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【別 紙】

平成18年度地区獣医師大会決議要望事項等に対する対応の考え方

 

I 日本獣医師会が主として対応する事項
1 家畜防疫対策及び畜産物の安全確保対策に関する事項
(1)広域的な防疫体制等の整備(近畿地区)
 [1]鳥インフルエンザ等に対する都道府県を越えた広域的な防疫体制の整備,[2]国の指導による予防・防疫対応の実施,[3]防疫対応に従事する産業動物獣医師の育成及び確保
(2)家畜伝染病防疫体制の強化(四国地区)
 [1]安全・安心な畜産物の供給体制及び共通感染症対策の充実強化,[2]家畜・畜産物の輸入検疫の強化,[3]家畜伝染病に関する情報の収集と提供体制の整備,[4]防疫指導能力を有する獣医師の養成及び開業獣医師の家畜防疫活動への参加体制の整備

【考え方・対応等】
(1)家畜防疫対策の充実・強化については,これまで,農林水産省に対し,[1]獣医師の都道府県非常勤職員への採用等による家畜防疫員の確保,[2]防疫情報等のネットワーク化と獣医師会との連携による地域防疫推進会議の推進,[3]全国及びブロック単位での家畜防疫実働演習の継続実施による初動防疫体制の点検整備,[4]防疫活動に従事する公務員獣医師及び診療獣医師に対する共通感染症の感染防護措置の徹底等を要請してきている.
(2)飼養衛生管理に関する獣医師向け技術講習に関しては,平成15年度から恆S国競馬・畜産振興会からの助成を受け,「獣医師育成研修等強化対策事業」により畜種ごとのHACCP方式に基づく衛生管理手法の農場への導入について,研修用教材を作成して講習会を実施してきたが,平成18年度においても引き続き「臨床獣医師研修事業」として,獣医師を通じての生産農家段階への普及を図るため,地方獣医師会の協力の下で診療獣医師に対する技術研修会を開催するほか,獣医学系大学における臨床獣医師を対象とした研修,獣医技術者の海外派遣等を行い,家畜防疫にかかわる人材の養成を行っている.
(3)動物用医薬品の適正使用対策については,平成18年5月のポジティブリスト制度施行に伴い「動物用医薬品残留基準値ポジティブリスト制導入周知啓発事業」により本制度に係る診療獣医師への啓発事業として,平成18年度には中央講習会を,平成19年度には地方獣医師会の協力を得て地方講習会を実施することとしている.
 特に,要指示医薬品の適正使用の遵守に対する獣医師の指導と技術研修対策については,産業動物・家畜共済委員会において「動物用医薬品指示書交付の手引き」を策定し,産業動物診療獣医師及び関係業界に対する適正使用のとり組みの地域体制づくりに資することとしている.
(4)現在,職域別部会の畜産・家畜衛生部会家畜衛生委員会において[1]家畜保健衛生業務のあり方,[2]公衆衛生部門との連携のあり方,[3]家畜衛生対策を推進する上での獣医師会の役割を検討テーマに今後の家畜衛生対策の整備に向けた対応に関する検討結果を取りまとめているところであり,同委員会の報告を受けて制度的課題については,その実現に向けて関係省庁等に対し要請活動を行う.

2 人と動物の共通感染症対策に関する事項
(1)共通感染症に対する正しい情報提供と危機管理体制の強化(関東地区)
(2)共通感染症対策の強化(近畿地区)
[1]人と動物における共通感染症対応の一本化,[2]各種動物(家庭動物,産業動物,野生動物等)における共通感染症対応の協調・連携,[3]動物医療・動物関連事業従事者における共通感染症に関する疫学的調査の実施による安全対策の推進
(3)共通感染症防疫体制の整備充実(九州地区)
[1]国及び地方の健康部局における医師・獣医師を配置した共通感染症専門部署の設置,[2]地方機関における検査診断体制の整備と診断技術の熟練化の推進

【考え方・対応等】
(1)共通感染症対策については,これまで厚生労働省に対し感染症法に基づく地域の共通感染症対策の整備充実に関する事項として,[1]地方公共団体の動物管理センターの機能強化と関係機関との連携確保,[2]地域における共通感染症の診断・届出・防疫システムの整備,[3]公務員獣医師及び診療獣医師の安全確保対策の徹底等を要請してきている.
(2)厚生労働省においては,都道府県が地方医師会等の関係団体と連携して地域における共通感染症の体制整備を推進するための動物由来感染症予防体制整備事業の予算措置を講じているが,地方獣医師会の立場からも,本事業への取り組みを関係都道府県に働きかけていただきたい.また,本会としては,鳥インフルエンザへの対応をはじめ,ウエストナイルウイルス,サルモネラ,オウム病,E型肝炎等に関する情報を収集し,随時地方獣医師会を通じ,構成獣医師に情報提供を行っている.
(3)現在,職域別部会の公衆衛生部会公衆衛生委員会において,[1]共通感染症の地域における取り組み体制のあり方,[2]共通感染症対策の推進と診療獣医師の役割,[3]家畜衛生部門との連携のあり方を検討テーマに今後の共通感染症対策の整備に向けた対応に関する検討結果を取りまとめているところであり,同委員会の報告を受けて,制度的課題については,その実現に向けて関係省庁等に対し要請活動を行う.

3 小動物医療対策に関する事項
(1)診療施設の開設の許可制(関東地区)
診療施設の開設に当っての研修・試験による資格制度の導入
(2)動物看護士の国家資格認定制度の創設(中部地区)
[1]動物看護士制度に係る法整備,[2]動物看護士の国家試験による資格認定

【考え方・対応等】
(1)動物診療施設の開設等診療を提供するに当たっての施設・設備の整備状況,診療施設運営に当たっての管理上の要件に対する規制のあり方であれば獣医療法の範疇となるが,診療獣医師としての資質を含め動物診療の技能・知識等の水準に係る人的資格要件ということであれば,獣医学教育課程の履修や診療獣医師の資格としての国家試験のあり方とリンクする課題と理解する.一方,獣医師倫理対策については,本会においても獣医師道委員会の審議をへて倫理規程を定め,獣医学教育課程における倫理教材としての活用を提示するとともに,関係診療獣医師に対する普及・啓発対策に資しているところであるが,今後ともこのような活動を継続実施する.
(2)小動物医療対策については,本会の要請を受け,農林水産省において「小動物獣医療に関する検討会」において小動物医療に関する今後の対応のあり方が取りまとめられ,[1]卒後臨床研修,[2]獣医核医学,[3]獣医療における専門医,[4]獣医療における広告規制,[5]獣医療補助者についての提言が示された.
(3)本会においては,このような農林水産省における小動物医療対策に対する検討の動きを踏まえつつ,小動物医療対策に係る諸課題について,独自に小動物臨床部会小動物委員会において協議・検討を行い,[1]小動物診療獣医師に対する臨床研修体制の整備,[2]獣医核医学等の高度医療対応,[3]狂犬病予防注射事業整備の方向,[4]広告規制のあり方,[5]動物医療補助者制のあり方,[6]高度専門医療(二次・紹介診療)施設のあり方,[7]夜間休日診療提供体制の整備について取りまとめを行っており,同委員会の報告を受けて,対内的及び制度問題を含め対外的対応を進める.
(4)上記検討課題のうち,動物医療補助者については,小動物臨床部会の個別委員会として動物診療補助専門職検討委員会を設置し,協議・検討がなされているところである.また,高度専門医療に係る獣医師専門医制については,学術部会獣医師専門医制検討委員会において,専門医の養成と認定等の専門医制の方向について検討結果の取りまとめを行った上で獣医師専門医機構のたち上げを関係団体に働きかけていく.

4 獣医学教育体制の整備・充実に関する事項
(1)大阪府立大学獣医学部の設置(近畿地区)
(2)国立大学法人獣医学科の獣医学部規模への整備・充実の早期実現(九州地区)
[1]国立大学獣医学科の獣医学部への整備・充実,[2]獣医学部における大学院の設置と附属家畜病院の動物医療臨床研修センターへの整備・充実

【考え方・対応等】
(1)現在,獣医学系大学においては,いわゆる自助努力による整備が進行しつつあるが,本会としては真の教育改善に結びつけるための学部体制の整備について,今後とも全国獣医学関係大学代表者協議会等他の関係機関と連携しながら,国立大学の再編整備等を含む獣医学教育の改善に向けて所要の対応を行っていく.
(2)一方,本会においては,「獣医学教育改善の目標」に即した教育改善を社会的理解の下で実現していくためには,獣医学教育分野に特化した専門分野別の第三者評価を外部評価システムとして立ち上げる必要があるとの認識の下で,現在,職域別部会の学術・教育・研究委員会において「獣医学教育改善に向けての外部評価のあり方」を,他の獣医学教育に係る団体とも調整をはかりつつ,協議・検討を重ね,現在,検討結果の取りまとめがなされているところである.今後は,同委員会の検討結果に基づき,外部評価が関係省庁の指導の下で各関係大学の参加により円滑に推進されるよう関係機関に働きかけていきたい.

5 野生動物対策に関する事項
(1)小笠原諸島のユネスコ世界自然遺産への登録推進(関東地区)
小笠原諸島のユネスコ世界自然遺産への登録の推進による外来生物対策の実施
(2)野生動物事業に関する提言(近畿地区)
野生動物対策における獣医師と他の専門分野の連携

【考え方・対応等】
(1)外来種対策については,外来生物法により生態系等に被害を及ぼし又は及ぼす恐れがあるとして政令で指定された特定外来生物に関する飼養,輸入等の規制及び防除に関する事項が定められ,一部の特定外来生物については,マイクロチップの埋込みを飼養許可の条件とされたことから,環境省では,昨年度に引き続き,特定外来種へのマイクロチップの埋込み体制の整備のため獣医師向けの技術講習会を各地区で開催している.
(2)本会においては,一昨年外来種を含め広く野生動物についての救護対策の現状と活動のあり方を報告書として取りまとめ,環境省,都道府県自然環境部局及び獣医学系大学に配布し,その活用を要請したところであるが,今回のツボカビへの対応等については,環境省及び他団体と連携しながら,地方獣医師会及び構成獣医師への情報提供に努めているところである.
(3)現在,職域別部会の小動物臨床部会野生動物委員会において,外来生物法の施行等に伴う課題と対応として,本会としての外来生物に対する考え方を整理したうえで,[1]野生動物の捕獲のあり方,[2]捕獲野生動物の安楽死(殺)のあり方を検討し取りまとめているところであり,今後とも環境省と連携を図りつつ,所要の対応を図る.

6 獣医師の需給に関する事項
(1)獣医師の需給見通しに基づく対応と夜間獣医療等の整備による獣医療の構造改革(関東地区)
[1]獣医師の需給見通しに基づく職域ごとの供給バランスの適正化,[2]夜間診療体制,二次診療体制などの再構築

【考え方・対応等】
(1)農林水産省は,獣医療の適正な提供に資するため,平成18年11月に「獣医師の需給に関する検討会」を設置し,検討が開始された.
(2)獣医師需給の検討に当たっては,[1]国が動物医療施策として取り組むべき課題は,獣医師及び動物医療の質の向上対策にあり,現行の入り口規制は,獣医師需給施策の推進上不可欠であること.[2]獣医師の全体需給は,現状程度の(毎年,1,000人)の新規供給でもって,将来ともに均衡するとの前提に立ち,獣医師需給対策として取り組むべきは一部職域の獣医師偏在(過剰及び不足)の職域間の調整にあること.[3]獣医師需給対策として職域間調整の個別対策に取り組む必要があること.
(3)以上をベースに,需給の将来見通しに当たっては,関連産業の将来動向,新規卒業者の就業意向の把握を基礎とし,あわせて,[1]獣医師の職域が多様化している中での特定職域の偏在(過剰と不足)の適正な評価,[2]各職域セクターにおける処遇水準の評価(処遇と配置の関係),[3]動物診療の効率化の進展.特に産業動物医療における個体診療から群管理・経営管理へのシフト,小動物医療における診療機能分担とネットワーク対応,更に,AHT等の動物医療補助職の動向とその位置づけ等を踏まえた配置必要数の算定,[4]獣医師に対する行政需要の動向と公的セクターにおける獣医師独占資格の機能分担の方向,[5]獣医師資格未届け者として見込まれる15,000人以上の動向と評価に留意した上で,今後の動物医療対策推進の方向としては,
ア 獣医師及び動物医療の質の向上対策としての,[1]獣医師養成の基盤となる獣医学教育体制の改善と獣医師国家試験内容の整備,[2]動物医療提供体制整備としての,診療施設間のネットワークの構築,卒後臨床研修を含む獣医師生涯研修の体系整備,動物医療補助専門職の資格制度化を含む位置づけの明確化が,
イ また,獣医師職域偏在対策として,職域間の獣医師の配置調整システムの実効確保策として,[1]職域転換就業支援の全国ネットワークと受け手サイドによる処遇対策の充実,[2]獣医学系大学における受け手との連携(特定職域地域優先入学枠,受け手サイドによる奨学金制度等の就業誘引)等の施策の整備が必要と考える.

 

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