解説・報告

V|||.食肉及び食鳥処理の現状を踏まえた改正事項
1.と畜場以外の場所での獣畜のとさつ又は解体に係る規制の見直し
 腸管出血性大腸菌やBSEなどの問題に対応するため,と畜場内でとさつ解体を行う場合の施設設備及び衛生管理に関する基準を強化してきたところであり,と畜場以外の場所でとさつできる要件の見直しが必要となっている.今回改正においては近年の適用例がない遠洋航海中の船舶内でとさつする場合を削除することとした.
2.と畜検査中の獣畜の肉等のと畜場外への持ち出しに係る例外規定の整備
 と畜場法及び食鳥検査法においては,検査中の肉,内臓,骨又は皮は場外への持ち出しを禁止されている.食鳥検査法ではすでに例外規定が設けられているが,と畜場法では例外規定が未整備となっているので,BSE検査や病理検査等の精密検査をと畜場外で実施する場合や不可食部位であって公衆衛生上支障がない場合等において,と畜場外にと畜検査中の獣畜の肉,内臓等を持ち出すことができる旨の規定を整備することとした.また,BSE検査中の皮について腐敗が激しいため,検査終了前にと畜場外での処理が要望されているところ,皮については不可食部位であり,BSE感染性はないとされており,EUでは,皮の持ち出しが可能とされていることから,BSE検査中に都道府県知事の許可を得て牛の皮を持ち出すとき等についても持ち出しを可能とすることとした.
3.と畜検査に対する国の関与
 現在,BSE検査のうち,確認検査及び確定診断を厚生労働省で行っているが,これはわが国では伝染性海綿状脳症の専門家が少なく,技術的にも専門性の高い分野であるためである.このように国民の健康に重大な影響を及ぼすおそれのある場合には国のより積極的な関与が求められることから,厚生労働大臣は,特定の疾病に関すると畜検査について自ら行うこととするとともに,都道府県知事に対して,報告徴収の措置等の実施を指示することができることとし,危機管理における国の役割を明確化した.
 
IX.他法に関連したと畜場法及び食鳥検査法の改正
1.と畜検査等の検査対象疾病等に関する規定の整備
 現在,と畜検査等は,厚生労働省令で定める疾病の有無について行うこととされているが,家畜伝染病予防法とと畜場法の検査対象疾病との関係が法律上明らかでないので,生産段階と食肉処理段階を規制する両法の関係を明らかにするため,BSE,口蹄疫,豚コレラ,ニューカッスル病などの家畜伝染病予防法と敗血症,尿毒症,腫瘍,炎症等厚生労働省令で定める疾病が検査対象であることを明記することとした.また,機械油による汚染等の異常はコーデックス基準でも廃棄の対象とされており,食鳥検査においても規制されており,今般,と畜検査でも,獣畜の肉等における汚染等の異常の有無も検査することとした.
 また,食品衛生法においても,[1]と畜場法でと畜検査の対象とした疾病又は異常,[2]食鳥検査法で食鳥検査の対象とした疾病又は異常,[3][1]及び[2]に掲げる以外の疾病又は異常であって厚生労働省令で定めるもの(わが国のと畜検査及び食鳥検査の対象となる獣畜及び家きん以外の疾病又は異常を想定)について,食品としての販売,輸入を規制し,と畜検査及び食鳥検査で合格しない食肉等の流通を規制することとした.
2.と畜検査員に関する規定の見直し
 都道府県にと畜検査員を置くこととしている現行法の規定について,地方分権改革推進会議の意見を踏まえ,と畜検査等を行うために都道府県知事がと畜検査員を命ずる旨の規定に改めることとした.
 
X.罰則の強化(表示義務違反等を含む.)
 営業者等による自主的な法令遵守を促すため,食品衛生法等の違反に対する罰則を見直すこととし,表示義務違反等について,罰金の額を引き上げるとともに,法人に対する罰金の額を引き上げる等所要の見直しを行った.
 
XI.そ  の  他
 と畜場法については,昭和28年の制定以来,本格的な見直しを行う機会がなかったことから法制的な観点から,委任規定の整備,用語その他所要の見直しを行うこととし,と畜場における衛生管理の基準等の省令委任規定の整備のほか,「と畜場」→「と畜場」,「と殺」→「とさつ」,「こん虫」→「昆虫」,「ただし」→「ただし」,「左の」→「次の」などの用語の整理を行った.
 
XII.施 行 期 日
1.食品衛生法の改正
 次の改正事項を除き,公布後3カ月以内で政令で定める日から施行することとした.
登録試験機関,登録検査機関及び総合衛生管理製造過程の見直しについては,公布後9カ月以内で政令で定める日
監視指導計画等による監視指導の実施については,平成16年4月1日
残留農薬等のポジティブリスト制については,公布後3年以内で政令で定める日
2.と畜場法及び食鳥検査法の改正
 次の改正事項を除き,公布後3カ月以内で政令で定める日から施行することとした.
と畜検査中の獣畜の肉等のと畜場外への持ち出しに係る例外の整備は,公布の日
と畜検査等の検査対象疾病等に関する規定及び委任規定の整備は,公布後9カ月以内で政令で定める日
と畜検査員に関する規定の見直し及び監視指導計画に基づく検査及び指導は,平成16年4月1日から施行する.