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【議決事項】
第1号議案 第64回通常総会における日本獣医師会会長感謝状授与の件
 大森専務理事から,総会において,[1]平成18年度学会年次大会の開催を受託し,獣医学術の振興・普及に寄与された埼玉県獣医師会,[2]会員加入の推進を通じ,獣医師会組織の強化に顕著実績をあげた(会員数について,直近年度の3年間連続して3%以上増加)大阪市獣医師会,[3]昭和24年から40年にわたり本会顧問税理士として,税務運営の指導等について功績を残され,このたび退任される松木 茂税理士に対して,各々会長感謝状を授与したい旨が説明され,本議案は異議なく承認された.

第2号議案 第64回通常総会に付議する事項の件
第1号議案 平成18年度事務事業及び決算報告の件
第2号議案 平成19年度事業計画(案)及び収支予算(案)の件
第3号議案 平成19年度会費及び賛助会費の件
第4号議案 獣医師道委員改選の件
第5号議案 役員選任管理委員改選の件
第6号議案 役員改選の件
(1)大森専務理事から,第64回通常総会に付議する事項として,第1号から第6号の上程議案について,資料に基づき説明され,その中で,玉井代表幹事から次のとおり監査報告が行われた.
《監査報告》
 平成19年5月30日及び31日の両日,平成18年度における日本獣医師会の事務事業の実施状況及び会計状況について,会長から事務事業の報告並びに収支計算書及び財産目録書の提出を受け,一般会計及び特別会計についてそれぞれ諸帳簿,証拠書類等に基づき監査した結果,いずれも定款及びその他の規程に従い適正に処理されていたことを報告する.
(2)質疑応答として,公益法人改革を踏まえ,平成18年度の決算報告から新会計基準に基づいた経理処理がされているが,地方獣医師会では会計処理の移行に大変苦慮すると思われるとの意見があり,大森専務理事から,今後,各法人が公益認定法人としての移行を前提とする場合,平成18年度から新公益法人会計に速やかに移行する旨の指導通知が出されており,早期に取組む必要がある.地方獣医師会に対しては,全国事務担当者会議での説明の他,要望があれば各地区(ブロック)の研修会等に適任者を派遣して説明等の対応を考えている旨説明された後,本議案は承認された.

【協議・検討事項】
 職域別部会委員会報告の件(説明と対応)

(1)大森専務理事から,産業動物臨床部会(産業動物・家畜共済委員会),小動物部会(小動物委員会,野生動物委員会,学校飼育動物委員会)において,委員会報告がとりまとめられたことを受け,各部会長から取りまとめの概要及び今後に向けての対応等についての説明が依頼され,各部会長から次のとおり報告がなされた.
ア 産業動物臨床部会 産業動物・家畜共済委員会報告
 近藤部会長から,本委員会では産業動物診療獣医師の確保対策をテーマとし,5回の委員会を開催し,報告書を取りまとめた.まず,[1]産業動物診療獣医師の養成として,国民の食の安全・安心に関与する産業動物臨床獣医師の養成は,国の責務であり,中でも,大学での教育が重要として,各大学で教員及び教育カリキュラムの整備等を行う一方,本会でも獣医師の需要を把握し,獣医学教育の改善を引き続き文科省,関係機関並びに各大学に要望する.さらに獣医学系大学の産業動物臨床カリキュラムの実践には,各地区の家畜保健衛生所,家畜衛生・畜産関係研究機関等が協力支援体制を構築する必要があるとした.続いて[2]診療獣医師の就業の推進として,まず,産業動物診療獣医師は,我が国畜産業において不可欠かつ重要な役割を担っているとの観点から,産業動物臨床分野への就業を希望する学生を支援するため,雇用する側と就業を希望する側の情報をデータベース化して,全国一律に就業の機会を一元的に扱う機関を設置する必要があり,また雇用者は就業に採用した獣医師に対し,臨床研修と共に関連業務の研修と実務を十分に訓練し,新しい時代に合った臨床獣医師像の育成に配慮することとし,さらに大学や行政による雇用者の支援対策が必要であるとした.次に[3]家畜共済事業の適正化として,家畜共済制度は,現在診療所の整理統廃合・経営の合理化等が進んでいるが,勤務する獣医師への配慮や評価は不足しており,また国は獣医療計画制度による獣医療供給体制の整備を図っているが,現実的に各県の対応は温度差がある.このような状況下で,本会は農林水産省に対し,共済診療所の統廃合・合理化に伴う診療地域の拡大による診療獣医師の負担の軽減のため,国の助成による適切な施策の実施及び産業動物診療の適正な診療費の水準について,改めて技術料等についての他業種との比較等の視点を踏まえ分析し,診療点数の抜本的な見直しの検討を要望する必要があるとした.さらに[4]産業動物診療獣医師の処遇の改善として,現在産業動物臨床現場では6年制移行後の獣医師が中心的・指導的役割を担ってきているものの,その処遇は同じ6年制教育を受けた医師と均衡を欠くだけでなく,小動物臨床分野の獣医師と比較しても低い状況である.このため産業動物診療獣医師の不足が深刻化する一方,新規卒業獣医師,若手獣医師の小動物臨床分野への就業の拡大傾向が続くという状況である.この需給のバランス改善には,不足分野に就業する獣医師の処遇改善が必要であり,このため本会は関係する職域団体とも連携し,共済団体及び家畜衛生分野の公務員獣医師への医療職(一)と同等の処遇水準の確保,獣医師雇上手当ての改善を目標に,日本獣医師政治連盟に働きかけると共に,各地方獣医師会においても国会議員及び地方獣医師会議員へ働きかける等の積極的な運動を展開する必要があるとした.なお,[5]文末の「さいごに」では,産業動物診療獣医師が誇りを持って職務に従事し,また多くの若い獣医師が希望を持って産業動物臨床分野に参入できる環境を整備するための特段の政策的配慮が望まれこととした上で,産業動物臨床獣医師自身がその責務を全うするために,自己の研鑚を欠かさず卓抜した能力を身に付け,「日本の畜産を支える.」気概を持続しつつ日々の職務に当たるよう,自己の評価と処遇を改善することが必要であると結んだ旨説明され,獣医師の確保対策については,勤務獣医師の待遇改善が第一歩であり,本会のみならず,各地方獣医師会が地元国会議員,地方議会の議員等に対しても積極的に要請活動を実施する必要がある.
 引き続き,横尾副部会長から,同報告書の中で別添として取りまとめられた中小家畜動物臨床小委員会報告」について,本委員会はテーマを中小家畜動物臨床の現状と課題として産業動物・家畜共済委員会において別途設置され,3回の委員会を開催して報告書を取りまとめた.まず,[1]現状として,養豚,養鶏などの中小家畜は,従来,飼料や製薬メーカーによって動物医療が担われてきた状況があり,一部の生産者にも動物医療はサービスの一環という認識が定着していたが,最近,先進的な生産者の中には,対価も支払っても高度な生産動物医療を要望するという意識の変化が出てきたという状況にあるとした.次に[2]中小家畜の生産・流通において望まれる動物医療の提供体制として,生産現場での感染症,慢性疾病等の対策である予防衛生管理の徹底等に加え,ポジティブリスト制度の導入に基づく農家の指導には,管理獣医師による定期的な農場訪問が必要であるとした.続いて[3]中小家畜専門の臨床獣医師の育成として,現状,地域で核となる経験ある獣医師が少なく,高度な動物医療や技術提供等が困難な状況にあるため,緊急な診療,群管理,経営指導等に対応できる専門獣医師の育成が必要であるとし,獣医師会,大学,研究機関,畜産団体が連携し,学生,新卒獣医師等に実習の場を提供するとともに,研修の認定制度構築による技術研鑽の動議付けすることが重要であるとした.[4]今後の対応としては,生産者を適切に指導できるよう,中小家畜動物臨床のためのネットワーク(行政,大学,共済団体等が中心となり海外・日本・地域ネットワーク)の構築,巡回・定期診療体制(専門獣医師による生産向上の指導と畜産物の安全確保のため,生産現場への定期・巡回システム)の構築,広報活動(生産者,消費者へ獣医師の関与による食の安全の確保,獣医師へ中小家畜動物臨床の現状を広報)が必要であることとした旨報告された.

イ 小動物臨床部会
 細井戸部会長から,次のとおり報告された.
(ア)小動物委員会報告
 小動物臨床職域の現状と課題に対する対応をテーマに,臨床研修体制,獣医核医学,狂犬病予防注射事業,広告制限,高度専門医療,夜間・休日診療体制の整備のあり方について,4回の委員会を開催し,検討するとともに,民間動物診療施設における紹介診療状況及び獣医学系大学付属家畜診療施設における高度専門医療の実態に関するアンケートの実施の他,夜間休日診療施設を有する名古屋市獣医師会及び兵庫県獣医師会に運営状況等を聴取し,データを解析して報告書へ反映した.
 報告については,まず[1]大学における獣医学教育,卒後教育の充実及び専門医育成の重要性として,アンケート調査の結果,獣医学大学の教員,教育内容,施設等の不十分が指摘され,獣医学教育の充実が叫ばれる中,卒後教育等については,停滞している感があり,本会でもこれらの検討を進め,学術部会とも連携しながら体制整備の施策を講ずる必要があることとした.次に[2]獣医師臨床研修制度の充実として,卒後臨床研修の民間の指定診療施設への希望はほとんどないため,行政と獣医師会が十分連携し,研修体制の整備の進展を図る施策を講じるよう行政へ要請する必要があるとした.続いて[3]核医学等の高度医療対応として,早期に関係法令の整備を行うとともに,研修会の開催等により獣医師への情報提供・啓発を行う必要性があるとした.さらに,[5]狂犬病予防注射事業のあり方として,登録率・予防接種率の向上に努めるとともに,獣医師会の会員の結束のもと,公益法人の実施事業との意識を高め,社会貢献という視点から取り組む必要があるとした.[6]広告制限のあり方として,広告制限の緩和については,消費者に不利益をもたらす勧誘診療の助長等にならぬよう,本会から行政へ要請するとともに,望ましい広告のあり方について検討し,提言する必要があるとした.[7]高度専門医療(二次・紹介診療)施設のあり方として,アンケートの調査結果からも,地域における獣医師の理解を得て,二次・紹介ネットワークの構築が必要であり,また本会は獣医学系大学の教育改善が各部門の施設,設備,人員の充実,高度医療に対応し得る専門医養成システムの整備につながることを考慮し,獣医学教育の改善を支援する必要があるとした.[8]夜間休日診療の提供体制のあり方として,獣医師会の社会貢献,会員獣医師の利便性及び組織の結束の向上等につながり,各地方獣医師会が体制整備に積極的に関与する必要があるとした.
(イ)野生動物委員会報告
 日本獣医師会として外来生物にかかわる対策の位置づけを明確化した上で,今後の諸対策の一層の整備充実を図る必要があるとの考えの下,「外来生物に対する対策の考え方」を検討テーマとして,5回の委員会を開催し,検討を行った.報告については,獣医師会が現状で取り組むべき課題として,野生動物対策のための普及・啓発活動と費用の確保,野生動物にかかわる分野の職域別部会及び学会での位置づけの明確化,野生動物対策にかかわる専門研究機関の設立,獣医師の外来生物への理解を深め問題意識の共有化,安楽殺処分等,防除事業に対する支援体制の確立,野生動物関係諸団体(関係学会,猟友会等),生産者団体(農協等)との連携強化を明示した.なお,結びとして,「特定外来生物の安楽殺処分に関する指針」及び「外来生物法に基づく防除実施計画策定指針」についても取りまとめたので,獣医師及び獣医師会が今後,この内容に基づいて行動することを求め,本報告書が関係者の問題意識の共有化の進展と,今後の各地域における外来生物対策の円滑な整備推進に活用されることを望むこととした.
(ウ)学校飼育動物委員会報告
 学校飼育動物活動の推進をテーマに3回の委員会を開催した.まず,学校教育における動物飼育として,学校飼育動物の定義及び意義,学習指導要領及び教員養成課程における位置づけ,教員の研修,獣医師養成課程における位置づけを考察し,次に学校獣医師制の確立の必要性について,獣医師の関与の根拠として,「獣医師法」,「動物の愛護及び管理に関する法律」,「家畜伝染病予防法」,「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」,「学校保健法」を示し,続いて獣医師制の必要性として,学校獣医師の学校保健法(昭和33年法律第56号)に基づき,都道府県教育委員会に配置される学校保健技師として獣医資格者の民間委嘱を推進し,将来的には全国の小学校に獣医師資格者を「学校獣医師」として必置するよう法整備を行うことにより,学校飼育制度として確立することが望まれるとし,さらに学校獣医師の役割を記載した.最後に学校と獣医師の連携として,八戸市,栃木県,群馬県,西東京市,新潟市,福岡県における実際の活動事例を紹介し,資料として,アンケート調査結果を添付した.
(2)質疑応答として,[1]小動物臨床部会の報告は,膨大なものだが,どのように活用するのか,[2]学校飼育動物の対応については,支部単位で精力的に活動している地方獣医師会もあるが,多くがボランティアのような状況で対応しており,今後,教育委員会等からの予算措置等も考慮する必要がある旨の質疑・要望があり,[1]については,細井戸部会長から,本会のホームページ等で広報するが,小動物分野の問題として,構成獣医師が共通の認識をもたれるよう地区等において説明の機会を設けることも考慮したい.特に野生動物や学校飼育動物の問題は,地方獣医師会での取り組みについての説明は必要と考える.続いて大森専務理事から,報告に基づく取り組みは,対外的な課題と対内的な課題に分けて考える必要がある.対外的な課題については,制度問題,行政上の課題等,本会の報告をもとに所管官庁に対する要請,関係団体に対する協力を要請する.対内的な課題は,地方獣医師会あて,報告に基づき,地方獣医師会での取り組みを示し,対応を依頼する.なお,併せて省庁等への要請活動の実施状況等についても周知する.さらに地区学会,学会年次大会等の場での講演発表での周知が相応しい課題や,地方獣医師会で開催する研修等で説明の依頼がある際は,講師を派遣する等の対応も考慮したい.なお,学校飼育動物の報告及び取りまとめ中の災害時動物救護活動地域マニュアル策定のためのガイドラインは,地方獣医師会のみならず,協力いただいた関係団体に対しても,活用いただけるよう冊子として印刷,作成する予定である.[2]については,細井戸部会長から,アンケート調査でも,予算措置をしている獣医師師会は少なく,一部の獣医師が中心となって個人負担で対応しているケースが多い.このたびの委員会報告では,学校飼育動物を定義し,法的な観点から獣医師の必要性について明示されたので,前回の報告と併せて文部科学省,各教育委員会あて送付し,理解を得ることにより予算措置につながること期待している.また,地方獣医師会におかれても報告の事例を参考に取り組まれることにより本事業は一層推進することと思われる旨各々説明された後,了承された.
(注:各委員会の議事の詳細は,本会の会員専用ホームページに掲載してある.)

 

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