日付け15消安第3898号農林水産省消費・安全局衛生管理諌長通知)で通知したとおり,刑事告発,獣医師法に基づく免許取消し等の行政処分等の厳正な対応が行われること.

 

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