会報タイトル画像


3 中 央 行 事
 〜いのち輝け 人と動物の愛の輪で〜
 「動物愛護シンポジウム」
 これからのペットショップ・ブリーダーと飼い主
 ― 動物愛護管理法の改正を受けて ―
 日 時 : 平成18年9月30日 13時〜17時
 場 所 : 東京国立博物館(平成館講堂)
 主 催 : 動物愛護週間中央行事実行委員会
 実行委員会 :
    環境省,東京都,台東区,(財) 日本動物愛護協会, (社) 日本動物福祉協会,
    (社) 日本愛玩動物協会, (社) 日本動物保護管理協会,
    (社) 日本動物園水族館協会, (社) 東京都家庭動物愛護協会,
    (社) 日本新聞協会, (社) 日本雑誌協会
 協賛団体 :
    (特) 日本放送協会, (社) ジャパンケネルクラブ,ペットフード工業会,
    日本ペット用品工業会,上野観光連盟,(財) 東京動物園協会,
   優良家庭犬普及協会
 シンポジウム :
  挨 拶 : 中川志郎氏(動物愛護週間中央行事実行委員長)
  司 会 : 山崎いく子氏( (社) 日本愛玩動物協会常任理事)
  基調講演 : 林 良博氏(東京大学大学院農学生命科学科教授)
  コーディネーター : 小方宗次氏(麻布大学付属病院小動物部門長)
  パネリスト : 北村直人氏( (社) 日本獣医師会顧問)
          武部正美氏(武部獣医科病院・院長)
          中沢秀章氏(ブリーダー/中沢ペット動物病院・院長)
          太田勝典氏(全国ペット小売業協会副会長)
          水越美奈氏(PETS行動コンサルテーション代表)
          尾崎庸子氏(東京都動物愛護推進員・飼い主)

  中央行事も9月23日には「動物愛護ふれあいフェスティバル」が開催され,今年度は特別企画として「シンポジウム」が開催された.
 私は,本年6月に施行された動物愛護管理法の改正に,直接かかわった者として,法改正の趣旨を中心にパネルディスカッションに参加した.
 要旨は下記のとおり.


動物愛護管理法改正の趣旨
 議員立法により,昭和48年9月「動物の保護及び管理に関する法律」が制定されました.
平成11年12月,議員立法により改正,法律名を「動物の愛護及び管理に関する法律」とし,動物を命あるものとして位置づけ,動物取扱業の届出規制や迷惑防止の勧告などを盛り込んだ,画期的な改正としました.
 その後,平成13年1月,省庁再編により総理府から環境省に法律が移管.
しかし,残念なことに,依然として動物の不適切な飼い方や近隣への迷惑問題の発生が見られました.また,動物たちを命ある限り一緒に暮らす家族として「戸籍」を作ることが重要であると考えていますが,マイクロチップ等による所有者の明示状況もはかばかしくありませんでした.
 このようなことから,平成16年3月から動物愛護管理法の改正に向けた検討に入り,各党との意見交換を行いながら,改正法案がとりまとめられ,平成17年4月28日には,各党で合意された改正法案を,各党担当責任者による合同記者会見,平成17年6月7日衆議院可決,平成17年6月15日参議院可決成立,平成17年6月22日改正法の公布,平成18年6月1日施行.
 今回の改正法のとりまとめに当たっては,動物愛護団体,ペット業界,獣医師会,動物実験研究者など多くの団体から意見をお聞きし,改正法に反映してきました.ご協力いただいた関係団体の皆様方からは「意欲的な内容の改正法」であるとの高い評価をいただいたところです.
 なお,今回の法改正において,所有明示のための個別識別の徹底が規定されました.動物愛護団体と日本獣医師会は共同して動物ID普及推進会議(通称:アイポ〔AIPO〕)を組織し,マイクロチップによる家庭動物の個体識別と登録の事業を推進しております.

動物の愛護と管理の基本的な考え方
  • 動物がとても大好きな人,でも大嫌い(色々な理由で)な人もいます.
  • 動物を飼育している人,飼育したい人,飼育は嫌だ(色々な理由で).
  • 法律があるのを知っている人,知らない人.
    [1] すべての人が動物を好きになるものではないことから,「愛護」と「管理」のバランスを失しないようにすること.
    [2] 愛護は情緒に流されがちであることから,すべての国民が守るべき社会的規範としての愛護と,個人的な嗜好としての愛護を峻別すること.
    [3] 意識啓発が基本であり,目標達成等のためには相当程度の時間(期間)が必要とされることから,長期的展望のもとに段階的に施策を進めていくようにする.
  • 愛護は社会の普遍的なもの,国民が守る共通した考え方.生命の大切さ,尊さ,弱者を守ってやる,しかし,人の好き嫌いで決めることではない.
  • 飼育はエゴでは駄目,又,他人・社会への迷惑を防止する.動物,飼い主,社会,全てが加害者・被害者になる.特に人と動物の共通感染症(狂犬病等)は飼い主責任.虐待の最たるものは,餌と水を与えないこと.
  • 普及啓発を推進するため,学校,地域,家庭等での地味な活動.多数決で決めるのではなく,全員の賛成が必要.時間と中・長期的計画で粘り強く進めていく,「人と動物の共生」.
    どんな小さな命にも意味があり,生きる価値があり,誰もが何かの役割を持ってこの世に生まれてくるということ.
       E・B ホワイト 「シャーロットのおくりもの」
       「スチュアートの大ぼうけん」

      社会における生命尊重,友愛及び平和の情操の涵養を図る.
     以上の要旨を中心に報告し,各パネラーからもテーマーに沿って意見の報告があり,その後,パネルディスカッションに入り,会場からの質問にも答え,シンポジウムを終えた.

4 ま  と  め
 地方行事については,期間中,全国各地で開催されたと思うが,地方獣医師会と行政と動物愛護団体等との協力が絶対不可欠である.長い間に,回を重ねてこられた努力に,改めて敬意を表する.
 特に今回は,地元の岐阜大学獣医学科の協力で,「獣医師さんの活動」コーナーでは参加した市民に,動物の医者としての獣医師以外の活動について知ってもらえたのは,大きな成果である.今後も,我々獣医師の活動について多くの国民に知らせる機会を,獣医師自らが作らねばならないと痛感した.
 岐阜の動物愛護フェスティバルは,来年30回目を迎える,実行委員会特に,岐阜県獣医師会(近藤信雄会長)のエネルギッシュな活動に,地方獣医師会の力強さを感じた.
 中央行事については,特別企画としての,「動物愛護シンポジウム」に一般市民が大勢参加したのは,今年6月施行の動物愛護管理法の改正が注目された結果と,広く国民の間に動物の愛護と適正飼育について,関心と理解が深まりつつある証拠と確信した.
 最後に,パネルディスカッションで報告したが,
[1] 「愛護」と「管理」のバランスを失しないようにすること.
[2] すべての国民が守るべき社会的規範としての「愛護」と,個人的な嗜好としての「愛護」を峻別すること.
[3] 意識啓発が基本である,目標達成のためには段階的に施策を進める
等が大切であると思う.
 以上,日本獣医師会 山根会長の命を受けて,地方・中央行事に参加した私見である.


† 連絡責任者: 北村直人(日本獣医師会)
〒107-0062 港区南青山1-1-1
TEL 03-3475-1601 FAX 03-3475-1604 
E-mail : info@nichiju.lin.gr.jp


戻る