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道野英司†(厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課輸入食品安全対策室長)
1 は じ め に 我が国の平成18年の食料自給率はカロリーベースで39%まで減少しており,国内生産ができない61%は海外に依存している.食料自給率が低下し,輸入食品が増加する中で,食品の安全性の中でも輸入食品問題は常に中心的な話題であり,食品安全行政の中で重要課題とされ,厚生労働省としても対策の強化を図ってきた. 食品衛生法は,食品の関係事業者に対し,公衆衛生の見地から必要な規制を行い,飲食に起因する衛生上の危害の発生防止し,もって国民の健康保護を図ることを基本理念としている.平成7年以降の3回の法律改正においても,輸入届出・審査手続の電算化,法令違反の蓋然性が高い食品に対する厚生労働大臣の検査命令制度の創設,国や食品などを特定して一律に輸入を禁止する包括的輸入禁止制度の創設,違反を繰り返す輸入業者に対して営業の禁停止を行う行政処分の創設,登録検査機関制度の導入など,制度の強化が図られた.また,添加物のポジティブリスト化,農薬・医薬品の残留基準のポジティブリスト化に代表される規格基準の充実も輸入食品問題が出発点となって整備されてきた. また,厚生労働省が輸入食品の監視指導のために配置している検疫所の食品衛生監視員数も過去20年間で約4倍の334人に増員したほか,横浜と神戸に輸入食品検疫検査センターを設立し,試験検査機能の大幅な充実強化を図ってきた. |
2 食品輸入の現状 平成17年の営業・販売目的の食品輸入は186万件,3,378万トンであり,20年前の昭和60年と比較すると,件数は約5倍,重量は1.5倍に増加している.これらの食品輸入の件数増は,品目毎の増加のほか,原材料中心の大口輸入から加工食品中心の小口輸入へのシフト,航空機による生鮮魚介類,高級食材などの高付加価値食品の輸入増,さらに従来輸入が少なかった野菜の増加などが寄与していると考えられる. 一方,輸入時検査は,モニタリング検査を含む行政検査61,811件,命令検査87,799件など合計18万9千件について実施され,935件を法違反として積み戻し又は廃棄等の措置を講じた. 違反の主な内容は,アフラトキシン汚染,病原微生物による汚染,有毒魚の混入,輸送途上の事故による腐敗・カビ発生,国内で使用が認められていない添加物を使用した食品,残留農薬基準違反,大腸菌群陽性などの成分規格違反などであった. これらの食品衛生法に違反する食品は,輸入手続が終了していない場合には廃棄処分や輸出国等への積み戻しなどの措置を講じ,国内流通している場合には回収等の措置をとった. |
3 施策の現状 食品の安全性確保は,事業者が一義的責任を有していること,また国の内外における食品供給行程の各段階において適切な措置を講ずることが食品安全基本法において規定されている. したがって,行政は輸入食品の安全性確保に当たっては,政府間の枠組み作りや輸入業者に対する監視指導として,[1]政府間協議などによる輸出国における生産・製造段階での対策,[2]検疫所における輸入時検査などの水際対策,[3]都道府県等による国内流通対策という3段階での対策を講じている. 先般公表した平成19年度輸入食品監視指導計画の新たな取り組みとしては,ポジティブリスト制度の着実な実施のため,検査項目のさらなる拡充を図るとともに,輸出国における農薬等の残留防止対策の調査を行うこととした.また,BSE問題については,現地査察,輸入時検査を通じた輸出プログラムの検証の継続とその結果を踏まえた検査体制を確保することとした. また,輸入時検査で継続して違反が発見された食品については,輸出国における衛生対策の確立を要請している.18年度の事例では,タイ産ハトムギのアフラトキシン汚染,ガーナ及びエクアドル産カカオ豆,中国産のねぎ,にんにくの茎,しょうがの残留農薬,ベトナム産イカ及びエビの残留医薬品,イタリア産ソフトタイプチーズのリステリア汚染などで違反事例が多発したため,輸入禁止措置発動を検討していることを輸出国政府に通知し,徹底した違反原因の究明と再発防止対策の確立を要請した. さらに,これら輸出国政府と二国間協議を実施するとともに,残留農薬をはじめとした試験検査技術の協力も行っている. |