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日獣政連からのお知らせ

【別紙2】
獣医師問題議員連盟総会の議事概要
 
I 日 時:平成18年12月6日(水)  12:00〜13:30

II 場 所:ホテルニューオータニ・本館1階  「edo ROOM」

III 出席者:
【獣医師問題議員連盟】*(代)印は,代理出席.
最高顧問 :(代)森  喜朗(衆・石川2区)
会  長 :谷津 義男(衆・群馬3区)
副会長 :(代)武部  勤(衆・北海道12区)
幹事長 :宮路 和明(衆・鹿児島3区)
事務局長 :森  英介(衆・千葉11区)
幹  事:
〔衆議院〕
(代)臼井日出男(千葉1区)
(代)高村 正彦(山口1区)
   大村 秀章(愛知13区)
(代)西村 康稔(兵庫9区)
(代)長勢 甚遠(富山1区)
   望月 義夫(静岡4区)
   山際大志郎(神奈川18区)
(代)遠藤 和明(山形1区)
(代)山本  拓(福井2区)
(代)佐田玄一郎(群馬1区)
(代)鳩山 邦夫(福岡6区)
(代)木村 義雄(香川2区)
(代)岡本 芳郎(比例・四国)
(代)上川 陽子(静岡1区)
(代)柳澤 伯夫(静岡3区)
(代)山本 明彦(愛知15区)
(代)中野  清(埼玉7区)
   金子 一義(岐阜4区)
   衛藤征士郎(大分2区)
   竹下  亘(島根2区)
   大野 松茂(埼玉9区)
   佐藤 剛男(比例・東北)
〔参議院〕
(代)関口 昌一(埼 玉)
   福島啓史郎(比 例)
   田村 公平(高 知)
   竹山  裕(静 岡)
(代)中川 義雄(北海道)
(代)関谷 勝嗣(愛 媛)
(代)谷川 秀善(大 阪)
   保坂 三蔵(東 京)
(代)坂本由紀子(静 岡)
   吉村剛太郎(福 岡)
(代)山下 英利(滋 賀)
(代)中曽根弘文(群 馬)
   若林 正俊(長 野)
(代)景山俊太郎(島 根)

【関係省庁出席者】
農林水産省:
杉浦 勝明(消費・安全局畜水産安全管理課長)
山本  実(消費・安全局畜水産安全管理課課長補佐)
平山 雅通(経営局保険管理官補佐)
厚生労働省:
滝本 浩司(健康局結核感染症課感染症情報管理室長)
三木  朗(健康局結核感染症課課長補佐)
環境省: 
冨岡  悟(自然環境局長)
築島  明(自然環境局動物愛護管理室長)
文部科学省:
辰野 裕一(審議官高等教育局担当)
布村 幸彦(審議官初等中等教育局担当)

【日本獣医師政治連盟】
委員長: 山根 義久(日本獣医師会会長)
幹事長: 藏内 勇夫(日本獣医師会副会長)
副幹事長: 瀧口 次郎(広島県獣医師政治連盟)
顧  問: 北村 直人(日本獣医師会顧問)
幹  事: 
森田  彰(北海道地区・北海道獣医師政治連盟)
坂本 禮三(東北地区・福島県獣医師政治連盟)
岩上 一紘(関東地区・栃木県獣医師政治連盟)
手塚 泰文(東京地区・東京都獣医師政治連盟)
杉山 俊一(中部地区・静岡県獣医師政治連盟)
小島 秀俊(近畿地区・兵庫県獣医師政治連盟)
江藤 文夫(九州地区・宮崎県獣医師政治連盟)
会計責任者:大森 伸男(日本獣医師会専務理事)
監  事:
   桑島  功(日本獣医師会監事)
   高野 貞男(日本獣医師会監事)
   植原富久雄(群馬県獣医師政治連盟)
(代)大山 英隆(鹿児島県獣医師政治連盟)

III 議 事:
  1. 日本獣医師政治連盟要請
  2. 意見交換・協議
  3. まとめ

IV 概 要:

【獣医師問題議員連盟会長挨拶】
 開会にあたり,獣医師問題議員連盟谷津義男会長から大要次の挨拶があった.
 (1)久しぶりに獣医師問題議員連盟(以下,「議連」)の総会を開催することとなった.昨年の衆議院議員選挙後,新たに議連のメンバーとなった先生方にも多数出席いただいている.また,農林水産省,厚生労働省,環境省,文部科学省の担当者にも出席いただいている.議連に対し日本獣医師政治連盟(以下,「政連」)から要請を受けた事項等について,協議・検討したい.
 (2)中国では,狂犬病が蔓延し大きな社会問題になっているが,先日,フィリピンで犬に咬まれ日本に帰国した男性が狂犬病を発症し死に至るという大変な問題が起こった.しかしながら,我が国における狂犬病対策として,狂犬病予防注射が義務付けられているにも関わらず徹底されていないのが現状である.トリインフルエンザ等様々な問題が発生する中,国内でもその狂犬病対策を的確に行う必要がある.BSE発生時には獣医師の皆様にお骨折りをいただいたが,狂犬病が日本に上陸し,発生する可能性があることを考え合わせると,今後,しっかり対策をやり遂げなければならない.忌憚のない意見交換をしてほしい.
獣医師問題議員連盟谷津義男会長あいさつ
獣医師問題議員連盟谷津義男会長あいさつ

【日本獣医師政治連盟委員長挨拶】

 日本獣医師政治連盟山根義久委員長から大要次の挨拶があった.
 (1)本日は,公務ご多忙の中,谷津義男会長をはじめ多くの国会議員の先生方並びに各関係省庁からの出席をいただき,議連総会を開催いただいたことに感謝申し上げるとともに心より御礼申しあげる.
 (2)先ほどの谷津義男会長の挨拶にもあったように,11月に入って立て続けに,国外での感染といえども,我々が一番危惧していた狂犬病が発生した.狂犬病の怖さは,発病したら死亡するということである.さらにいえば,エイズよりも怖い病気であり,なんとしても水際で阻止しなければならない.ただ,日本の狂犬病予防対策が十分かといえば,非常に寂しいものがある.
 (3)現在,韓国では,非常に強力なトリインフルエンザが発生し,大混乱をきたしている.また,SARS,BSEといった様々な人と動物の共通感染症が発生している中,我々はそれらを阻止しなければならないが,その元となるのが,獣医学教育である.現在,日本の大学における獣医学教育の状況は,国際的にみてもかなり遅れている.この点についても同様に危惧しているが,これらすべてが行政との折衝,さらに国会議員の先生方の理解をいただかないことには少しも前進しないのが現状である.本日はこういった点も含め,本連盟から説明させていただき,実りある機会にさせていただきたい.
日本獣医師政治連盟山根義久委員長あいさつ
日本獣医師政治連盟山根義久委員長あいさつ

【議 事】

 以下,森 英介事務局長の進行により議事が進められた.
1 日本獣医師政治連盟要請
 大森会計責任者から,別紙1の要請書に沿い,次の事項について説明が行われた.
(1)獣医学教育体制の整備・充実
(2)狂犬病予防対策の整備・充実
(3)「心の健康教育」推進のための学校飼育動物対策の整備・充実
(4)獣医師の処遇対策を含む獣医師需給対策の整備・充実

2 意見交換・協議

(1)意見交換・協議に入る前に,総会出席の若林正俊環境大臣から大要次の挨拶があった.
ア 政連の皆様方には,日頃のご協力,ご支援に感謝申し上げる.
イ 人と動物との共生社会が進み,野生動物保護の問題から人間との係わり合い,さらに産業動物,愛玩動物の扱い等,動物愛護の視点からの要請が強まってきている中,どのように人と動物の係わり合いを作っていくかが最大の課題になってきている.今年は,熊が人里にまで出没し,いろいろな被害が発生している.社会的,政治的にも非常に大きな問題になって,国会でもしばしば質疑が出ているが,それらの問題全てが獣医師皆様のご理解,ご協力がなければ解決できない.
ウ 政連から4項目の要請があったが,いずれも大事な問題である.谷津会長を中心とした議連において,しっかりとこの要請を受け止めて解決の方向を出していただきたい.

(2)続いて,要請事項「獣医学教育体制の整備・充実」について,文部科学省高等教育局担当辰野裕一審議官から現状等について大要次のとおり説明が行われた.
ア 獣医学教育改善については,文部科学省の「国立大学における獣医学教育に関する協議会」が平成16年度に出した報告が最新である.協議会では,関係者の幅広い意見を聞きながら獣医学教育について検討した.平成16年に入って検討を始めたのには意味があり,国立大学の法人化に伴い,各大学に権限,裁量の幅が広がり様々な仕組みが変わった.そのような状況の中で,獣医学教育について検討するタイミングが一致したということである.
イ 教育研究体制の充実については,教育を向上させるためにはスタッフの充実は必要であるが,教員配置の数値目標を掲げるのは難しい.平成18年度からは総人件費抑制,むしろ5%カットする話がある中で実行するのは難しい.その点,国立大学の法人化で,それぞれの大学において自由な裁量の中で運営できるというメリットを活用し,社会要請に応えるには学部学科の改革も同時に行って,動物科学や食品,環境といった関連分野との連携と大学間の連携が大切である.また,臨床分野が弱いという認識があるので,附属家畜病院の整備による臨床教育環境の改善といった主体的な取り組みを進めていくために,各大学内部と他の大学間で協力し合いながら進めていくことが基本である.
ウ 大学環境の改善については,国立と私立を比べるとかなり開きがある.大学の入学定員を見ると国立大学と私立では教員数は変わらないが,入学定員に90名程の開きがあり,どのように改善を図っていくかは非常に難しい.いずれにしても厳しい現状ではあるが,努力して新しいニーズに応えていくことを考えている.また,各大学に対する支援の経費,特別研究経費も盛り込んで支援している.
エ 国立大学の場合は,入学定員が小規模であるので,統合等を行い,スケールメリットを生かしたらどうかとの話もある.これについては基本的に賛成である.大学を超えた獣医学科の統合メリットは,有効かつ重要であるという基本認識はあるが,総論賛成,しかし,獣医学科は各地区によっては非常に象徴的な意味があり各論は難しい.これらの問題は,まず各大学内での議論を踏まえた自主的な判断が必要であること,また,地域の理解を前提にしなければ進めることは出来ないと感じている.

(3)要請事項「狂犬病予防対策の整備・充実」について,厚生労働省健康局結核感染症課感染症情報管理室滝本浩司室長から現状等について大要次のとおり説明が行われた.
ア 狂犬病については,先日フィリピン国内で犬に咬まれた後,ワクチンを接種せずに帰国した男性2人が狂犬病を発症し死亡した.改めて狂犬病の恐ろしさを認識させられた.我が国では昭和33年以降,人と動物での狂犬病の発生はないが,それは狂犬病予防法に基づいた予防接種の賜物で関係者の尽力によるものであり,世界の中でも数少ない清浄国となっている.この状態を今後も長く維持しなければならないと認識を新たにしている.
イ 国内での狂犬病の状況はどうかというと,狂犬病予防法に基づく犬の登録頭数に対する予防接種頭数は約75%という数字が出ているが,実際は登録していない犬も多数いると思われることから,さらに低い接種率と思われる.長年,日本国内で狂犬病が発生しなかったことから,飼い主にこういった義務があるという認識がなくなってしまったと考えられることから,今後も周知徹底を図って行きたい.
ウ 現在,野犬の抑留については都道府県,狂犬病の登録,注射,注射済票の交付については市町村,実際にワクチンを接種するのは獣医師ということで三者連携の基に狂犬病予防行政が推進されているが,このような連携が重要であるということは,獣医師会から指摘があったところである.我々は,連携を密にするようにこれまでやってきた.一方でなかなか連携がうまくいっていないのではないか,ネットワークがうまく働いていないのではないかという指摘があるのも事実である.地方においては様々な取り組みが行われているが,うまくいっているところ,その効果がなかなか現れていないところがあろうと思われるが,我々としてもその連携状況について調査をしている最中であり,連携が取れている模範例を他の自治体に紹介するといったことを行い,今後とも登録,予防注射の徹底については積極的に取組んでいきたい.
エ 政連からマイクロチップの提案があったが,盗難,迷子,捨て犬防止といったような動物愛護の観点からは非常に有用なものであると我々も認識している.しかしながら,これを狂犬病予防法の中に定義付けるとすると,その他の解決すべき問題があると考えている.マイクロチップは犬の皮下に埋め込むということから,外見から犬が登録されているか,予防注射を受けているかどうか判別ができないという欠点がある.今回の人の狂犬病発症は,国外のフィリピンでの感染事例であるが,我が国に狂犬病が持ち込まれた場合を想定すると,年間6千件も咬傷事故が発生している中,瞬時にその犬が予防注射を受けているかどうかを判別できないと,狂犬病発生時の迅速な危機管理対応やパニック防止という観点から問題が生じる恐れがあるという認識を持っている.いずれにしても犬の登録,予防注射の徹底については今後とも我が国が狂犬病のない安心して暮らせる国,動物と安心して接することができる状況を末永く維持していくために徹底していかなければならないと考えている.

(4)また,マイクロチップについては,「動物の愛護及び管理に関する法律」にも関係した問題であるため,環境省自然環境局冨岡 悟局長から現状等について大要次のとおり説明が行われた.
ア いわゆる,動物愛護管理法が議員立法で改正され,その中で特定動物の飼育をする場合には許可が必要となるが,その場合には原則としてマイクロチップによる個別識別措置を奨励している.
イ 特定動物の所有者は,「動物の愛護及び管理に関する法律」によって所有者であることを明らかにする必要があり,その方法として平成18年1月の告示をもって具体的に定め,その中には首輪,名札とともにマイクロチップといった方法を具体的にあげて,首輪が外れたり,名札をなくしたりするような場合にはマイクロチップは非常に有用であると規定しており,この法律の趣旨が普及するよう様々な方法を通じて推進していきたい.

(5)要請事項「『心の健康教育』推進のための学校飼育動物対策の整備・充実」について,文部科学省初等教育局担当の布村幸彦審議官から現状等について大要次のとおり説明が行われた.
ア 心の健康教育については,昨今,イジメによる自殺者が多く,命を大切にするという取り組みが肝心であり,そのために,子供たちが小動物等に直接触れたり,抱き上げて暖かさや重さを感じるということを通じての命の大切さを実感してもらうという活動が極めて重要なことと考えている.各学校で教育課程を実施する基準として学習指導要領というものがあるが,生活科,道徳の時間において動物を飼育することについて触れるとともに,現在その見直し作業をしている最中である.
イ 獣医師との連携協力については学校における動物飼育のあり方のテキストを獣医師会の方々に協力いただいて作成したが,現在その改定作業を獣医師会の方々の協力をいただいて進めている.これらを通じて各都道府県レベルで推進されるよう努めていきたい.既に群馬県のように,学校飼育動物活動が進んでいるところでは,獣医師の方々に学校獣医師として協力いただくという体制を整えて動物飼育がより適切に行われるよう推進を図っていただいている.そのような良い事例を通じてより充実するように努力をしていきたい.

(6)要請事項「獣医師の処遇対策を含む獣医師需給対策の整備・充実」について農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課杉浦勝明課長から現状等について大要次のとおり説明が行われた.
ア 獣医師の需給関係は,現在,獣医療法に基づき獣医療基本方針を定めている.この中で産業動物獣医師が減少し,地域によって偏在していることを踏まえて獣医学系大学の学生を産業動物分野に誘導するような措置を図り,技術研修会の提供体制の整備を推進するといった方策を盛り込んでいる.この基本方針を受けて全国22都道府県が計画を策定しているが,獣医学系大学の学生については,産業動物に触れ合う機会を設け,理解してもらえるような措置を講じる内容が含まれている.具体的には県の家畜保健衛生所や民間の農業共済等において研修等の受け入れが進められている.国の方針については,平成19年度以降次期方針の策定に向けての検討を開始することとして,先月から獣医師の需給の長期見通しの作業を開始しているので,この結果を踏まえ,獣医師の団体や獣医系大学等の関係者の意見を伺いながら獣医師偏在の問題を調整するための対策について検討していきたい.
イ 公務員獣医師の処遇対策は,地方公務員の給与体系あるいは課長ポストへの登用等について,我々が直接答える立場にないが,各県の状況を見てみると,課長ポストについては,平成18年11月現在で計22の都道府県において獣医師が畜産主務課長を務めている等の状況をみる限りでは,それなりの処遇がなされていると承知している.農林水産省としても,今後も畜産物の生産段階での安全性の確保,人獣共通感染症の対策といった公務員獣医師が担う重要性について社会の中で,より一層認識評価がされるよう努めて行きたい.
ウ 雇い上げ獣医師手当については,家畜伝染病予防事業を実施する際に雇い入れた獣医師手当の2分の1については国が負担している.その単価は民間の賃金実態を踏まえて人事院勧告を参考に措置している.平成18年度の獣医師手当単価は12,850円となっている.
エ 最後に,家畜共済診療点数表の診療診察料等については,共済掛け金の改正に合わせて原則3年ごとに改定している.診療点数表改定にあたっては,学識経験者,保険者代表,獣医師代表で組織する小委員会を開催し,検討,調査を行い改定している.特に,最近の獣医学の進歩等に対応し,適切な診療提供の観点から見直しがなされるよう配慮している.一方で獣医師診療は自由診療であることから,診療点数以上の診療費を請求することを制限しているものではない.

(7)各関係省庁から要請事項についての現状等について説明がなされた後,意見交換・協議が行われた.主な内容は,次のとおり.
ア 議連谷津会長から「狂犬病が日本国内で発生したら,社会問題になる.飼い主に予防注射及び登録は義務化されているのであるから,もっと強行に訴えてもいいのではないか」との意見に対し,厚生労働省から「動物の愛護及び管理に関する法律が改正され,動物を販売する際に飼い主に対して,こういった内容の法律があるということを説明しなければならないとしているし,いろいろな場所を通じ関係者のご協力をいただきながら徹底している」旨の回答がされた.
イ 議連宮路幹事長から,「抽象的な話でなく,具体的にどういった手立てを講じ,野犬や飼い犬がどのくらいいるのかについての状況把握を行っているのか,まずそこからやらなければいけない.もっと地方に出て現実をみて進めていかなければならないのでは」との意見に対し,厚生労働省から「実態を把握する目的もかねて,それぞれ自治体の現状について実態調査を行っている.その内容を踏まえ,より具体的に自治体に対し指導を行っていきたい」旨の回答がされた.
ウ 政連大森会計責任者から「狂犬病予防法が成立してから60年が経過しようとしている.当時,国からは獣医師自らが率先して国の政策に協力すべきということで,爾来,獣医師会は,自治体の要請を受け率先して登録ないし予防注射業務に邁進している.ただ50年間にわたって狂犬病の発生がないことから,飼育者の意識が非常に低下している,と同時に行政の指導力がいまひとつ地域に根付いていない.狂犬病予防対策を公益事業として獣医師会が行うことに異存はない.ぜひとも我々と行政が協力して,ネットワーク作りについて国のご指導をお願いしたい」との意見が出された.
エ 議連谷津会長から「もし狂犬病が発生し,注射を打っていなかったと判明したときの罰則はあるのか」との質問に対し,厚生労働省から「当然,年1回の予防注射の義務は飼い主にかかっているので咬傷事故を起こす起こさないは関係なく罰則の対象になる.また実際に,毎年150件程度送致実績がある.ただ,強制的な措置の前に放置していた飼い主に対するものである」旨の回答がされた.
オ 政連桑島監事から「地方分権により狂犬病業務が国から離れて,市町村に流れたが,市町村には獣医師もいないことから結果的に業務が低迷してしまった.まして,50年もの間,狂犬病が発生していないという実態もあるので,再度,厚生労働省の管轄の中で指導していただかないと盛り上がらない.狂犬病が発生して千葉県では「狂犬病予防接種を行ってください.」というポスターを配布しているが,厚生労働省でもこういった指導を各県にしていただければより狂犬病の恐ろしさを知り,なおかつ情報が提供できるのではないか」との意見が出された.
カ 議連宮路幹事長から「ロシア籍船が日本に寄航し,一緒に犬を連れて上陸するようなことがあるが,どうチェックしているか」との質疑に対し,厚生労働省から「特に北海道や北陸の港に犬を連れてロシア籍船の船が入ってくるケースがある.中には咬傷事故を起こすケースもあり,いずれにしても不法上陸ということになるので,動物検疫所,自治体と連携して監視を行っている状況である」旨の回答がされた.
キ 議連谷津会長から「フィリピン,中国といった蔓延地域からの状況はどうか」との質問に対し,厚生労働省から「我々が聞いているところでは,特にロシア船籍に犬が多く乗っている場合が多いと聞いている.不法上陸をしないよう看板を出す,船員に対し注意を促す等を行い徹底している.また,上陸した犬に対しては,抑留の対象となるので,それが嫌なら犬を陸にあげないよう呼びかけを行っている」旨の回答がなされた.
ク 議連福島啓史郎幹事から「地方分権になって狂犬病予防業務が遂行しづらいという声を聞くので,厚生労働省は責任をもって市町村を指導し,地方獣医師会と協力して行えるようネットワーク作りを行ってほしい」との意見が出された.
ケ 政連藏内幹事長から「マイクロチップについては,狂犬病予防法ならびに動物愛護管理法の両方にかかわってくる.犬の頭数が実際どれだけあるのか.人間で言う台帳のようなものを国の責任として整備するべきである.マイクロチップをふたつの法律に整合性を持たせて位置付けることはできないか」との質問に対し,厚生労働省から「個体を識別する意味でマイクロチップが非常に有用なものであると考えている.一方,狂犬病予防という観点からいうと,万が一日本で狂犬病が発生した場合,咬傷事故,またなめられただけでも狂犬病に感染することがあるので,その犬が予防注射を打っているかいないかを瞬時に判断できなければ咬まれた人の生命に関わる.マイクロチップが皮下にあって瞬時に外見から判断できないとなると不安を助長することにもなるし,パニックにもなりかねない.狂犬病予防法の鑑札が装着しやすいように工夫等を凝らしたりいろいろ考えているが,現段階では危機管理対応といった意味からマイクロチップは難しい」旨の回答がされた.
コ 議連山際大志郎幹事から「外から鑑札等を目視するというのは重要な観点なので,是非続けてほしいと思うが,疫学上,狂犬病が入ってきたときに,狂犬病を抑えられるかは現段階では論じることさえもできない.登録頭数を把握するために個体識別を利用するのは大前提の話である.そういった観点から狂犬病予防法の中にマイクロチップを盛り込むことができるのではないか.動物愛護管理法において,さんざん議論したあげくに危険動物にマイクロチップを導入する話があった時の説明では,マイクロチップを埋め込むことは出来るが,マイクロチップを読み取るリーダーという装置が社会に普及していない状況で法律にするのはいかがかという議論があった.この問題については,獣医師会にお願いして,全国の各動物病院にリーダーを1台ずつ置く努力をしてもらうことも可能なのではないか.今回,狂犬病が社会的に注目されるに至ったこのタイミングを逃す手はない.ここで一気にマイクロチップの導入を進めることは,狂犬病予防の観点から,あるいは動物愛護の観点からも国民に受け入れていただけるのではないか.この問題は是非前向きに検討してほしい」との意見に対し,厚生労働省から「登録頭数を把握することは,狂犬病予防注射を徹底する意味からも非常に重要であると考えている.それがマイクロチップでできるのか,他の手段で行うのかという問題はあるが,総数の把握は我々も自治体と協力して進めて行きたい.ただ,先ほども申し上げたとおり,パニック防止,危機管理対応の面からは,現行の鑑札という位置付けは変わらない」旨の回答がされた.
森 英介事務局長
森 英介事務局長
宮路和明幹事長
宮路和明幹事長

【ま と め】
 宮路幹事長から「本日,色々な議論があったが,非常に幅広い問題であり,狂犬病一つとってみても,環境省,厚生労働省といった複数の省庁にまたがる.特に狂犬病の問題については急がれるテーマであり,プロジェクトチームを作って検討する.また,その他の要請事項についても大変重要な問題であり,必要に応じプロジェクトチームを編成し,議連として取組んで行きたい.そして,省庁に対しては,それぞれ縦割りの組織になっているので,議連で調整しながら進めて行くことで理解いただきたい」旨が告げられ閉会した.

 

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