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 4 大学院入学
 獣医学を履修する博士課程の年限は,はじめにで書いたとおり4年間であるが,特例として3年で終了することも可能である.ただこの場合,優秀な研究業績を残すことが求められるので,かなり高めのハードルとなる.もちろん,種々の事情により在学年限を延長することも可能で,通常6年,職を持つなど特殊の事情がある場合7年まで在学が認められる.大学院入学試験の区分は,一般選抜試験,社会人特別選抜試験,外国人特別選抜試験に分かれており,一般選抜試験,社会人特別選抜試験を合わせ,日本人の受入予定人員は平成20年度の場合約17名で,外国人の場合は若干名となる.受入予定人員に満たない場合であっても,一つの研究室に多人数の志望者が集まると,十分に教育及び研究指導ができない場合がある.従って,受験者は所属を希望する研究室と事前に連絡を取って,状況を確認した方が良いと思われる.もし,担当教員と面識がない場合,著者あて連絡いただきたい(連絡先は後述).試験は筆記試験(外国語1科目・専門科目2科目)と口述試験(専門科目)に分かれている.社会人特別選抜試験では研究計画を事前に提出し,書類審査が加わる.出願期間や試験日,出願書類などの詳細は研究科事務(TEL 03-5841-5010)に問い合わせ願いたい.入学に際し,検定料30,000円,授業料(年額)520,800円,入学料282,000円が必要となる(平成19年度).

 5 大学院教育
 入学後は,組織の項で示した研究室に所属して研究をすることになるが,それぞれの専門分野における特別講義,特別演習,特別実験の単位を取得する必要がある.この他,獣医学特論の単位があり,これは各研究室が担当するシンポジウム形式で行われる.大学院生は止むを得ない事情を除いて,必ず出席することが求められる.場合によっては,ティーチング・アシスタントやリサーチ・アシスタントに採用され,経済的援助を受けることができるのは,他大学の場合と同様である.3年ないし4年間の大学院生活の最後には,学位論文を提出せねば終了できない.学位論文が提出されると,その審査のため関連分野の教員5名以上からなる審査委員会が設置される.この際,研究内容などの理由により,学外の教員や研究者が審査委員会の委員となることもある.審査委員会は学位論文の審査を行って,学位を授与できると判定した場合,審査結果を提出する.この報告書をもとに,研究科教育会議という各専攻の委員が集まった会議の席上,学位授与の議決が行われる.無事,博士の学位を授与されると,授与された日から1年以内に,その学位論文を印刷公表することが義務づけられる.

 6 論 文 博 士
 博士の学位は,大学院の博士課程を経ない者であっても,論文を提出してその審査及び試験に合格し,かつ,専攻学術に関し博士課程の教育課程を終えて学位を授与されるものと同様に広い学識を有することを確認された場合には,授与することができるとされている.これが,いわゆる論文博士制度である.学位申請者は,定まった書式の学位申請書,論文の内容の要旨,論文目録,履歴書及び論文審査手数料を添えて,専攻分野の名称を指定して,論文(正副あわせて5部)を総長(研究科)に提出する必要がある.ただし,提出時に紹介教員の氏名を明記する必要があるので,事前に専門分野の教員との打ち合わせが必要である.教員に面識のない場合,大学院入学試験と同様相談されても良い.学位審査は,筆答及び口頭試問による外国語及び専門科目の学力の確認と論文審査によって授与の可否が検討される.もちろんこの場合も,課程博士と同様,研究科教育会議で審査委員会の設立が認められ,なおかつ学位授与が可とされた場合に学位が授与される.
 論文博士制度については,従来より様々な議論があり,現行制度を改める必要性が検討されている.そのため,今後も上記の制度が堅持されるかどうかについては予断を許さない.いずれにしても,この制度を利用して学位を取得しようと考えておられる方は,なるべく早く専門分野の教員に相談されることが肝要かと思われる.

 7 お わ り に
 職を持った方が学位を取得することは,大いなるエネルギーを必要とする.また,既に職を得られているとすれば,学位を取得したからと言って処遇が一挙に改善されることも少ないかも知れない.しかし,はじめにで書いたとおり,ある期間自分が心血を注いでまとめ上げた仕事の成果について,学問的な価値を問うために学位を申請すると言うことは,人生の節目として重要なことだと思う.何事も一歩を踏み出さなければ,結果はついてこない.この記事を目にとめられた皆さんが,東京大学で学位を取得してみようかと考えられ,その第一歩を踏み出されるとすれば望外の喜びである.なお,紙面の都合もあり,手続き等の詳細や,各研究室がどのような研究を行っているか等の詳細は獣医学専攻のホームページ(http://www.vm.a.u-tokyo.ac.jp/)をご覧いただくか,研究科事務学生支援チーム大学院学生担当
(TEL 03-5841-5010)あるいは獣医学専攻主任明石
(TEL 03-5841-5396)までご相談いただきたい.最後に,組織図を作成していただいた学部委員の尾崎教授に感謝したい.



† 連絡責任者: 明石博臣(東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻獣医微生物学研究室)
〒113-8657 文京区弥生1-1-1
TEL 03-5841-5396 FAX 03-5841-8184 
E-mail : akashih@mail.ecc.u-tokyo.ac.jp



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