2.検疫法関係
 (1)検疫感染症

ア. 検疫感染症の追加
 検疫感染症に,国内に常在しない感染症のうちその病原体が国内に侵入することを防止するためその病原体の有無に関する検査が必要なものとして政令で定めるものを追加することとし,この政令で定める検疫感染症としてデング熱及びマラリアを定めることとしたこと.(検疫法第2条第4号及び検疫法施行令第1条関係)
 また,SARS及び痘そうについて,感染症法の一類感染症への追加に伴い,検疫法第2条第1号に掲げる検疫感染症として追加されることとなること.
イ. SARS及び痘そうの停留の期間
 SARS及び痘そうの停留の期間は,次のとおりとすることとしたこと.
(検疫法施行令第1条の3関係)
・SARS  240時間
・痘そう  408時間
ウ. 追加する検疫感染症の仮検疫済証に付する期間
 仮検疫済証に付する期間は,次のとおりとすることとしたこと.(検疫法施行規則第6条第2項関係)
・SARS及び痘そうそれぞれイに定める期間
・デング熱 336時間
・マラリア 672時間
エ. 検疫港以外の港における検疫
 アの政令で定める検疫感染症の流行地域については,法第21条第1項第1号の検疫港以外の港における検疫を行うことができない検疫感染症の流行地域から除外することとしたこと.(検疫法施行規則第7条の2関係)
オ. 申請による検査等手数料
 痘そう,デング熱及びマラリアについての検疫法第26条に基づく船舶又は航空機の所有者又は長の申請による人又は貨物に対する検疫感染症の病原体の有無に関する検査手数料は,次のとおりとすることとしたこと.
 なお,SARSに係る検査手数料については,現時点では短期間で病原体の有無を検査を行う方法がないため,当面,第26条に基づく検査は実施しないこととし,その金額は定めないこととしていること.(検疫法施行令第2条及び別表第2関係)
 ・痘そう 1件につき 2,900円
 ・デング熱 1件につき 2,400円
 ・マラリア 1件につき 1,800円
 (2)検疫感染症に感染したおそれのある者の入国後の健康状態の確認
ア. 検疫所長への報告等
 仮検疫済証が交付された場合において,検疫所長は,検疫感染症の病原体に感染したおそれのある者で停留されないものに対し,[1]旅券の呈示を求め,[2]当該者の国内における居所及び連絡先,氏名,年齢,性別,国籍,職業並びに旅行の日程並びに当該者が検疫感染症の病原体に感染したことが疑われる場所について報告を求め,[3]一定の期間内において当該者の体温その他の健康状態について報告を求め,若しくは質問を行い,又は検疫官をしてこれらを行わせることができることとしたこと.(検疫法第18条第2項及び検疫法施行規則第6条の2関係)
イ. 都道府県知事等との連携
 検疫所長は,アによる報告又は質問の結果,健康状態に異状を生じた者を確認したときは,当該者に対し,保健所その他の医療機関において診察を受けるべき旨その他検疫感染症の予防上必要な事項を指示するとともに,当該者の居所の所在地を管轄する都道府県知事等に,当該者の健康状態及び当該指示した事項並びにアにより報告を求めた事項を通知しなければならないこととしたこと.(検疫法第18条第3項及び検疫法施行規則第6条の3関係)
 なお,その他何らかの症状を呈しているが停留しなかった者について,検疫所において従来より保健所その他の医療機関において診察を受けるべき旨その他必要な指示を行うとともに,都道府県知事等に対して必要な情報提供を実施してきたところであり,これらについては当該者に対する適切な医療の提供及び国内感染症対策との連携という観点から引き続き実施するものであること.
 (3)四類感染症についての応急措置等
   感染症法の四類感染症について,検疫法第24条の応急措置及び検疫法第26条の2の検疫感染症以外の感染症のうち政令で定める感染症に関する診察等の措置の対象とすることとしたこと.(検疫法第26条の2関係)
 (4)新感染症に係る措置
   厚生労働大臣は,外国に新感染症が発生した場合において,当該新感染症の発生を予防し,又はそのまん延を防止するため緊急の必要があると認めるときは,検疫所長に,当該新感染症にかかっていると疑われる者に対する診察を行わせることができるものとすること.この場合において,検疫所長は,検疫官をして当該診察を行わせることができるものとすること.(検疫法第34条の2第1項関係)
 (5)罰 則
   (2)のアの旅券の呈示をせず,若しくは虚偽の報告をし,若しくは質問に対し,答弁をせず,若しくは虚偽の答弁をした者及び(4)の診察を拒み,妨げ,又は忌避した者についての罰則を設けるとともに,罰金の額について必要な引き上げを行うこととしたこと.(検疫法第35条から第39条までの規定関係)

 

 3.法令の廃止
 次に掲げる法令は廃止することとしたこと.
重症急性呼吸器症候群を感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第6条第6項の指定感染症として定める等の政令(平成15年政令第304号)
重症急性呼吸器症候群を検疫法第34条の感染症の種類として指定する等の政令(平成15年政令第305号)
重症急性呼吸器症候群を感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第6条第6項の指定感染症として定める等の政令の施行に伴う感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則の準用に関する省令

(平成15年厚生労働省令第120号)
重症急性呼吸器症候群を検疫法第34条の感染症の種類として指定する等の政令の施行に伴う検疫法施行規則の準用に関する省令(平成15年厚生労働省令第121号)
重症急性呼吸器症候群を感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第6条第6項の指定感染症として定める等の政令の施行に伴う感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第54条第1号の輸入禁止地域等を定める省令の準用に関する省令(平成15年厚生労働省令・農林水産省令第3号)

 

 4.施行期日等
(1) これらは,第2の1の(14)を除き,公布の日から起算して20日を経過した日(平成15年11月5日)から施行することとしたこと.
(2) これらの施行に必要な経過措置を定めるとともに,関係法令について所要の規定の整備を行うこととしたこと.

 第三 その他の留意事項
 感染症法第24条に規定する感染症の診査に関する協議会については,同条に規定する要件を満たしていれば,各都道府県等に設置されている他の審議会等と統合して設置して差し支えないものであること.

 

 【別表第1】 四類感染症

 Ε型肝炎,ウエストナイル熱,A型肝炎,エキノコックス症,黄熱,オウム病,回帰熱,Q熱,狂犬病,高病原性鳥インフルエンザ,コクシジオイデス症,サル痘,腎症候性出血熱,炭疽,つつが虫病,デング熱,ニパウイルス感染症,日本紅斑熱,日本脳炎,ハンタウイルス肺症候群,Bウイルス病,ブルセラ症,発しんチフス,ボツリヌス症,マラリア,野兎病,ライム病,リッサウイルス感染症,レジオネラ症,レプトスピラ症
 ※下線は今回の改正で追加又は改正されたもの.

 【別表第2】 五類感染症

  アメーバ赤痢,RS ウイルス感染症,咽頭結膜熱,インフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザを除く.),ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く.),A群溶血性レンサ球菌咽頭炎,感染性胃腸炎,急性出血性結膜炎,急性脳炎(ウエストナイル脳炎及び日本脳炎を除く.),クラミジア肺炎(オウム病を除く.),クリプトスポリジウム症,クロイツフェルト・ヤコブ病,劇症型溶血性レンサ球菌感染症,後天性免疫不全症候群,細菌性髄膜炎,ジアルジア症,水痘,髄膜炎菌性髄膜炎,性器クラミジア感染症,性器ヘルペスウイルス感染症,尖圭コンジローマ,先天性風しん症候群,手足口病,伝染性紅斑,突発性発しん,梅毒,破傷風,バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症,バンコマイシン耐性腸球菌感染症,百日咳,風しん,ペニシリン耐性肺炎球菌感染症,ヘルパンギーナ,マイコプラズマ肺炎,麻しん,無菌性髄膜炎,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症,薬剤耐性緑膿菌感染症,流行性角結膜炎,流行性耳下腺炎,淋菌感染症
 ※下線は今回の改正で追加又は改正されたもの.

 【別表第3】 全数把握対象五類感染症

  アメーバ赤痢,ウイルス性肝炎(Ε型肝炎及びA型肝炎を除く.),急性脳炎(ウエストナイル脳炎及び日本脳炎を除く.),クリプトスポリジウム症,クロイツフェルト・ヤコブ病,劇症型溶血性レンサ球菌感染症,後天性免疫不全症候群(無症状病原体保有者を含む.),ジアルジア症,髄膜炎菌性髄膜炎,先天性風しん症候群,梅毒(無症状病原体保有者を含む.),破傷風,バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症,バンコマイシン耐性腸球菌感染症
 ※下線は今回の改正で追加又は改正されたもの.

 【別表第4】 定点把握対象五類感染症及び指定届出機関の指定区分
定点把握対象の五類感染症 指定届出機関の指定区分
RS ウイルス感染症,咽頭結膜熟,A群溶血性レンサ球菌咽頭炎,感染性胃腸炎,水痘,手足口病,伝染性紅斑,突発性発しん,百日咳,風しん,ヘルパンギーナ,麻しん(成人麻しんを除く.),流行性耳下腺炎
診療科名中に小児科を含む病院又は診療所
インフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザを除く.
診療科名中に内科又は小児科を含む病院又は診療所
急性出血性結膜炎,流行性角結膜炎
診療科名に眼科を含む病院又は診療所
性器クラミジア感染症,性器ヘルペスウイルス感染症,尖圭コンジローマおよび淋菌感染症
診療科名中に産婦人科若しくは産科若しくは婦人科,性病科又は泌尿器科を含む病院又は診療所
クラミジア肺炎(オウム病を除く.),細菌性髄膜炎,ペニシリン耐性肺炎球菌感染症,マイコプラズマ肺炎,成人麻しん,無菌性髄膜炎,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症及び薬剤耐性緑膿菌感染症
患者を三百人以上収容する施設を有する病院であって,その診療科名中に内科および外科を含むもの
 ※下線は今回の改正で追加又は改正されたもの.