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II 日本獣医師会及び地方獣医師会がともに対応する事項
1 狂犬病予防対策に関する事項
(1)狂犬病予防啓発テレビスポットの制作(中部地区)
狂犬病予防啓発テレビスポットの制作と各地方獣医師会における利用
(2)狂犬病予防対策の強化(中部地区)
 [1]狂犬病予防注射の推進,[2]普及啓蒙活動の強化
(3)狂犬病予防事業体制の整備と強化(中国地区)
 [1]薬品販売,広告等に係る規制強化,[2]狂犬病ワクチンとその他ワクチンの同時接種の規制の強化,[3]狂犬病予防注射実施後の実施状況報告の義務化,[4]遠隔地の出張集合注射等の再検討,[5]犬の登録におけるマイクロチップ埋込の推進
(4)狂犬病予防対策の徹底(四国地区)
 [1]狂犬病予防対策の重要性の周知と無登録・未注射犬の一掃,[2]市町村合併に伴う広域的事務の円滑化,[3]野犬化防止対策としての繁殖制限措置

【考え方・対応等】
(1)狂犬病予防対策については,平成18年10月16日付けで,厚生労働省に対し,[1]地方自治体と獣医師会が連携した犬の登録,予防注射率の向上のための地域ネットワークの整備,[2]狂犬病対策に係る普及・啓発の推進,[3]犬の登録制度におけるマイクロチップによる個体識別の導入等の要請活動を行ったところである.
(2)一方,厚生労働省においては,平成18年9月,鑑札及び注射済票の様式の変更のための関係省令の改正についてパブリックコメントの募集を行った.本件は,市町村長が交付する鑑札及び注射済票の様式を自由に定めることができることとするものであり,本会としては,厚生労働省の意図する改正は犬の登録・予防注射率の向上にならないばかりか,自治体の狂犬病対策の停滞につながる恐れがあるとして,反対の態度を明確に表明した.
(3)平成18年11月,フィリピンからの帰国者が相次いで狂犬病を発症し,国内では36年ぶりの発症としてマスコミでも大きく取り上げられた.本会でも,社会の関心の高まりを受けて,狂犬病に関する効果的な普及・啓発を行うべく,平成18年11月には日本家畜衛生学会との共催により「狂犬病の侵入をいかに防ぐか」と題する家畜衛生フォーラムを開催したほか平成19年2月には学会年次大会(さいたま)にあわせて「今,狂犬病対策を考えよう」と題する市民参加シンポジウムを開催することとしている.また,本シンポジウムの開催に当たっては,あわせて新聞への意見広告を掲載した.
(4)なお,職域別部会の小動物臨床部会小動物委員会及び公衆衛生部会公衆衛生委員会において,最近における各地域の狂犬病予防対策の実情等を踏まえ狂犬病予防注射事業の方向性を協議し,取りまとめるほか,地区獣医師会連合会長会議等の機会をとらえて公益法人制度改革を踏まえた狂犬病予防事業のあり方について検討を行うこととしている.

2 獣医師倫理の向上に関する事項
獣医大学における獣医師倫理に関する教育の徹底(関東地区)

【考え方・対応等】
(1)獣医師倫理対策については,獣医師の倫理綱領としての「獣医師の誓い95年宣言」と動物臨床の行動規範としての「小動物及び産業動物の医療指針」を資料配布,ホームページへの掲載等により周知を図っているところである.本年度においても,獣医師倫理関係資料を取りまとめて製本し,地方獣医師会を通じて構成獣医師に対する一層の周知・徹底を求めるとともに,獣医学系大学に送付し,獣医学教育課程における獣医師倫理に関する教材としての活用を要請する.
(2)また,一部の獣医師及びそのグループによる法令違反等については,本会から農林水産省に対して都道府県取締当局への獣医事監視・取締の徹底を要請したところであるが,地方獣医師会においても関係法令遵守の指導徹底とあわせて,違反事例については都道府県当局との緊密な連携のもと指導を強化するとともに,国への報告等を行う必要がある.
なお,法令違反に係る個別の事例については,本会から農林水産省に疑義照会し,獣医事監視・取締りの徹底を要請している.

3 獣医師研修制度に関する事項
(1)獣医師研修制度の強化と確立(中国地区)
 [1]臨床獣医師に対する獣医師生涯研修事業の義務化,[2]高度・多様化に対応した研修内容の充実・強化,[3]獣医療に対応する専門医制度の導入と確立,[4]獣医学系大学における獣医師倫理教育の必須カリキュラム策定

【考え方・対応等】
(1)獣医師の生涯研修については,本会において獣医師生涯研修事業を実施して獣医師の自己研鑽を支援しており,その研修内容等については学術部会獣医師生涯研修事業運営委員会において検討し,充実・強化に努めているところである.なお,生涯研修事業については開始から7年が経過し,地方獣医師会の協力・支援の下で研修事業参加プログラム及び受講獣医師数の確充が順次図られてきているところである.ポイント申告者数,実績証明書や修了証の交付者数と研修事業への参加は基本的には別次元のものであり,会員獣医師の意識の問題と考える.
(2)また,獣医師専門医制については,「小動物医療対策に関する事項」で前述したように,学術部会獣医師専門医制検討委員会において検討がなされ,今後の方向性についての結論が取りまとめられる予定である.
(3)なお,獣医系大学における倫理教育については,「獣医師倫理の向上に関する事項」で示したように,関係資料を送付するとともに,その資料を教材として活用した倫理教育を実施するよう各大学に要請している.また,その一方では獣医師国家試験における獣医師倫理,獣医関係法令等に関する出題傾向が各大学のカリキュラムに影響を及ぼし,徐々に大学の倫理教育への関心が高まっていると感じられるので,今後一層の働きかけを行うこととしている.

4 動物愛護対策(学校飼育動物対策を含む.)の推進に関する事項
(1)マイクロチップの速やかな普及と有効利用(北海道地区)
 [1]鑑札のマイクロチップ化,[2]動物愛護推進計画に基づくマイクロチップの普及促進,[3]販売動物へのマイクロチップ装着促進,[4]災害時救護動物へのマイクロチップの装着,[5]学校飼育動物へのマイクロチップの装着,[6]動物個体識別情報の管理一元化
(2)マイクロチップ装着への対応(東北地区)
 [1]登録・鑑札と連動したマイクロチップの装着,[2]外来生物法,動物愛護管理法等の整備に伴うマイクロチップ装着の増加に対応したマイクロチップに関する「実務マニュアル」の制定
(3)動物保護管理センターの設置促進と管理システムの構築(東北地区)
動物愛護教育,収容動物の健全な管理,安楽死等に配慮した動物管理センターの設置
(4)動物愛護に不可欠なマイクロチップの普及推進(関東地区)
マイクロチップの普及推進による動物愛護・福祉の向上
(5)学校獣医師の制度化(関東地区)
学校獣医師制度の確立の国への要請
(6)学校飼育動物の適正飼養に関する文部科学省の積極的関与(中部地区)
文部科学省による地方自治体(教育委員会)への学校飼育動物の適正飼育に関する指導通達
(7)学校獣医師制度の確立(近畿地区)
 [1]獣医師,獣医師会における積極的な取組み,[2]行政,教育委員会から獣医師会への事業委託の推進,[3]学校保健法における学校獣医師制度の位置づけ
(8)動物愛護管理の推進(四国地区)
 [1]動物愛護・適正管理に関する普及啓発,[2]避妊,去勢手術の奨励推進,[3]学校飼育動物サポート体制の推進,[4]身体障害者補助犬の社会認知と理解の推進
(9)学校教育現場における獣医師の配置制度の創設(九州地区)
 [1]学校教育現場における獣医師配置制度の設置
(10)人と動物の共生を通じて子どもたちの感受性を育む社会と猫の適正飼育の推進(九州地区)
 [1]捨て猫防止と獣医師会と行政による不妊手術の推進,[2]適正飼育の啓蒙

【考え方・対応等】
(1)改正動物愛護管理法の施行に向けての対応については,小動物臨床部会動物愛護福祉委員会における検討結果をもとに環境省及び各政党に要請を行った結果,その後公布された政省令,告示等において,本会の要請事項のほとんどが盛り込まれた.改正法では,国の基本指針を受けて都道府県において具体的な動物愛護推進計画を策定することとされており,その施行により,各自治体における動物愛護施策の一層の推進が望まれる.
(2)マイクロチップについては,改正動物愛護法で特定(危険)動物に義務化されるとともに,告示において所有明示方法としてマイクロチップが例示され,関係行政機関における読み取り体制の整備が明文化されるとともに,都道府県における犬猫の引き取りに係る要領においても引き取り時におけるマイクロチップの読み取りに努めるよう規定される等の措置がなされた.また,環境省においては,特定外来生物,特定(危険)動物に係るマイクロチップ埋込みマニュアルを策定し,獣医師向けの研修会を開催する等,その普及に努めているところである.平成18年6月の改正法施行後,一部の動物販売業者において販売時に全ての動物にマイクロチップを注入する等の取り組みがなされていること等からデータ登録頭数が大幅に伸びており,今後の普及の進展が期待できる状況にある.
 なお,平成18年末を持って,大日本住友製薬のデータベースが動物ID普及推進会議のデータベースに統合され,わが国における家庭動物のデータベースが一元化されたことも,マイクロチップの普及に好影響をもたらすと思われる.
(3)改正動物愛護法においては,動物の愛護と適正な飼養に関する普及啓発を推進するための教育活動等が行われる場所の例示として,「学校,地域,家庭等」と明記された.学校飼育動物対応については,文部科学省等に対し,[1]学校飼育動物活動の推進と「学校獣医師制度」の確立について,[2]初等教育課程における学校飼育動物活動の標準化対策の推進について要請してきたところである.
(4)本会の小動物臨床部会学校飼育動物委員会においては,[1]教育現場における動物飼育の位置づけ,[2]地域ネットワーク体制の整備,[3]学校獣医師の役割等について検討を行うとともに,[4]先進的な学校飼育動物支援活動を実施している地域の実例を取りまとめて紹介することとしている.各地方獣医師会からも,地方教育行政に対し一層の働きかけが必要となる.

5 勤務獣医師の処遇改善に関する事項
(1)獣医師の待遇改善(中部地区)
 [1]公務員獣医師の給与水準の引き上げ,[2]公務員獣医師の専門職としての処遇改善
(2)産業動物・公務員獣医師等の確保対策(中国地区)
 [1]職域別の需給バランスの調整,[2]獣医学教育における産業動物・公衆衛生教育の強化,[3]獣医師専門職給与表の新設と獣医師手当ての拡充,[4]家畜共済診療点数の改訂及び雇上獣医師手当の引き上げ,[5]産業動物獣医師確保のための奨学金の拡充(公衆衛生獣医師への適用)
(3)獣医師の環境改善対策(四国地区)
 [1]地方自治体公務員獣医師における医師と同等の給料表の制定,[2]団体勤務獣医師の自治体獣医師に準ずる扱い,[3]食の安全,共通感染症対策のための施設,人員の確保,[4]地域保健法において保健所長の「医師又は獣医師」の明示
(4)獣医師の処遇改善と卒後臨床研修の充実(九州地区)
 [1]獣医師給料表の新設,[2]新給料表に見合った家畜共済診療点数の引き上げ,[3]雇上獣医師手当の引き上げ,[4]卒後臨床研修の義務化
(5)家畜衛生関係予算・組織等の確保(全国家畜衛生職員会)
 [1]獣医師調査研究費の必要額の確保,[2]人獣共通感染症及び家畜伝染病関連業務に対応できる組織の強化及び人員確保のための支援,[3]バイオハザードに配慮した施設・機器整備への助成の拡大,[4]家畜衛生関係獣医師職員の社会的地位の確立

【考え方・対応等】
(1)公務員獣医師の処遇改善対策については,[1]ポストの拡充と登用,[2]給与表の改訂,[3]諸手当の充実等があげられるが,本会では,従来から家畜衛生職員会・全国公衆衛生獣医師協議会と連携しながら,対応の方向等を検討してきた.平成18年度においても,定例の三者協議会を開催し,情報・意見交換を行った上で処遇水準の向上に向けての対応を更に検討することとしている.地方獣医師会においても,関係公務員獣医師等との協議・検討の場を設けて積極的に情報交換しながら都道府県当局への対応を進める必要がある.
(2)なお,本件については,平成18年12月6日付けで,日本獣医師政治連盟から獣医師問題議員連盟に対し,公務員獣医師の処遇改善策として,[1]都道府県の畜産及び食品衛生主務課長ポストへの獣医師職員の積極的な登用とともに,[2]医師等の他の専門職の処遇水準と均衡を欠くことのない待遇改善を要請した.
(3)公務員の処遇改善については,そのこと自体が民間格差や地方自治体の財政事情,更には成果主義の導入等の要素がある中で全体として大変厳しい状況にあるが,このような中で公務員獣医師の処遇については獣医師需給問題と一体的にとらえ,その改善に向けて家畜衛生部会家畜衛生委員会,公衆衛生部会公衆衛生委員会においても,現状を踏まえて検討した上で,関係方面への働きかけを行うこととしたい.

6 産業動物診療獣医師の確保対策に関する事項
 産業動物獣医師の確保対策(北海道地区)
 [1]給料表,雇上獣医師手当ての見直し等の処遇改善,[2]産業動物診療現場に関する広報,[3]産業動物臨床現場における獣医学生実習の実施等,大学と現場の交流,[4]獣医学系大学における産業動物臨床教員の育成と増員,[5]獣医学系大学における包括的な産業動物臨床,経営学・経済学等を含めた教育の実施

【考え方・対応等】
(1)産業動物診療獣医師の確保対策については,産業動物臨床部会産業動物委員会において,[1]産業動物診療獣医師の需給,[2]獣医学教育を含む産業動物診療獣医師の養成,[3]家畜共済事業の運営と産業動物獣医師,[4]産業動物診療重視の処遇等の課題について検討がなされ,取りまとめられる予定であり,その結果に基づいて対応を図る.
(2)産業動物診療獣医師の処遇については,国の予算単価の積算が人事院勧告をベースとした一定のルールにより算定されるとの制約がある.大幅な引き上げはルール上困難があるが,引き続き農林水産省,また,獣医師問題議員連盟を通じ,各種衛生対策事業における雇上獣医師手当の額が医師等の医療専門職における水準と均衡を欠くことがないよう,また,家畜共済診療点数表についても,適正な診療提供の観点から改善がなされるよう要請している.技術料報酬の引き上げについては厳しいものがあるが,地方獣医師会においても,家畜畜産物衛生指導協会,農業共済関係団体等と連携しながら,上部団体を通じての要請実現に向けて活動を推進する必要がある.

7 公益法人制度改革に係る事項
公益法人制度改革に伴う地方獣医師会の公益社団法人化の推進(中部地区)

【考え方・対応等】
(1)公益法人制度改革に向けての対応については,今後の法施行及び移行期間の間において本会として,公益社団認定に向けて,現行の組織,事務・事業運営に向けての点検を行い,環境整備の方策等を検討するとともに,必要となる体制整備に向け,当面,予断をもたず幅広に対応していくこととしている.
(2)本会の会員制度等地方獣医師会の関係についても今後,職域別部会の職域総合部会総務・広報委員会の場等において地方獣医師会とともに検討協議していくこととしているが,当面は,現行の公益法人指導監督基準への対応と新公益法人会計基準へのすみやかな移行が求められると理解している.

 

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