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行政・獣医事

狂犬病予防法施行規則の一部を改正する省令
パブリックコメントに対する意見提出等

 今回,厚生労働省においては,狂犬病予防法に基づき登録及び予防注射を行った犬に装着する「鑑札及び注射済票」の自治体による様式自由化を内容とする関係省令の改正を行うべく,その手続きの一環としてパブリックコメントが行われたところでありますが,本会から今回の改正内容は,改正の目的とする装着率の向上に帰結しないばかりか,根幹となる狂犬病対策の形骸化を招来すること等を理由に反対の立場で意見(別紙1)を提出するとともに厚生労働省健康局長あてに狂犬病対策の充実・強化に係る要請(別紙2)を行った.

【別紙1】
平成18年10月16日
厚生労働省健康局結核感染症課
パブリックコメント係 御中
社団法人 日本獣医師会
狂犬病予防法施行規則の一部を改正する省令について(意 見)
  1. 今回の省令改正案において鑑札及び注射済票の様式を市町村長の自由裁量に委ねるとする件については,狂犬病対策の形骸化を惹起することとなり以下の理由により反対する.
    (1)上位法令が求める要件の省令による逸脱
     鑑札と注射済票に関することは,狂犬病予防法において政令で定めることとされている.従って,様式を含め,鑑札及び注射済票に関することの一切を法令にて定めるとされているにもかかわらず,下位法令である省令において,行政措置実施の明示措置としての様式の定めを市町村長の自由裁量に委ねるとすることは,法形式上の許容範囲を超えることとなる.
    (2)狂犬病行政上の混乱の招来
     1,800カ所以上ある市町村単位での様式の自由化は,市町村単位で様式が異なることに直結し,市町村を越えての犬の移動を考えた場合,狂犬病予防行政,特に都道府県狂犬病予防員による未登録・未注射犬の抑留等の行政措置に混乱をもたらすばかりか,市町村事務の繁雑化,新たな財政支出を招くこととなり,このことが,自治体の狂犬病対策の停滞に繋がりかねない.
    (3)狂犬病予防法の法目的達成の阻害
    ア 狂犬病予防法が求める予防対策の要は,犬の所有者における登録と予防注射の徹底にある.様式の自由化は,装着率の向上に結びつかないばかりか,かえって犬の所有者の法令遵守意識の減退に繋がりかねない.市町村長が犬の所有者の個々の嗜好に応じきれるはずもなく,市町村長の自由裁量は,装着率の低下要素となりはすれ,向上に直結するものではない.
    イ 現下の狂犬病行政の最大の課題は,登録と予防注射率の向上にある.鑑札及び注射済票の装着のみに固執する必然性はない.しかも様式の自由化は装着率の向上に結果として結びつかず,また,狂犬病行政の混乱を招来させる帰結となることは明らかであり,今回の改正案は,本末転倒と考えざるを得ない.

  2. 改正を行うとするのであれば,狂犬病行政において最優先すべき課題を見極め,同時にその対処措置を講じた上で,装着の様式については,これまでの厚生労働省における検討の経緯を踏まえ,実効あるものとして仕組む必要がある.このためには,次の事項の実現を図る必要がある.
    (1)登録及び予防注射の実効対策
     今回の省令改正に併せ,狂犬病予防対策の要となる飼育犬の登録及び予防注射の実施率向上のための措置として狂犬病予防の自治体事務が当該地区を活動の区域とする地方獣医師会との連携の下で組織的に円滑に推進されるよう地域ネットワーク体制を整備すること.
    (2)マイクロチップによる個体識別番号による登録方式の導入
     行政行為の実施状況の対象動物における明示措置の担保は,動物の個体識別の確実性と個体データの適正管理をおいてほかにない.
     現行の犬の登録の在り方については,平成6年に厚生労働省自らが主催した「犬の登録に関する研究会」においてマイクロチップによる鑑札及び注射済票の一体化の方向が取りまとめられ,答申された経緯がある.この経過及び今日,動物の個体識別については,国際標準化されたマイクロチップによる個体識別番号の登録・管理方式が普及してきていることを踏まえ,今回の改正においては,犬の登録及び注射済票交付事務においてマイクロチップによる様式一体化が推進し得るよう,改正条文において,「鑑札及び注射済票の装着について,薬事法に基づき承認を受けた動物用体内埋め込み型の個体識別器具の様式としての導入を可能とする.」旨を明示するとともに,併せて自治体における個体識別番号による登録事務の受け入れ体制を整備すること.
    (3)狂犬病予防対策の普及・啓発
     狂犬病予防法に基づく狂犬病対策については,広く国民的理解の下で推進する必要がある.狂犬病の最終発生から50年が経過する中で狂犬病のリスク管理に対する意識が低下することなく犬の所有者の責務としての位置づけについて一層の普及・啓発対策を推進すること.

 

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