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【別紙2】
17日獣発第207号
平成18年1月13日
獣医麻酔外科学会
 会 長 多川政弘 様
社団法人 日本獣医師会
会 長 山根義久
ケタミンの麻薬指定の動きと麻薬製剤取扱いの対応について
 日頃より本会事業運営については,何かとご支援・ご協力をいただき,お礼申し上げます.
 さて,厚生労働省においては,ケタミンを麻薬及び向精神薬取締法(以下「麻取法」)に基づく麻薬に指定する件についてパブリックコメントを募集したところでありますが,ケタミンを有効成分とする製剤は,古くから動物医療の臨床において麻酔や動物の不動化措置の適用医薬品として広く使用されているところであります.
 本会においては,ケタミンが麻薬指定された場合における動物医療の円滑な推進と適正確保について厚生労働省をはじめ,農林水産省,さらには製剤の供給に係る製薬企業に対し,別紙(略)により要請活動を実施したところでありますが,貴学会におかれましては,動物臨床において,ケタミン製剤の適用に代わり得るものであることを前提に,麻取法の規制下におかれていないケタミン製剤以外の医薬品の適用による麻酔措置等の療法と適用に当たっての留意事項について,下記の3種のケースごとにその詳細([1] 適用医薬品,[2] 投与方法・術式,[3] 医薬品適用に当たっての留意事項等)を本年3月末までにご教示くださいますようお願いします.
  1. 犬・ネコ等の小動物の麻酔措置及び麻酔導入措置
  2. 馬・豚等の産業動物の麻酔措置及び麻酔導入措置
  3. 動物園動物,野生動物の不動化措置

 

【別紙3】
「麻薬及び向精神薬取締法に基づく麻薬の新規指定に関する件」に対して寄せられたご意見について
平成18年1月27日
厚生労働省医薬食品局
監視指導・麻薬対策課
 麻薬,向精神薬の濫用による保健衛生上の危害を防止し,公共の福祉の増進を図るため,「麻薬,麻薬原料植物,向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令」の一部を改正し
別 名:ケタミン
化学名:2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサノン

を麻薬に指定する件について,平成17年12月14日から平成18年1月13日まで,ホームページ等を通じてご意見を募集したところ,260件のご意見,ご要望をいただきました.
 お寄せいただいたご意見の要旨とそれに対する厚生労働省の考え方について,以下のとおりとりまとめました.
 なお,とりまとめの都合上,いただいたご意見のうち,同じ内容のものは適宜集約しております.また,パブリックコメントの対象となる案件についてのご意見に対する考え方のみを公表させていただいておりますのでご了承ください.
ご意見をお寄せいただきました方々のご協力に厚く御礼申し上げます.

○ご意見の要旨

(ご意見1)
 動物に対しケタミンを使用しているが,麻薬に指定されるとこれまでのように使用できなくなる.いきなり麻薬とは過剰な対応であるので,麻薬以外の規制を考えるべきではないか.
(回 答)
 ケタミンは世界的に乱用されている薬物のひとつであり,米国や中国においてはすでに麻薬として規制されております.我が国においても,その使用が強く疑われる死亡事例が発生しており,また,中毒症例が関係学会でも報告されています.このような現状にかんがみると,健康被害を食い止めるためにも麻薬に指定して規制するべきと考えます.
 また,ケタミンの乱用は東南アジア,特にタイ,中国,香港等日本に近い国々で問題となっております.韓国では,動物用のケタミン注射剤を粉末状に加工して密売していた事件も発生しております.さらに,東南アジアの国々の当局はケタミンについて,麻薬を規制する国際条約(麻薬単一条約)の規制対象(麻薬)とすべく,国際機関に提案する動きを見せており,WHOもケタミンの麻薬指定を勧告することを検討しています.このように国際的にケタミンを麻薬として規制する予定であり,我が国でも,ケタミンの乱用が拡大する前に対策を講じることが必要であると考えます.
 ケタミンを麻薬として規制した場合でも,医師,歯科医師,獣医師であれば「麻薬施用者」の免許が取得でき,これまでどおりケタミンを使用することができます.ただし,麻薬施用者には,ケタミンを保管するための保管庫の設置や年間の使用報告等が義務付けられます.なお,麻薬施用者の免許や義務の詳細については,都道府県の薬務主管課で知ることができます.

(ご意見2)
 ケタミンを野生動物の調査,研究,駆除作業のために使用しているが,麻薬に指定されると野生鳥獣対策に支障が出る.
(回 答)
 野外において,麻酔銃や吹き矢等を使用して動物等を捕獲し,調査,研究することは学術研究の範ちゅうに入りますので「麻薬研究者」の免許を取得することにより,これまでどおりケタミンを使用することができます.また,有害鳥獣等の駆除のために使用する場合では,その状況により,麻薬施用者又は麻薬研究者の免許を取得することで使用することができます.ただし,麻薬施用者や麻薬研究者には,ケタミンを保管するための保管庫の設置や年間の使用報告等が義務付けられます.

(ご意見3)
 ケタミンが麻薬になることでメーカーが製造中止するなど,流通に支障が出ているので麻薬の指定は反対である.
(回 答)
 人に用いる医薬品としてのケタミン注射薬については,製造している製薬会社からは,今後も供給を継続すると聞いています.動物用医薬品のケタミン注射薬については,一社が撤退を表明しておりますが,他の製造会社は販売を継続すると聞いております.今後,できるだけ流通に支障が生じないよう,業界に要請することといたします.

(ご意見4)
 麻薬は疾病治療でしか使えないので,ケタミンを麻酔として使用することはできないのではないか.
(回 答)
 麻薬及び向精神薬取締法第27条第3項により,麻薬は疾病治療のみにしか使用できないことになっていますが,麻酔や治療前の検査等で苦痛を除去するために使用する等の正当な医療行為は,疾病治療とみなすことができます.

(ご意見5)
 いきなり麻薬として規制されると対応ができない.
(回 答)
麻薬として規制する場合には,医療等の現場が混乱しないように相当の周知期間が必要であると考えており,今回も施行までに十分な期間を設ける予定です.

(ご意見6)
 ケタミンはバイアル製剤しか販売されていないので,麻薬になると取扱いが煩雑になる.アンプル製剤が必要である.
(回 答)
 アンプル製剤の要望があることを製薬会社に伝えます.なお,バイアル製剤を複数の患者(患畜)に分けて施用することは違反ではありませんが,個々の患者(患畜)に対する施用量等を明確にする必要があります.

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