5 動 物 検 疫
(参考)日本における犬などの検疫 |
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6 動 物 薬 事 インドネシアでは,動物薬事が農業省の所管とされたのは,1967年の家畜及び動物衛生に関する法律によるが,以来制度的,技術的に整備されて現在にいたっている.特に,1991年12月に新たな政府規則が制定され,動物薬事行政の体制が確立した.日本がインドネシアの動物医薬品検査所に対するプロジェクト方式技術協力を行ったのもこの時期からである. (1)家畜用ワクチン,抗生物質製剤の生産量 インドネシアにおいては,いくつかのワクチンを,スラバヤのワクチン製造センター及び一部の民間会社で製造している.しかし,多くを海外からの輸入に頼っており,1997年7月の経済危機以後は,その輸入も減少してきており,家畜疾病の発生が増加傾向にある.当時のインドネシアの家畜用ワクチン,抗生物質の製造量を(表6)に示した. (2)動物医薬品関連業者 インドネシアの動物医薬品関連業者の数は(表7)のとおりである. |
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7 獣 医 師 ジャカルタ,スラバヤなどの大都市や観光地でもあるバリ島では,小動物の診療が行われているが,地方においては犬や猫などの診療を行う施設は少ない. 大学の獣医学科を卒業したもののほとんどは,公務か農協に勤めることになり,業務は,畜産行政,家畜衛生研究所,家畜保健所,動物検疫所,公衆衛生部門(公務員としてのと畜検査を含む)などがある.卒業1年目で地方の家畜保健所の所長(ただし所員無しの場合も多い)になる場合もある.若い獣医師は,技術向上のための研修などを欲している.獣医補も獣医師との共働の仕事を求めているが,厳しい予算状況の中でままならない状況である. なお,インドネシアには獣医学科のある大学(5年制)が5校あるが,近年獣医学科への入学者数を増加させている.1999年の5校の入学定員(予定)枠は550名であったが,まず700名まで広げ,2003年には760名まで増大している. |
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8 動 物 福 祉 家畜の飼養管理上の動物福祉に関しては,これまで家の周辺に放し飼いにしていたものが,鶏や豚ではインテグレーションにより飼育されるようになり,牛(酪農,肥育牛)においては舎飼いが多いが,ほとんど放牧場もなくその生涯を畜舎にいる状態のものもあり,動物福祉上は問題である. また,狂犬病が発生した際もフローレス島では検査する事なくすべての犬を撲殺する方法が取られていたが,人間が生きる上での厳しい環境が,動物までの福祉に心配りする余裕はない状況といえる.私も,1998年の11月にフローレス島で,「1頭の犬の撲殺に立ち会って下さい.」と頼まれた.共通感染症撲滅のためとはいえ,獣医師の自分としては,涙なくして見ることはできなかった.そして,緊急対応の他,JICAに翌年度のワクチンを要求し,予算を獲得したものだった. |
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9 お わ り に 日本は,2002年の口蹄疫(宮崎県,北海道)や2004年の西日本の鳥インフルエンザを撲滅したように優れた家畜衛生組織がしっかり機能している.公衆衛生面でも狂犬病を撲滅して久しい.今後も,国内の家畜衛生体制を万全なものとして維持していく必要があることは言うまでもない.なお,団塊の世代の多くの獣医師の方が定年を迎え退職されるが,優れた技術を活かし,アジア等の諸外国の高病原性鳥インフルエンザや狂犬病対策に貢献されることを期待したい. |
† 連絡責任者: | 森山浩光(ベトナム畜産研究所(NIAH)) Thuy Phuong Tu Liem, Ha Noi Viet Nam TEL +84-4-8383087 |