会議報告

平成15年度第3回理事会の概要


| .日 時: 平成15年8月28日(木)14:30〜17:00
|| .場 所: ホテルフロラシオン青山 3階「孔雀西の間」
||| .出席者:  
会 長: 五十嵐幸男
副会長: 金川弘司,辻 弘一
専務理事: 大森伸男
地区理事: 坂井清治,武田金之助,中川秀樹,
手塚泰文,東出義弘,串田壽明,
坪倉 操,竹内 久,藏内勇夫
職域理事: 酒井健夫,稲庭政則,岡本有史,
横尾 彰,宮沢 壽,森田邦雄
監  事: 玉井公宏,麻生 哲
事務局: 朝日事務局長ほか
|V .議 事:  
【報告事項】  
1. 業務概況等の件
2. 環境省に対する要請活動の件
3. AIPO事業の推進状況に関する件
4. その他

【議決事項】  
  第1号議案  副会長の順序を定める件
  第2号議案  専門委員会委員の委嘱に関する件
  第3号議案  日本獣医師会会長特別感謝状を授与する件
  第4号議案  専務理事の報酬の件
  第5号議案  賛助会員入会の件

【協議事項】  
  開業者の職域活動に係る部会組織のあり方に関する件


V .概 要:  
【会長挨拶】
 冒頭,五十嵐会長から,[1]食の安全確保については,内閣府に設置された食品安全委員会委員に獣医師1名が選任され,また,日本中央競馬会が減収の状況下で,全国競馬・畜産振興会の助成事業「獣医師育成研修等強化対策事業」及び「人獣共通感染症に関する研修事業」に多額の予算措置をされたことは,われわれに対する社会の期待の表われであり,今後とも信頼を深めていきたい.[2]獣医師倫理については,昨年策定した「小動物医療の指針」に続き,本年度は産業動物医療の指針を検討し,倫理規範を整備したい.[3]獣医師生涯研修事業については,試行期間を経て本年度から本格実施に移行したが,今後とも指導いただきたい.[4]専門医制度については,専門医制度検討委員会の委員長であった東京大学の佐々木教授を中心に専門医機構設立のための検討が進められる.[5]獣医学教育の充実・強化については,現在,大学再編から教官の増員等学内での自助努力する大学もあるようだが,今後とも,学部編成による獣医学教育の充実を求めていきたい.[6]組織財政委員会の答申にあった部会組織の設立については,有識者のご意見も伺いながら検討していきたい.[7]学校飼育動物については,文部科学省にも要請したが,子供たちの情操教育とともに,人と動物の感染症の指導等,本年度設置する学校飼育動物委員会で検討したい.[8]農林水産省では,消費・安全局衛生管理課に小動物医療の担当者を3名配置する方向で予算要求が行われている.[9]日本獣医学会と三学会との連携について,本年は青森県で行われる東北地区三学会と日本獣医学会の第136回学術集会を合同で開催する予定である.[10]各理事においては,今後,本会議への協力,指導を依頼したいこと等について報告を兼ねた挨拶が行われた.

【議長就任・議事録署名人の指名】
 続いて,事務局から理事の紹介が行われた後,五十嵐会長が議長に就任し,武田・酒井両理事を議事録署名人に指名して議事に入った.

【報告事項】
1.業務概況等の件
 前回理事会(6月21日)以降の業務概況について大森専務理事から報告が行われた.
 
2.要請活動に関する件
 大森専務理事から,7月16日付けで小野寺自然環境局長に対し,動物の愛護管理及び移入種対策の充実整備について大要次のとおり要請したことが説明された(要請書の全文は,本誌第56巻8号504頁から505頁に掲載).
(1) 動物の愛護管理対策の充実強化について
 動物の愛護及び管理に関する法律(以下「動物愛護管理法」という)が施行されて2年半が経過するが,依然として犬・猫の引き取り処分は,相当数にのぼり,「動物愛護管理法」に基づく動物の愛護管理対策の一層の充実強化を図ることが必要.
[1] 獣医師専門職の配置及び動物愛護推進協議会組織化の推進
  都道府県等に獣医師専門職の配置を促進する一方,動物愛護推進員の委嘱及び動物愛護推進協議会の組織化については,動物愛護推進員支援のためのガイドラインの普及とともに,都道府県に対する組織化支援のための助成措置の拡充.
[2] 動物の個体識別事業の支援
  「飼養保管基準」においては,動物の所有者責任を明らかにする等の目的でマイクロチップ等による個体識別の措置を講じるよう努めるとされたが,本会及び本会の会員である都道府県獣医師会は,動物愛護関係団体との連携の下で,所有者責任に基づく動物の適正飼養及び災害時における動物救護対策に資するために展開しているマイクロチップ個体識別事業の推進にあたり,関係都道府県に対し,動物管理センター等に収容される動物に対するマイクロチップの読みとり業務への積極的な対応及びリーダーの設置等関連機器等の整備の指導.
(2) 動物の移入種対策と動物愛護管理対策の整合性の確保について
  近年のペットブームを背景として種々の移入種動物が輸入,販売,飼養され,これら動物の遺棄や逃亡による生物多様性への深刻な影響等についての移入種対策について,環境省で検討されている新法制定による新制度については,「動物愛護管理法」との整合性を確保した上で実効ある規制措置として運営する必要があるとし,移入種対策は,生物多様性の影響評価の結果による導入承認の移入種動物(国内定着種を含む.)の多くはペット動物であり,その遺棄及び逸走の防止が要となる.一方,「飼養保管基準」においてマイクロチップ等の装着等,愛護管理対策の枠組みの中で移入種対策を視野に入れた施策を推進する旨を規定している.ついては,移入種対策に関する新制度においては,規制の対象とする移入種の動物の遺棄及び逸走の防止に関する事項及び動物取扱業の遵守すべき事項ついては,すでに「動物愛護管理法」において規定している飼養動物の所有者責任の義務規定の遵守を基本原則に据え,「動物愛護管理法」を整備強化することで移入種対策の実効性の確保を図ることが必要.
  また,現在,環境省で検討中の移入種対策新法制定については,政府提出法案と聞いており,動物愛護管理法の改正に尽力いただいた国会議員にも機会があるごとに要請していることが大森専務理事から補足説明された.
  質疑として,[1]移入種対策新法において動物の個体識別,動物取扱業の規制を盛り込むことにより,2年後に予定されている「動物愛護管理法」の改正の際,同法との整合性等が危惧される.要請には慎重を期されたい.[2]獣医師は,密輸入の問題や人と動物の感染症の危険性をはらんだ野生動物の飼育は反対であるという基本的立場を堅持すべき等の意見があり,大森専務理事から,移入種対策は,飼い主責任の明確化を目的とする「動物愛護管理法」と共通する部分があり,この共通部分については「動物愛護管理法」の整備で対処するのが筋ではないかとの思いがある.このためには,現行の「動物愛護管理法」の整備を併行して行い,整合性をもった新法制定を要請したが,一方で,公益確保の観点からも移入種の個体識別の必要性を訴えること等に努めたいことが説明された.
3.AIPO事業の推進状況に関する件
 辻副会長から,AIPO事業について,次のとおり推進状況が説明された.
(1) 事務手数料の納付については,事務手数料がマイクロチップの販売会社を経てAIPOに納められる(販売会社に100円,AIPOに900円納入)A方式と,飼い主が直接郵便振替を使って納付する(AIPOに1,000円納入)B方式があり,地方獣医師会の実情に合わせて選択いただいている.
(2) 従来は日本動物保護管理協会が月曜から金曜の9時から18時までの対応であったが,7月1日からWEBデータシステムによりインターネットを利用して,365日24時間の対応が可能となった.
(3) 「マイクロチップ注入及びデータ登録・照会などに関する手引」を作成したが,その中では個体識別の有効性,AIPOの紹介,マイクロチップ(種類,規格,大きさ,注入部位,注入方法),リーダー(種類,互換性,読み取りのコツ),データの登録と照会等が記載されている.
(4) 動物管理センター等にリーダーを設置している自治体は限られており,今後,読み取り業務を自治体に要請するが,動物病院では注入の際,確認のためリーダーが必要であることから,動物病院においてもリーダーでも読み取りに対応し,地域社会での信頼の構築に努める.また,事故等で死んだ猫等が清掃局やペットの葬儀屋へ持ち込まれることを考慮するとともに,地方獣医師会が被災動物救護のため,自治体と地域の防災協定を締結する際にも,関係部署等へのリーダー設置を依頼する.
  質疑としては,すでにマイクロチップの注入を実施しているが,7月から新たに対応された部分についても速やかな調整をお願いしたい等の意見があり,辻副会長から今後は,AIPOでの登録を依頼するとともに,すでに注入されているものについては,飼い主の了解を得てAIPOへもデータ登録できることが説明された.

【議決事項】
第1号議案 副会長の順序を定める件
 大森専務理事から,会長に事故あるとき,または欠けたときの職務代行については,三役会議において,金川副会長,辻副会長の順序としたことについて,承認が求められ,異議なく承認された.

第2号議案 専門委員会委員の委嘱に関する件
 大森専務理事から,本年6月末日の専門委員会委員の任期終了に伴い,新たに委員を委嘱することとし,7月31日に開催された平成15年度職域理事連絡会議での協議を経て,選出された委員候補者について承認が求められ,原案(別紙)どおり異議なく承認された.

第3号議案 日本獣医師会会長特別感謝状を授与する件
 大森専務理事から,6月末日をもって職域理事を退任された.竹内 啓氏(学術・教育・研究担当理事:在任期間13年2カ月,5期),藤沢忠世氏(家畜共済担当理事:在任期間16年2カ月,6期)について,本会褒章規程に基づき,日本獣医師会長特別感謝状を授与することについての承認が求められ,異議なく承認された.

第4号議案 専務理事の報酬の件
 五十嵐会長から,専務理事の報酬について説明の上,承認が求められ,異議なく承認された.

第5号議案 賛助会員入会の件
 大森専務理事から,前回の理事会以降,個人賛助会員3名,学生賛助会員1名について入会の承認が求められ,異議なく承認された.

【協議事項】
開業者の職域活動に係る部会組織のあり方に関する件
 大森専務理事から,部会組織のあり方に関する検討経緯及び今後の対応の考え方について(本誌630頁〜631頁参照)説明がされた.
 質疑等として,[1]開業者である構成獣医師数は,全体の3分の1程度であり,部会組織の設立により本会組織全体が開業者中心のものとして運営されることが危惧される.[2]本件の検討に当たっては,団体会員制に基づく本会組織と,開業者である一職域組織との整合性と,財政面における受益者負担制度との関係を十分考慮する必要がある.[3]発展的に解消を予定する開業者が関係する専門委員会とは,どの委員会と考えるのか.先ほど委員の選任が承認された産業動物委員会,小動物委員会においても,本問題を協議するのか.[4]原案の事前検討・調整及び関係団体に対する事前説明は,時期等について慎重な対応をお願いする.[5]本会において大きな比率を占める構成獣医師の問題であり,定款及び定款施行細則に関わる重要な案件であるので,タイムスケジュールに優先されることなく,十分な協議を行い,慎重な対応を望む等の質疑・要望が出された.[1]及び[2]については,開業者以外の構成獣医師は,おのおのの職域において全国横断的な活動の場を有しているが,開業者には活動の場がないということで,本会に開業者の活動の場を設けるということである.特定の職域の構成獣医師を優遇するといったことではない.部会組織をどのように整備するかによって,受益者に求める負担の件を検討・協議していきたい.[3]については,産業動物委員会と小動物委員会であるが,産業動物委員会には,開業者以外も関係するので,これを廃止というわけにはいかない.今後,議論が必要である.[4]については,今後のスケジュールは先ほど説明したとおりであるが,当面,ある程度部会組織の輪郭が示された段階で,職域関係者等と検討し,原案を調整する予定であることが,大森専務理事から説明された.

【その他】
 中川理事から平成15年度学会年次大会の開催にあたり,構成獣医師への参加の呼びかけ等への協力が依頼された後,藏内理事から日本動物保護管理協会会長就任の報告と,動物愛護に対する国民の意識高揚に重要な役割を果たす同会への協力が依頼された.