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【別紙5】
19日獣発第122号
平成19年8月22日
農林水産省
 消費・安全局長
   町田勝弘 様
 経営局長
   高橋 博 様
社団法人 日本獣医師会
会 長 山根義久
家畜衛生対策をはじめとする動物医療関係施策の整備・充実について(要請)
 
 獣医師及び動物医療施策の推進につきましては,日頃よりご尽力をいただき,厚くお礼申し上げます.
 さて,我が国の社会経済,国民生活を巡る情勢をみると,食の安全・安心の確保,高病原性鳥インフルエンザや狂犬病等の共通感染症に対する危機管理対策の整備が喫緊の課題とされております.
 一方,家畜衛生の向上を通じての農畜産業の振興,更には,人と動物の共生社会の構築が国民的課題とされ,イヌ,ネコ等の小動物が伴侶動物として広く一般家庭に,また,人の介護・福祉,学校教育分野への社会参加が進展する中,小動物医療の提供体制の整備が求めれる等,獣医師及び動物医療の果たす役割に対する社会的期待が従来にも増して高まっており,獣医療法が定める獣医療提供体制整備基本計画制度をはじめ,各般の動物医療関係施策の下で獣医師自らが研鑽し,質の高い動物医療の提供に努め,社会の期待に応えていくことが求められているところであります.
 以上の状況を踏まえ,本会においては,本会事務・事業の円滑な実施に加え,動物医療にかかる制度的課題を含め今後における施策推進の方向等について,貴局担当官にも参加を願い,検討を行っているところでありますが,今般,本会の畜産・家畜衛生部会,産業動物臨床部会及び小動物臨床部会の関係委員会において,それぞれの職域が有する今日的課題について別記(略)の報告のとりまとめを行ったところであります.
 つきましては,別記報告をご理解の上は,今後の獣医師及び動物医療施策等の推進に当たり下記の事項について,特段の政策配慮をお願いする次第であります.


1 家畜衛生対策について
(1)家畜保健衛生所の組織及び機能の整備・充実
 都道府県家畜保健衛生所が家畜伝染病予防法に基づく家畜伝染病防疫対策の地域における実施主体であるとの位置づけの下,引き続きその機能向上のため,検査・診断施設整備・機器の設置に係る支援を充実するとともに,業務量の増大及び業務の質の高度化・多様化に対応し,地方交付税交付金(家畜保健衛生費)の拡充・強化を図ること.
(2)都道府県と獣医師会との連携の推進
 家畜伝染病予防事業をはじめ各種家畜衛生対策事業の推進における獣医師会の役割を明確化し,地域における家畜衛生対策の円滑な推進に資すること.
 特に高病原性鳥インフルエンザ等の特定家畜伝染病の広域発生を想定し,獣医師会の役割を地域防疫推進計画に組み入れるとともに,都道府県における民間獣医師の家畜防疫員への委嘱を推進させること.
 また,都道府県の家畜畜産物衛生指導協会が順次,畜産関係団体に統合される中,獣医師会を地域における自衛防疫の中核的組織として位置づけ,その機能整備のための支援策を講じること.
(3)家畜保健衛生業務と食肉衛生検査業務の連携の推進
 生産農場の生産衛生工程管理(GAP)を効果的に推進するため,地域における家畜の生産衛生情報と食肉処理段階の衛生検査情報の相互活用を図るとともに,家畜保健衛生所及び獣医師会等の自衛防疫団体による獣医疫学及びHACCP手法に基づく生産農家衛生指導体制の整備を推進すること.
2 獣医師需給対策と家畜共済事業の運営について
(1)産業動物診療獣医師及び家畜衛生・公務員獣医師の確保
ア 獣医学教育水準の質の確保を図りつつ,獣医師需給動向を踏まえ,獣医師不足職域とされる産業動物診療及び家畜衛生・公衆衛生公務員部門への就業を促進させるため,獣医学系大学における産業動物臨床,家畜衛生・公衆衛生分野の教育実施体制の整備を文部科学省に働きかけるとともに,産業動物臨床及び家畜衛生・公衆衛生等の実学実習教育における都道府県家畜衛生・食品衛生関係機関,農業共済団体及び産業動物開業獣医師と獣医学系大学との協力体制を支援すること.
イ 産業動物診療及び家畜衛生・公衆衛生公務員部門への職域誘導を促進させるため,獣医療法に基づく獣医療提供体制整備基本計画制度の下で,次の施策を充実・強化することにより,職域環境の計画的整備を促進させること.
(ア)卒後臨床制度の実効の確保を通じた獣医学系大学及び職域間の獣医師・紹介受け入れネットワークシステムの導入
(イ)産業動物診療獣医師就業修学資金給付制度の拡充・整備(給付水準の引き上げと新たに公衆衛生公務員獣医師就業の給付対象への条件の緩和)
(ウ)獣医学系大学に対する特定職域・地域就業優先入学枠の導入の働きかけ
ウ 産業動物部門を新規就業獣医師にとって魅力あるものとするため,卒後臨床研修を含む生涯研修の受講体制の整備を促進させるとともに,技術専門職の賃金水準としては絶対的低水準であり,一方で産業動物診療獣医師処遇の象徴的存在とされている「雇い上げ獣医師手当」を他の技術専門職の処遇との均衡に配慮し引き上げること.
(2)家畜共済事業の円滑な運営
畜産立地の集約化が進む中で家畜診療施設の統廃合が進展し,診療対象区域が広域化してきている.
 一方,畜産経営の大型化に伴い生産者の家畜診療に対するニーズは,個体診療をベースとしつつも集団予防衛生管理,食の安全・安心の確保を含め,いわゆる生産獣医療の提供にシフトしてきている.
 このような中で,家畜共済事業の担い手たる農業共済組合における診療獣医師職員をはじめ産業動物開業獣医師への新規就業が継続的に減少してきているが,家畜共済事業が地域における産業動物診療の基盤となっていることを踏まえ,事業の円滑な運営を確保するため,次の対策を講じること.
ア 家畜共済診療獣医師の確保
前記2の(1)のア,イ及びウと同様
イ 家畜共済診療点数表の見直し等運営の改善
家畜共済加入生産者の診療需要に対応するとともに,一方で診療獣医師の技術提供が適切に反映され,診療技術水準の維持・向上が図られるよう,当面,次の改善を検討すること.
(ア)診療点数表の診察料における初診点数の明定と往診点数の家畜診療の現状に即した適正水準での設定
(イ)生産獣医療の提供に主眼をおいた予防衛生検査・指導等農場生産衛生管理の包括加入メニューの導入
(ウ)家畜診療に係る新技術・治療法等の迅速な点数化
(エ)家畜共済事業において廃用認定される家畜の認定後の処置について,食肉衛生検査当局と連携した全国統一的運用の確保
3 小動物診療提供体制の整備について
(1)小動物臨床における卒後臨床研修の実効確保
 新規に免許取得する獣医師の半数が小動物診療業務に従事する中で獣医師法が求める卒後臨床研修制度の実効を確保するため,対象者を受け入れる農林水産大臣指定の卒後臨床研修施設を拡充整備するとともに当該施設に対する研修運営費の助成措置を講じること.
(2)高度専門医療(二次・紹介診療)及び夜間・休日診療の提供体制の整備
 小動物診療における診療技術の高度化,提供形態の多様化に対する社会的要請に応えるため,[1]一次診療と高度専門医療との連携の確保のための地域ネットワーク体制及び[2]夜間・休日診療の提供体制の整備方針を獣医療法に基づく獣医療提供体制整備基本計画制度において明確化し,金融支援措置を含め,国及び都道府県において計画的整備の推進を支援すること.
(3)獣医核医学等の先端・高度医療の提供体制の整備
 獣医核医学診療の動物医療への導入に向けて必要な法整備を行うとともに,動物医療の高度化に対応し,動物医療補助専門職,獣医放射線技術専門職等のパラメディカル専門職について,資格(免許)制度の導入を検討すること.
(4)獣医師法等の法令の適用
 獣医師法等による獣医師に対する行政処分等の規制措置の適用に当たっては,特に動物飼育者との信頼確保を前提に獣医師道に対する背反等職業倫理違反を含め厳正に対処すること.
 なお,獣医師及びその業務に係る広告制限規定については,真に適正な獣医療の確保を図るとする規制の趣旨を踏まえ,実効あるものとして運用されたいこと.

 

【別紙6】
19日獣発128号
平成19年8月24日
環境省自然環境局長
 櫻井康好 様
社団法人 日本獣医師会
会 長 山根義久
災害時動物救護対策の推進について(要請)
 
 動物愛護管理施策を推進する上における獣医師及び動物医療の果たす役割については,日頃より評価いただくとともに,施策推進における獣医師会活動に対しご理解・ご支援を賜り厚く御礼申し上げます.
 さて,阪神淡路大震災以降,緊急災害時の被災者支援の一環として,被災した犬・猫等の家庭動物の救護活動に関する国民の関心は飛躍的に高まっております.特に最近の事例では,有珠山,三宅島の噴火災害,また,新潟県中越地震,そして,今般の新潟県中越沖地震においても現地自治体をはじめ,獣医師会等の動物関係団体により動物救援対策に当たる現地本部が組織化され,一般からのボランティアの参加,義援金等の支援を得て積極的な動物救護活動が行われているところです.
 一方,平成17年6月,動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)の一部改正がなされ,本会がかねてから要望してきた動物の所有者責任の原則に基づく日本型の動物管理施策を推進するための基盤整備が大きく前進し,とりわけ,同法に基づく「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」では,都道府県が定めるべき「動物愛護管理推進計画」の内容として「災害時対策」が示されているところです.
 今般,本会の小動物臨床部会においては,動物愛護管理対策における獣医師の果たす役割に関する検討の一環として,「緊急災害時における動物救護活動のあり方」について検討を行い,今後,各地方自治体が「動物愛護管理推進計画」に基づき獣医師会等の関係団体と協議の上,緊急災害時における動物救護の活動マニュアル等を策定する際の指針としての「災害時動物救護の地域活動マニュアル策定のガイドライン」を別添報告(略)のとおり取りまとめたところであります.
 つきましては,貴省におかれては,別添報告をご理解の上は,今後の緊急災害時動物救護対策の推進にご活用いただくとともに,都道府県が動物愛護管理推進計画の策定を行うに当たり,また,各自治体が各地区において緊急災害時動物救護対策の地域活動マニュアルを検討するに当たり,その参考に供されるよう都道府県にご指導いただきたく,よろしくお願いします.

 

【別紙7】
19日獣発第68号
平成19年9月10日
厚生労働省健康局長
 西山正徳 様
社団法人 日本獣医師会
会 長 山根義久
地域における共通感染症対策の整備・充実について(要請)
 
 食品衛生,感染症対策における動物医療関係施策の推進につきましては,日頃よりご尽力をいただき,厚く御礼申しあげます.
 人と動物の共通感染症(以下「共通感染症」という.)による社会的リスクに的確に対処するうえで,公衆衛生領域における動物医療専門職としての獣医師及び動物医療の果たす役割への期待が高まってきております.
 このような中で,先般,感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下「感染症法」という.)において,獣医師の責務規定や獣医師の届出対象疾病の拡充,動物の輸入届出制度が創設されるとともに,共通感染症について動物側からの疫学調査,対物措置,追跡調査等の法的措置が講じられるようになるなど,感染症法において獣医師及び動物医療の果たすべき役割について一定の法整備がなされたところであり,今後,感染症法に基づく動物衛生対策の地域における実効確保に向けての体制整備が求められるところであります.
 以上の事情を踏まえ,本会においては,本会の公衆衛生部会において感染症法に規定される動物に対する措置等を含む共通感染症対策の現状と課題について協議・検討を行い,[1]共通感染症対策の地域における取り組みのあり方,[2]共通感染症対策と獣医師の役割,[3]獣医公衆衛生部門と家畜衛生部門の連携のあり方,[4]国民に対する情報提供のあり方について,今後の対応の方向性を別添報告のとおり取りまとめたところであります.
 つきましては,貴省におかれては,別添(略)の報告内容をご理解の上は,下記の事項について特段の政策配慮を賜わりたく要請します.


1 地方自治体における共通感染症対策の取り組みについて
 厚生労働省の担当部局において,次の事項の積極的な取り組みについて地方自治体を指導すること.
(1)本庁の公衆衛生担当部局の感染症対策部門と動物対策部門との一元的な事務執行体制の確保
(2)動物管理センター(未設置のところにあっては保健所)を共通感染症対策の中核施設として位置付け,獣医師専門職の配置の促進
(3)共通感染症の検査・診断について,動物管理センターと地方衛生研究所の役割分担の明確化
(4)第一線の診療獣医師との連携を確保するため,診療獣医師の相談窓口の動物管理センター(又は保健所)への設置
(5)都道府県における「動物由来感染症予防体制整備事業」の積極的活用により,診療獣医師と医師及びその関係機関と自治体の情報交換・対策協議のネットワークの構築・整備
(6)獣医師会と連携した公務員獣医師及び診療獣医師がともに参加できる技術研修会等の積極的開催
(7)各種衛生情報の交換と定期協議・人事交流等による公衆衛生部門と家畜衛生部門との連携の一層の強化

2 共通感染症対策の普及・啓発について
 「狂犬病予防週間」等を新たに設けるなどにより,国民に対する狂犬病をはじめとした共通感染症に関する正しい情報の提供体制を一層充実すること.


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