会報タイトル画像


3 最新の医学的知見に基づく感染症分類の見直し
 感染症法においては,感染症類型に応じて入院や就業制限等の必要な予防措置を講ずることとしているが,一方,過度な対応が患者の人権を侵害する可能性もあることから,少なくとも5年ごとに,最新の医学的知見等を踏まえ見直すこととしている.
 また,重症急性呼吸器症候群(SARS)については,平成15年の感染症法改正で,感染力等の知見が未知であったことから一類感染症に位置付けられたものであるが,ウイルスの解明や医学的知見の集積等を踏まえ,2年ごとの見直しを求められていたところである.
 この度の見直しでは,病原体の規制との整合を踏まえ,南米出血熱を一類感染症に分類したほか,主に動物由来感染症の原因となるダニ媒介脳炎,東部馬脳炎,鼻疽等11疾病を新たに四類感染症に規定したところである.また,結核予防法の廃止に伴い,結核を二類感染症に追加するとともに,重症急性呼吸器症候群(SARS)を一類から二類感染症に改め,さらに,コレラ,細菌性赤痢,腸チフス及びパラチフスといった腸管感染症については,国内の衛生水準等も考え,法的な隔離措置が可能な二類感染症から,集団感染を防止するための就業制限を可能とする三類感染症に改めたものである.
 感染症に分類された結果,感染症法に基づく対物措置等が可能となる.この度追加された疾病のうち,特に,結核に罹患した動物について,感染症法に基づく移動禁止,殺処分等の措置が可能となったことは,獣医関係者にとって重要である.

4 結核予防法を廃止し感染症法への統合
 結核予防法が感染症法に統合され,結核対策のより一層の適正化,充実化が図られる中で,従来から関係者の悲願であった結核罹患動物に対する行政措置も可能となった.
 わが国においては,新規の結核患者はいまだ毎年3万人程度いるが,動物からヒトへ結核を感染させる感染源となり得る動物としては「サル」があることから,結核のサルについては,感染症法第13条に基づく獣医師の届出としたところである.結核の定義は,「結核菌群(Mycobacterium tuberculosis complex,ただしMyco-bacterium bovis BCGを除く)による感染症」であり,結核のサルの届出基準は次のとおりである.
 獣医師は,次の表の左欄に掲げる検査方法により,サルまたはその死体について結核の病原体診断をした場合には,法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない.この場合において,検査材料は,同表の右欄に掲げるもののいずれかを用いること.
結核のサルの届出基準
 獣医師は,臨床的特徴または疫学的状況からサルまたはその死体が結核にかかっている疑いがあると考えられ,かつ,次の表の左欄に掲げる検査方法により,当該サルまたはその死体について結核に感染していると診断し,またはかかっていた疑いがあると検案した場合には,(1)にかかわらず,法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない.この場合において,検査材料は,同表の右欄に掲げるもののいずれかを用いること.
結核のサルの届出基準

5 お わ り に
 病原体規制に関しては,衛生研究所等の研究所,臨床または食品等の検査施設,家畜保健衛生所や動物病院など,獣医師が活躍している分野に幅広く関係していると考えている.このため,本稿で概説したことや,さらに,厚生労働省HP等でより詳細な内容を把握していただき,適切に法令遵守していただきたいと考えている.
 もちろん,5月2日の省令施行,さらに,告示案のパブリックコメント,これらパブリックコメント中の事業者向けの説明会(全国7カ所9回)開催などに加え,マニュアルの作成等を行ってきたところであるが,引き続き,この6月からの施行の実態を踏まえ,関係者からも十分な意見聴取等を行いながら,円滑な運用を目指していきたいと考えている.
 感染症対策全般としては,今回の改正規定のみならず,これまでの鳥インフルエンザ等の人獣共通感染症(ズーノーシス)に対する対応等も含め,引き続き,公衆衛生部局,家畜衛生部局や環境部局が連携しつつ対策を進めることが重要であるので,引き続き,獣医師及び獣医師会関係者の皆様のご理解・ご協力をお願いしたい.

 

戻る


† 連絡責任者: 三木 朗(厚生労働省健康局結核感染症課)
〒100-8916 千代田区霞が関1-2-2
TEL 03-5253-1111 FAX 03-3581-6251 
E-mail : miki-akira@mhlw.go.jp