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行政・獣医事

ケタミンの麻薬指定の動きと当面の対応(その2)

 本件については,本誌第59巻第2号(90頁〜94頁)に掲載したが,その後,麻薬製剤の取扱いに際しての遵守事項等を地方獣医師会会長あてに別紙1のとおり通知するとともに,ケタミンが麻薬指定された場合の動物臨床におけるケタミン製剤以外の医薬品の適用による麻酔措置等の療法と適用に当たっての留意事項の提示を獣医麻酔外科学会会長あてに別紙2のとおり要請した.
 また,厚生労働省から平成17年12月13日付けで行われたパブリックコメントにおいて寄せられた意見の要旨と回答が別紙3のとおり公表された.

 

【別紙1】
17日獣発第207号
平成18年1月13日
地方獣医師会会長 各位
社団法人 日本獣医師会
会 長 山根義久
(公印及び契印の押印は省略)
ケタミンの麻薬指定の動きと麻薬製剤取扱いの対応について
 標記の件に関しては,昨年12月13日付けをもって厚生労働省が麻薬指定予定のパブリックコメントの募集を行ったことを受け,平成17年12月20日付け17日獣第185号により,麻薬製剤の適用に際しての規制内容等について関係構成獣医師に対する当面の情報提供等を依頼する一方,平成18年1月10日付け17日獣発第203号により通知したとおり,本年1月4日付けをもって,厚生労働省をはじめ,農林水産省,さらにはケタミン製剤の供給に係る関係製薬企業に対し,[1]ケタミンの麻薬指定の理由の明確化とともに,[2]麻薬指定された場合における動物医療の円滑な推進と適正確保等に関し要請を行ったところであります(要請内容は別添写を参照(略:本誌第59巻第2号91頁参照)).
 今回の麻薬指定は,ケタミンの国内における濫用の現状とともに,麻薬取締りについての国際的動向を受けたものとされております.
 ご承知のとおり,獣医師は,医師,歯科医師と同様に,麻薬及び向精神薬取締法(以下「麻取法」)の規定に基づき麻薬取扱者の免許(麻薬施用者免許)を取得すれば,疾病治療を目的として麻薬製剤を施用することができますが,その施用及び管理等については,麻取法の規定に基づき厳正に対処することが求められることとなります.麻薬製剤の取扱い上の留意事項(罰則の適用を含む)については,先に平成17年12月20日付け17日獣発第185号により,通知したところでありますが,改めて麻薬製剤の取扱いに際しての遵守事項を整理すると別紙のとおりとなります.
 本件については,今後とも関係情報の入手に努め,貴会を通じ関係構成獣医師に対する周知を図るとともに,ケタミンが麻薬指定されることとなった場合に備え,ケタミン製剤の動物医療における適用の現状に即した処方,投与の確保等を引き続き厚生労働省及び農林水産省等に対し要請することとしております.
 麻薬施用者免許の許可は,都道府県知事の権限とされており,その許可手続及び監視・取締事務は,都道府県の福祉保健・健康医務部局の薬務担当課が所管することとされておりますが,貴会におかれては,都道府県の担当部局とも連携し,関係会員への情報提供及び指導方よろしく対応の程お願いします.
 なお,ケタミン製剤に代わる医薬品の適用による動物の麻酔及び不動化措置を施術するに当たっての留意事項等の詳細については,現在,獣医麻酔外科学会に対し見解等を求めているところでありますが,見解等が取りまとまり次第通知することを申し添えます.
 
【別 紙】
動物医療の臨床において麻薬製剤を取扱う際の遵守事項(骨子)
項 目

規制の内容


1 麻薬取扱者免許と麻薬取扱いに係る諸届等
(1)麻薬取扱者免許
(麻薬及び向精神薬取締法(以下「法」)第3条)
   
ア 麻薬施用者免許の取得    疾病治療の目的で業務上麻薬を施用若しくは施用のために交付又は麻薬を記載した処方箋(麻薬処方箋)を交付するために麻薬施用者免許が必要.
 麻薬施用者・麻薬管理者の免許申請は,都道府県知事に,診断書,獣医師免許証,診療施設の開設届を添えて行う.
イ 麻薬管理者免許の取得    麻薬施用者が2人以上いる飼育動物診療施設では,常勤の獣医師又は薬剤師の中から,その診療施設の麻薬を業務上管理する麻薬管理者を置くことが必要.
 麻薬施用者・麻薬管理者の免許申請は,都道府県知事に,診断書,獣医師免許証,診療施設の開設届を添えて行う.
(2)麻薬取扱いに係る諸届等
ア 免許証の記載事項の変更届(法第9条)
   診療施設の所在地・名称の変更,麻薬取扱者の住所・氏名の変更,麻薬施用のための従たる診療所の追加,削除等の場合には届出が必要.
イ 業務廃止届(法第7条)    麻薬施用者(管理者)が麻薬に関する業務を廃止したり,その前提となる資格を失った場合は,届出が必要.
ウ 免許証の返納(法第8条)    免許証の有効期間が満了した場合,免許証返納届の提出が必要
エ 免許証の再交付(法第10条)    免許証を紛失したり,き損した場合は,「免許証再交付申請書」の提出,免許証の再交付が必要.
オ 麻薬診療施設でなくなった場合の届出(法第36条)    診療施設の廃止届を提出した場合,麻薬施用者が一人もいなくなった場合には,業務廃止及び所有する麻薬の数量等の届出が必要.所有する麻薬は,廃棄又は譲渡の手続きが必要.
カ 麻薬管理者(麻薬施用者)の年間届(法第48条)    麻薬管理者(麻薬管理者のいない麻薬診療施設にあつては,麻薬施用者)は,毎年11月30日までに,麻薬の所持,譲受,施用状況等に関する届出が必要.
2 麻薬の施用・交付・麻薬処方箋の交付に当たって必要な事項
(1)麻薬を処方する際の注意事項
   
ア 疾病の治療目的以外の麻薬の麻薬の施用・交付・麻薬処方箋の交付の禁止(法第27条)    麻薬施用者は,疾病の治療以外の目的で麻薬の施用・交付・麻薬処方箋の交付をしてはならない.
イ 封がされたままの麻薬の施用のための交付の禁止(法第30条)    麻薬施用者は,政府発行の証紙で封がされているままで麻薬を施用のため交付してはならない.
ウ 当該麻薬施設で管理されている以外の麻薬の施用・施用のため交付の禁止(法第33条)    麻薬施用者は,当該麻薬施設で管理されている以外の麻薬を施用・施用のため交付してはならない.
(2)診療簿への記載(法第41条)    麻薬施用者が麻薬を施用,施用のため交付又は麻薬処方箋を交付したときは,獣医師法の規定による診療簿に定められた事項を記載することが必要.
(3)麻薬処方箋への記載(法第27条)
3 麻薬の管理に当たって必要な事項
   
(1)麻薬卸売業者からの譲受(法第32条)    麻薬卸売業者には麻薬譲受証を交付し,麻薬卸売業者からは麻薬譲渡証の交付を受けることが必要
 麻薬譲渡証は,2年間保存することが必要.
(2)麻薬の保管(法第34条)    飼育動物診療施設で管理する麻薬は,施設内に設けた鍵をかけた堅固な設備に保管することが必要
(3)麻薬帳簿の記帳及び保管(法第39条)    麻薬管理者(麻薬管理者のいない麻薬診療施設にあつては,麻薬施用者)は,飼育動物診療施設に帳簿を備え付け,定められた事項を記載することが必要.
 使い終わった帳簿は,2年間保存することが必要.
(4)麻薬の廃棄(法第29条,第35条)    麻薬を廃棄しようとする場合,麻薬の品名及び数量並びに廃棄の方法について都道府県知事に届け出て,当該職員の立会いの下に行わなければならない.
 麻薬処方せんにより調剤された麻薬を廃棄したときは,都道府県知事に届出ることが必要.
(5)麻薬の事故届(法第35条)    麻薬管理者又は麻薬施用者が管理している麻薬に減失(破損,蒸発,流出等による回収不能な事例を含む.),盗取,所在不明その他の事故があった場合は,都道府県知事に届出ることが必要.

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