4 現在までの探知状況 平成18年1月から3月までの間に検疫探知犬が探知した畜産物の入った手荷物の数は217件であった.検疫探知犬が反応した際(図4),ハンドラーは犬の目の前で,手荷物の持主に何か畜産物が入っていないか確認する(図5).畜産物が入っていたことを確認した場合,ハンドラーは犬にご褒美をあげる.しかし,たとえばチョコレートの匂いに反応して座ってしまった場合,犬はご褒美をもらうことができず,「この匂いに反応してもご褒美をもらうことはできない」ということを学習し,次回からは反応しなくなる.したがって,検疫探知犬にとって日々の探知活動は実践であるとともに訓練でもあり,実際に1月は検疫探知犬の反応のうち正しい(手荷物から畜産物が確認された)反応の率は55%であったが,3月には68%に伸びている.今後も探知活動を重ねることにより,さらに正しい反応の率が上昇することが期待される. なお,探知された畜産物が検査不合格品であるか否かは,税関検査場内の動物検疫カウンターにおいて,他の家畜防疫官が,輸出国はどこか,輸出国政府機関発行の検査証明書の添付があるかについて検査を行い判断する.
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5 今後の課題 今後は,本格導入に向けて引き続き探知実績の蓄積及び評価ならびに探知業務を実施するにあたって生じる問題点の把握及び解決策の検討などを実施することとしていますが,将来的には,主要な地方空港に配置できるようチーム数を拡大していくことも検討していきたいと考えている. また,検疫探知犬としての役目を終え引退した犬をどう取り扱うかという動物福祉の問題がある.検疫探知犬は6〜8年活躍した後引退するのが普通で,オーストラリアでは,多くの検疫探知犬は引退後,ハンドラーの自宅に引き取られ老後も幸せに暮らしているそうである.動物検疫所が導入した検疫探知犬にも数年後は引退の時が来るが,それまでに犬の老後の取り扱いを検討しておく必要がある. |
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6 最 後 に 最後に,検疫探知犬は専用のコートを着ると,「さあ,これから仕事だ!」という気持ちになる(図6).このコートは,盲導犬でいえばハーネスにあたるものである.コートの色は空港内で人目を引くように明るいブルーにしている.また,ハンドラーの制服は上下とも明るいベージュである.ここで読者に重要なお願いがある.海外旅行から帰国した際,空港で検疫探知犬を見かけても手を触れないでいただきたい.彼女達はとても愛らしいので,特に犬好きの方にとっては可愛がりたい衝動を抑えるのは大変だと思うが,いろいろな人に可愛がられてしまうと彼女達は使役犬として働く意欲を失ってしまう.チームが成長し優秀な成績をあげるためには何より経験が大切で,今後実際の探知活動を続けることにより,ベテランの検疫探知犬とハンドラーに成長していく.遠くから暖かい目で見守っていただきたい. また,検疫探知犬の導入にあたり,動物検疫所としては初めてのことだが,検疫探知犬のイメージキャラクターを一般公募した.応募総数は117点と,私達の予想を上回る反響で,それらの中から1点を選択するというのは嬉しい悲鳴であった. 図7が,検疫探知犬イメージキャラクターである.今後,広報用パンフレット及びグッズなどいろいろなところで活躍することとなる.
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† 連絡責任者: | 小坪清子 (現在 : 農林水産省消費・安全局動物衛生課国際衛生対策室) 〒100-8950 千代田区霞が関1-2-1 TEL 03-3502-8111 FAX 03-3502-3385 |