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日獣政連からのお知らせ

獣医師問題議員連盟の総会開催される

 獣医師問題議員連盟(会長:谷津義男衆議院議員)の総会が,平成18年12月6日,ホテルニューオータニにおいて,連盟所属の国会議員,日本獣医師政治連盟関係者並びに関係省庁の出席のもと盛会裏に開催された.
 獣医師問題議員連盟は,獣医師及び動物医療に関わる諸課題を多角的に検討し,諸施策の推進を図ること等を目的に自由民主党所属の国会議員(平成18年12月現在57名加入)で組織されている.昨年の衆議院議員選挙後,組織が再整備され,今回,総会が開催された.総会には日本獣医師政治連盟に対し出席要請がなされ,本連盟から山根委員長ほか役員が出席し,【別紙1】の要請書により,[1] 獣医学教育体制の整備・充実,[2] 狂犬病予防対策の整備・充実,[3] 「心の健康教育」推進のための学校飼育動物対策の整備・充実,[4] 獣医師の処遇対策を含む獣医師需給対策の整備・充実の4点について要請を行い,活発な意見交換・質疑等が行われ対応を協議した(総会の議事概要は【別紙2】のとおり).

【別紙1】
要  請  書

18日獣政連発第12号
平成18年12月6日

獣医師問題議員連盟 会長
  衆議院議員 谷津義男 様
日本獣医師政治連盟
委員長 山根義久
獣医学教育の改善及び動物医療提供体制の整備について
 今日,我が国の社会経済,国民生活を巡る情勢をみると,BSE問題に端を発する食の安全・安心の確保,また,高病原性トリインフルエンザや狂犬病等の人と動物の共通感染症に対する危機管理対策の整備が喫緊の課題とされております.
 一方,人と動物の共生社会の構築が国民的課題とされ,イヌ,ネコ等の小動物が伴侶動物として広く一般家庭に,更には,人の介護・福祉,学校教育分野への社会参加が進展する中,小動物医療の提供体制の整備,さらには,動物愛護・福祉や野生動物保護をはじめとする自然環境保全対策の整備が強く求められる等,獣医師及び動物医療の果たす役割に対する社会的期待が従来にも増して高まっております.
 これら,食品衛生,動物衛生,動物愛護・福祉対策の担い手の中心は獣医師であります.特に獣医師養成の基盤となる獣医学教育体制の実効ある改善とともに,動物医療提供体制の整備の促進を通じ動物医療の質の一層の向上が図られるよう,下記の事項の実現について,特段のご尽力をお願いします.
1 獣医学教育体制の整備・充実
 (1)獣医学の教育年限が延長され,いわゆる6年制獣医師が獣医界に輩出されて20年が経過する.しかしながら,獣医学教育の現状は,国立大学法人の獣医学教育課程のほとんどが,いまだに農学部等の特定学部の一学科(課程)に位置付けられたままであることに代表されるとおり,一大学当たりの教育研究組織が極めて小規模にすぎ,施設・設備をはじめ教員数等すべての教育環境の不備と改善の必要性が指摘され続けたまま,今日に至っている.
 (2)獣医学教育の国際基準(米国・EUの獣医学教育認定の評価基準)に適合する大学は皆無.また,獣医師国家試験の試験科目に対応した講座数すらその整備に程遠い実情にあり,獣医師及び動物医療が社会の要請に応え得るよう,獣医学教育については,専門職業人養成課程として抜本的改善が必要である.このため,
ア 国立大学法人10大学の学科規模による獣医学教育課程については,スケール・メリットを最大限に活かし再編統合を進め,単独の獣医学部として整備すること.
イ 公立大学法人及び私立の6大学については,入学定員に応じた十分な教員数の確保とそれに見合う施設,設備を有する獣医学部の単独規模への整備について必要な予算措置を講じること.
 (3)なお,獣医学教育の質の改善が喫緊の課題とされる中,入学定員枠の緩和は,獣医師養成の基盤となる獣医学教育改善に逆行するばかりか,その瓦解につながりかねない.
 
2 狂犬病予防対策の整備・充実
 (1)人類にとって最も恐るべき感染症の一つとされる狂犬病については,いまだ世界各国において発生がみられ,毎年3〜5万人の死亡例が報告されている.
 我が国における最終発生は,動物,ヒトともに1956年(その後,1970年にネパール旅行,また,つい先月にはフィリピン旅行からの帰国者が,帰国後狂犬病を発症し死亡)とされているが,東アジア等近隣諸国,とりわけ中国における惨状を目の当たりとするとき,また,国内では外国船舶搭載犬の不法上陸による咬傷事故の頻発等その侵入リスクは増大してきている.
 (2)一方,狂犬病は,狂犬病予防法において犬の登録と定期予防注射が犬の所有者の義務として課されているが,国内飼育犬の登録率は5割水準,定期予防注射の実施率は4割を下回る水準となっており,最近における家庭動物としての犬の飼育率の増加等国民生活における人と動物の絆が増してきていることを考え合わせるとき,大きな懸念材料となっている.ついては,
ア 狂犬病対策の要となる飼育犬の登録及び予防注射の実施率向上を図るため,狂犬病予防対策に係る自治体事務が当該地区を活動の地域とする地方獣医師会との連携の下で組織的に円滑に推進されるよう地域ネットワーク体制を整備するとともに,狂犬病予防法に基づく狂犬病対策が,犬の所有者の責務として広く国民的理解の下で推進されるよう,一層の普及・啓発対策を推進すること.
イ 自治体が行う犬の登録等の事務に関し,現行の鑑札及び注射済票の装着については,動物の個体識別として国際標準化されたマイクロチップによる個体番号の登録・管理方式に変更し,犬の登録等の自治体事務が動物愛護管理施策等の動物行政と効率的かつ一体的に推進し得るよう体制整備を行うこと.
 
3 「心の健康教育」推進のための学校飼育動物対策の整備・充実
 (1)動物飼育を通じ生命観,動物観,社会観,自然観を育むこと.このことの子供たちの人格形成に果たす役割は大きい.
 (2)学校教育において動物飼育の実体験を通じ生命を体感させ,生きる力を学ぶことを通じての心の健康教育(動物介在教育)が必要であるとの観点に立ち,学校飼育動物活動が初等教育課程の中で適正に評価され,学校と獣医師会との連携の中で組織的,かつ,安定的に推進されるよう,地域の取り組み体制の整備が必要である.ついては,
ア 学校飼育動物の全国での取り組み状況と課題を調査した上で,教育委員会主導の下で地方獣医師会と連携した学校飼育動物活動の推進による学校獣医師制(教育委員会からの委嘱による獣医師の学校への派遣システム)を確立すること.
イ 教育委員会による教員に対する研修会,研究発表会等の実施及び教育系大学の教員養成課程における教育カリキュラムを整備すること.
 
4 獣医師の処遇対策を含む獣医師需給対策の整備・充実
 (1)獣医師需給は,全体需給は現行の毎年1,000人程度の新規免許取得者の輩出で充足するが,小動物診療部門の過剰,一方では産業動物診療部門や公務員獣医師の新規採用の困難事態の発生等一部職域の獣医師偏在が指摘されている.
 (2)一方,獣医師については,今後とも社会的要請に応えるため各職域において高度専門職業人としての処遇を確保する必要がある.このため,
ア 獣医療法に基づく獣医療基本計画制度の下で,獣医師偏在調整のための就業支援の全国ネットワーク体制を整備するとともに,
イ 公務員獣医師の処遇対策として,
都道府県の畜産及び食品衛生主務課長ポストへの獣医師職員の積極的登用とともに,医師等の他の専門職の処遇水準と均衡を欠くことのないよう処遇を改善すること(当面,全ての都道府県において,獣医師職員に対し高度専門技術職としての給料調整額の適用と調整数3を確保すること.).
ウ 産業動物診療獣医師の処遇対策として,
(ア)家畜伝染病予防事業等の国の施策推進に当たり,民間診療獣医師に適用される雇い上げ獣医師手当については,医師等の医療関係者の同種事業の処遇と均衡を欠くことのないよう改善すること.
(イ)農業災害補償法に基づく家畜共済制度については,「家畜共済診療点数表」の診察料等を適正な診療提供の観点から見直すとともに,制度に参加する指定獣医師の診療権が尊重されるよう運営を改善すること.

 

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