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論 説
今後の動物愛護管理施策について
─基本指針の策定をうけて─


築島 明(環境省自然環境局動物愛護管理室室長

先生写真 1 は じ め に
 平成17年に改正された動物愛護管理法には,動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針(以下,「基本指針」)を環境大臣が定め,基本指針に則して都道府県が動物愛護管理推進計画を策定するという仕組みが導入された.
 この法改正をうけて,環境省では,中央環境審議会に意見を求めたうえで,昨年10月31日,基本指針を決定,告示した.
 本稿では,基本指針に掲げられた主な目標を紹介することで,今後の動物愛護管理行政の展望に代えたい.なお,意見にわたる部分は私見であることをお断りする.また,日本獣医師会の藏内副会長には,中央環境審議会の委員として,議論に参画いただき,貴重なご意見を賜った.この場をかりて改めて御礼申し上げる.

 2 基本指針について
 基本指針は,動物の愛護と管理にかかる行政としての基本的考え方を示すとともに,国,自治体における今後(平成29年度まで)の施策展開の方向性を示すものである.
 施策展開の方向性では,施策別の取組として,[1]普及啓発,[2]適正飼養の推進による動物の健康と安全の確保,[3]動物による危害や迷惑問題の防止,[4]所有明示(個体識別措置)の推進,[5]動物取扱業の適正化,[6]実験動物の適正な取扱いの推進,[7]産業動物の適正な取扱いの推進,[8]災害対策,[9]人材育成,[10]調査研究の推進,の10項目があげられた.この10の施策の中で定量的な目標をあげたものは2つある.

3 基本指針の数量的目標
 (1)引取数の半減
 一つ目は,「動物の健康と安全の確保」のなかで位置づけた「都道府県等における犬及びねこの引取数の半減」という目標であり,各方面からの関心も高い.
この定量的目標は,平成16年度に約42万頭であったものを10年間で21万頭に減らし,この結果として殺処分数も減らそうというものである.引取数は,これまでも減少(図1)してきており,特に,犬については平成6年からの10年間で約1/3と大幅に減少した.終生飼養や逸走防止の意識が徐々に定着しつつあることを伺わせる.一方,ねこについては,2割減程度の減少である.これは,産み捨てられた子ねこが多いことなどが考えられる.自治体によっては,犬の引取数の水準がまだ高く,犬についての取り組みの努力は引き続き重要であるが,この目標の達成に向けて,今後,ねこの飼養放棄の防止,所有者不明のねこの発生の防止等がクローズアップされてくる.
図1
 図1 犬の引取り数等は,動物愛護管理法に基づく引取りと狂犬病予防法に基づく徘徊犬の収容頭数(返還分を除く)を足した数.なお,犬の引取り数と徘徊犬収容頭数との間には,一部重複集計あり.

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