- V 会議概要:
- 【会長挨拶】
冒頭,2月19日に逝去された白石清則理事に対して黙祷が捧げられた後,山根会長から,大要次の挨拶があった.
(1)本年度の三学会年次大会(さいたま)は,地元埼玉県獣医師会高橋会長をはじめ関係各位の協力を得て,盛会裏に終了することができたことを厚くお礼申し上げる.
(2)狂犬病対策については,8月より中国での狂犬病の発生状況に鑑み,厚生労働省へ対応を要請していたが進展せず,11月に日本人帰国者2名が発生,死亡したことを受け,北村顧問及び谷津獣医師問題議員連盟会長に尽力いただき,12月に獣医師問題議員連盟総会を開催いただき,その場で再度要請し,3月にようやく同省健康局長から自治体と獣医師会も連携強化を明示した通知が出された.
(3)大学の獣医学科学生の定員増加を文部科学省で検討している旨の新聞報道については,地方獣医師会長からも大変ご心配をいただいているが,文部科学省の担当官は否定しているものの,水面下では進行していることが疑われ,本会では関係方面に働きかける等,早期対応に努めており,地方獣医師会にも協力いただき,何としてもこれを阻止したい.
(4)先日,獣医師国家試験の漏洩については,獣医界に大変な汚点を残すことになった.調査委員会でも,教育者という立場にある者の意識の低下を指摘され,誠に情けない状況であり,教育者という立場からも迷惑をかけた関係者にお詫び申し上げたい.
(5)行政への要請活動については,要請の場で担当官から,地方からそのような要請はないと指摘される.地方獣医師会におかれても,地方議会,地方選出の国会議員を通じ,本会と連携をとりながら国への要請動に尽力いただきたい.
(6)本日は,公益法人改革等,明日の全国獣医師会会長会議の検討事項について協議いただきたい.
【議長就任・議事録署名人の指名】
続いて,山根会長が議長に就任し,麻生,戸谷両理事を議事録署名人に指名して会議が次のとおり行われた.
【報告事項】
1 業務概況等の件
前回理事会以降(平成18年12月11日以降平成19年3月20日まで)の業務概況について大森専務理事から報告が行われ,その中で,埼玉県獣医師会高橋会長から,年次大会の報告として,登録者1,850名及び一般公開講座の参加者2,362名を合わせ,4,212名に参加いただき,大変盛会のうち終了できたことをお礼申し上げる旨述べられた後,職域別部会の部会委員会の開催状況等について,部会長である担当理事から次のとおり説明がなされた.
まず,小動物部会長の細井戸理事から,[1] 小動物委員会については,現在,獣医学系大学の動物診療施設における高度二次診療についてのアンケートを取りまとめたところであり,小動物診療獣医師に対する臨床研修体制の整備,獣医核医学等の高度医療対応,狂犬病予防注射事業整備の方向,広告制限のあり方,夜間休日診療提供体制の整備のあり方等について意見聴取を終え,4〜5月に委員会を開催して,小動物臨床職域の臨床等課題に対する対応について報告書を作成する予定である.[2] 動物愛護福祉委員会については,昨年設置した「災害時動物救護活動地域マニュアル策定のためのガイドライン」について,4〜5月に第2回委員会を開催し,ガイドラインを取りまとめる予定である.[3] 野生動物委員会については,第4回委員会を開催し,外来生物に対する考え方の中間報告を取りまとめたところであるが,さらに4〜5月に第5回委員会を開催し,特定外来生物の処分方法等について検討して,報告書を成案として取りまとめたい.[4] 学校飼育動物委員会については,報告書(案)について,委員の確認が終了次第,理事会に報告したい.[5] 動物診療補助専門職検討委員会については,第2回委員会を開催し,法令に基づく資格認定及び資格創設の前段階として補助者団体の設立について意見交換され,できれば次回理事会にも中間報告書を示したい.次に学術部会部会長の酒井理事から[6] 学術・研究・教育委員会については,外部評価による獣医学教育の改善について3回の委員会で検討し,獣医学教育改善に向けての外部評価のあり方の報告書を取りまとめた.[7] 獣医専門医制検討委員会については,専門医のあり方について検討し,報告書を取りまとめた.[8] 獣医師生涯研修事業運営委員会については,第3回委員会を開催し,プログラム認定証の様式及び研修カリキュラムの改定を行った.[9] 獣医学術奨励賞選考委員会については,学会年次大会(さいたま)において,奨励賞を選考し,総会において学術賞,功労賞と併せて表彰を行った.続いて,職域総合部会部会長の大森専務理事から,[10] 総務・広報委員会については,第2回委員会を開催し,公益法人改革に向けての本会と地方獣医師会の対応,本会と地方獣医師会との情報交換による獣医事問題の解決等の連携強化,獣医師賠償責任保険の改定として施設加入方型及び狂犬病予防注射事業の保険の導入を協議した旨各々報告された.
2 関係省庁等要請活動の件
大森専務理事から,「獣医師法第17条の規定に関する疑義照会及び獣医事監視・取締りの徹底」についての要請活動について報告がなされた(本誌第60巻第4号255頁参照).
3 狂犬病予防対策の整備・充実の件
(1)大森専務理事から,厚生労働省健康局長からの「狂犬病予防法に基づく犬の登録,予防注射等の推進」についての通知を受け,地方獣医師会会長あて「狂犬病予防対策の整備・充実」について協力依頼した旨報告がなされた(本誌第60巻第4号251頁参照).
(2)これに対して,[1] 当獣医師会では,非会員の獣医師が弁護士を通じて,行政を予防注射事業を獣医師会の支部のみと契約することは独占禁止法に違反すると,訴えたため,4月から非会員も含めた形での対応を迫られることとなった.これまで区長会,市町村会が横並びに,獣医師会の支部と予防注射料金の一律化等の契約を締結していたが,事務移管後,このような結果となった.これまで獣医師会により適切に実施されていた事業への影響,さらにこのようなことが進めば,狂犬病予防制度自体の崩壊に繋がることも危惧される.厚生労働省健康局長から通知は出されたが,独占禁止法が優先され,対抗する手立てがない.[2] 当県においては,局長通知の効果か,自治体が広く予防注射の広報を実施したが,本問題については,本会の部会委員会でも弁護士の意見を伺う等して,取組みを強化する必要がある.獣医師会の根幹に関わる問題であり,公益法人改革の問題を含め,真剣に議論いただきたい.[3] 当県では,会員獣医師が個人契約で事業を実施したいと,公正取引委員会に訴えたため,即刻,弁護士に依頼し対応したが,予防注射を獣医師会のみに制限することは独占禁止法に抵触するとのことであった.また,公正取引委員会から狂犬病予防注射料金の中に獣医師会の運営費のような費目を含むべきでないと指導されたので,地方獣医師会におかれては,公益法人改革に向けて十分留意する必要がある.[4] すべての構成獣医師が,このような地方における狂犬病予防注射問題を理解し,個別,集合を問わず,定期予防注射は獣医師会が自治体の委託を受けて行う事業であることを認識する必要がある.日本獣医師会は,単に法的に対抗するのでなく,地方獣医師会と都道府県,市町村が契約を結ぶ方向性を支援する姿勢を示すべきである.[5] このたびの局長通知は,自治体が地方獣医師会へ事業委託するに際しての重要な指針となったが,注射料金については,獣医師の手当ても含め,条例で一律に示す必要がある.地方獣医師会においては,会費のみでの運営が困難な実情も理解できるが,接種率40%という状況では社会の理解は得られないことを認識すべきである旨意見が出され,これに対して,大森専務理事から,今回の厚生労働省健康局長の通知は,自治体が獣医師会と連携を密にして予防注射業務を推進する必要性を明確に示す等,今までにない重みのある通達であるが,独占禁止法では,一定の事業分野における現在または将来の事業者の数を制限することを禁じており,地方獣医師会,獣医師会支部にとって問題になりかねない.今後は,独占禁止法に抵触しないよう慎重を期し,今回の通知を背景に,本事業を獣医師会が行う重要性を自治体に十分認識させる必要がある.続いて,山根会長から,本問題について,現状,公正取引委員会の見解を覆すことは困難であることを理解したうえでの対策の方向を模索すべきである.ある国会議員が,狂犬病予防事業を200億円もかけて実施すべきか疑問視するとの発言をされた.人のインフルエンザの予防接種は個人の責任において実施されている.同様に,狂犬病予防接種も国の事業でなく任意接種にすれば,予算を節減し,このような非会員の問題も解決するという見解も示唆されている現状も認識しなければならない.公益法人改革に向けても,狂犬病予防注射事業に頼った獣医師会の運営形態から脱却する時期に来ており,会費による運営を大前提とした自助努力が必要である.今後,非会員の狂犬病予防注射事業への参画を制限することは困難である.局長通知のとおり市町村並びに獣医師会が綿密な連携を構築し,その円滑な実施及び推進に努めることが,我々に課せられた使命であり,その方向を模索すべきである.関係各位におかれても,狂犬病予防注射のあり方を原点から考え直す時期であることをご理解いただき,今後とも,ご意見をいただきたい旨説明された.
4 平成18年度地区獣医師大会決議要望事項等に対する対応の件
(1)大森専務理事から,平成18年度地区獣医師大会決議要望事項等に対する対応については,先月の地区獣医師会連合会会長会議で協議を経た旨報告するとともに,次のとおり説明が行われた.
《本誌第60巻第4号236頁(平成18年度地区獣医師会連合会会長会議議事概要)参照》
(2)これに対して,[1] 獣医師の需給に対する検討会の運営方法等について,[2] 地方自治体では,待遇が不十分なためか,獣医師職員が不足しており,食の安全・安心確保も困難な状況を迎える.最重点事項として,日本獣医師会に取り組んでいただきたい旨質疑,要望があり,[1] については,大森専務理事から,本検討会は,農水省の消費安全局長の私的諮問機関として11月に設置されたが,農水省から事前に相談があり,その際,需給の検討が獣医療提供施策の充実,整備に資する目的なら賛成するが,単なる数字合わせで,大学の質の改善に反して定員増に繋げるような方向のための材料とするなら,獣医師会は反対する旨伝えたところ,獣医学教育は文科省の所管であり,本検討会は獣医師の需給を精査して,獣医師の体制整備に資するための基礎資料を得る目的である旨回答を得て了解したものである.本検討会の委員は,本会の中川副会長も含め,獣医事関係者が参加しているが,この検討会は公開されている.仮に獣医師が不足しているとの方向が示されれば大きく報じられる恐れがある.このような状況下で,先般,日経新聞の報道がなされたが,内容は具体的な部分にも言及しており,関係者が明確な意図をもってリークした疑いが強い.一方で,以前から獣医系大学設立が取りざたされており,日本獣医師会としては,獣医学教育の整備・充実が第一義的な目標であるとの理念の下,関係省庁はもとより,獣医師問題議員連盟にも働きかけているが,文科省,農水省ともに明確な態度を示さない状況である.中川副会長には,職域に偏在はあるものの,全体の需給は足りているので,農林水産省の需給政策の中で検討し,調整策を打ち出すよう依頼する方向でまとまるよう奮闘いただいているところである.なお,本検討会の座長は,今まで教育改善に尽力されてきた唐木先生であり,今後,我々の力になっていただくとともに,獣医師会としても強力に支援していきたい.次に中川副会長から,会議における検討の素材は,農水省の収集したデータであり,これをもとに需給の見通しを論議するという方向で進められているが,このデータに問題がある.家庭動物の飼育数,家畜の数,畜産物の消費者の需要等,国の施策沿った数であり,獣医師については,年齢別,就業率の男女別の率等の他,女性獣医師数,獣医系大学の女子学生数等のデータが示されている.本会は,偏在はあっても獣医師は不足していないとの立場であり,偏在の理由は処遇にあると訴えているが,農林水産省が独自に実施したアンケート調査結果では,小動物分野の獣医師は,開業してから5年後の所得の見通しについて,年間1,000万円以上の所得を想定している者が58%,さらに,そのうち2,000万以上を想定している者が30%以上というデータを示した.これでは,一般消費者の代表に小動物開業獣医師は高収入であるという印象を与えかねず,先ほどの女性獣医師の増加,女性の就業率低下のデータ等を考慮すると,今後,獣医師不足の事態が生じるという論理を展開する方向で議論が進められており,他の委員がこのデータ解析をどのように判断するかにより,結論が大きく左右される.続いて,細井戸理事から,今後,本会で真実が把握できるような調査をし,検討会でのデータに対向する資料を備えることも必要である.さらに山根会長から,獣医師の需給については,農林水産省は,定員増加を前提として,検討会を設置したように思えてならない.農林水産省の担当課長は,地方行政の職域において獣医師不足している声があると述べたが,医師の地方での不足,小児科医,産婦人科医の不足と獣医師の状況は,問題の本質が異なり,公務員獣医師の待遇があまりに悪いため,やむなく小動物へ進むといった状況で偏在化が生じていることが理解されておらず,一方,小動物開業者獣医師が相対的に高収入であるの否か,調査する必要がある.先の課長は,獣医系大学の定員増を決定した際,予算化はないと述べたが,国立大学では顕微鏡を購入するに苦労するような現状にあり,今より教育の質が低下することは火を見るより明らかである.我々が,これまで現状を打破しようと,外部評価委員を設置し,少しでも再編整備の方向に進むよう努力している状況で,軽々と定員を増員すれば,日本の獣医学教育は,欧米のアクリディケーションシステムどころか,インターナショナルな教育から大きな遅れをとると課長にも厳しく明言したところである.別の課長からは,獣医師会,地方獣医師会も含めて,文部科学省局長,事務次官クラスに対して,積極的に意見書を提出いただきたいとのことで,地方獣医師会におかれても地方議会,地元国会議員に依頼して意見を提出していただきたい.需給問題にも,裏には大きく政治的な思惑が働いているので,その点を踏まえ,我々も日本獣医政治連盟活動を強固にする.そして,明日,12月に続き,獣医師問題議員連盟総会を開催いただくように,現在,谷津会長以下,議員連盟の方々には大変尽力いただいているが,今後とも,職能団体として,自分たちの権利を主張するばかりでなく,社会責務を十分果たしていることも,代議士の方々にも理解いただくとともに,機会あるごとに,本会,地方獣医師会の双方が積極的に要請活動実施する必要がある.[2] については,山根会長から,県によって大きく待遇が異なること事実であり,地方においてもデータを収集等,積極的に取り組んでもらいたい.待遇について,医療職俸給表の改善のみで解決することは現実的でなく,今後,引き続き多面的に検討し,明確な根拠を示し,政治的対応も考慮する必要がある.ついては,日本獣医師会だけに頼るのではなく,一部の獣医師会のように県議会を通じて意見を提出したり,知事の理解を得るよう要請したり,待遇改善が見込まれるよう地方獣医師会においても,積極的に取り組んでいただきたい旨説明された.
5 平成19年度以降の日本獣医師会学会年次大会開催計画の件
大森専務理事から,平成19年度日本獣医師会三学会年次大会については,本会主催,香川県獣医師会共催,四国地区獣医師会連合会の協力により,平成20年2月9日〜11日に香川県高松市サンポート高松にて開催し,平成20年度については,岩手県獣医師会の内諾を得,平成21年1月22日〜24日,岩手県盛岡市にて開催を予定している.平成21年度については未定だが,各地区においても開催担当県に立候補をご検討いただきたい旨説明がなされた.
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