【報告事項】 |
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1.業務概況等の件 |
前回理事会(11月29日)以降の業務概況について大森専務理事から報告された. |
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2.第3回理事会以降における要請活動に関する件 |
大森専務理事から,前回理事会以降に対応した要請活動として,一部の地方獣医師会,地区連合獣医師から要請された獣医師倫理問題等の対応については,農林水産省生産局畜産部衛生課長あてに獣医業の一層の適正確保について要請等を行い,いわゆる「勧誘診療」等について,法令違反,獣医師倫理逸脱に対する取締りや指導の徹底を依頼するとともに,獣医師法第8条第2項第4号に掲げる「獣医師としての品位を損ずる行為」,第5条第1項第4号に規定する「著しく徳性を欠くことが明らかな者」についての見解を照会していることが説明された.
質疑等として,(1)獣医師法違反等については当局側は微罪ということで取り締まらないのが現状である.(2)某県の保健所に公正取引委員会が調査に入った際,集合注射への参加希望獣医師の制限禁止,済票の前渡の容認,獣医師会との協議による料金設定の禁止等の見解が示されたと聞いており,独占禁止法上の対応も考慮した事業の推進が必要となる.(3)「獣医師としての品位を損ずる行為」の内容を示し,規定する必要がある.(4)獣医師倫理としては,低料金を全面的に否定するのはでなく,獣医療の質の確保の観点から論議する必要がある等の意見があり,(1)については,多くの都道府県の担当部局では,獣医師の自由診療の観点から本問題に消極的であるが,本会でも問題の重要性を提起し,行政の見解を求めていきたい.(3)については,本会からの要請について,現在,農林水産省衛生課等,法令担当部局で検討中であり,また,本会から獣医事審議会の対応を要望していること等が大森専務理事から回答された. |
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3.国における食品の安全確保対策等に関する件 |
大森専務理事から,国の食品安全確保対策として,大要次のとおり説明された.
(1) |
食品の安全性に向けた取組みについて
[1] |
農林水産物の生産段階,食品の製造・流通段階,食品表示の問題について法整備をすることとし,食品安全基本法の制定とそれに関連する個別法の改正が現在,国会へ提出中である. |
[2] |
食品安全基本法では,国,地方公共団体,食品関連業者,消費者等の関係者の責務・役割を定め,施策の策定に係る基本的な方針として,リスク評価,リスク管理,リスクコミュニケーションを明示し,緊急事態等に備えることとしている. |
[3] |
これらを統括するため設置される食品安全委員会は,7名の委員の他に延べ200名程度の専門調査会の専門委員がおり,企画,リスクコミュニケーション,危機管理等に対応することとされている. |
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(2) |
BSE等家畜衛生対策の現状について
[1] |
疑似患畜の範囲については,現行では,OIE(国際獣疫事務局)の基準に準拠し,当該牛が1歳になるまでの間に患畜と同居し,同じ飼料の給与が否定できない牛,患畜が生れた日の前後12カ月の間に生れ,患畜と同じ飼料の給与が否定できない牛,患畜が発病する2年間以内及び発病後に患畜から生れた産子とされており,これまでの5例では発生農場で飼育されていた牛の約8割が疑似患畜として処分された.これについて,生産サイドから,生後1年を超える同居牛の疑似患畜からの除外や処分までの一定の監視期間の設置等の見直しが求められており,農林水産省では5月に開催されるOIEの総会に基準緩和の改正案を上程すると聞いている. |
[2] |
感染源・感染経路の究明については,農林水産省にBSE疫学検討チームを発足させ,疫学による原因究明に取組んでいる. |
[3] |
死亡牛の届出については,24カ月齢以上の牛が死亡した際は,当該牛の死体を検案した獣医師は,所在地を管轄する都道府県知事にその旨を届け出る義務が課せられたので,構成獣医師への指導を依頼したい. |
[4] |
BSEに係る助成措置については,BSE発生農家経営継続支援策として,患畜,疑似患畜として処分された牛に対しては,家畜伝染病予防法の手当金と家畜共済の共済金が助成されるが,さらに経営継続支援金としてBSE対策酪農互助システム支援事業から代替牛導入資金,経営継続費の助成他,発生地域に対する風評被害防止等について支援される. |
[5] |
食品の安全性確保のための農林水産省関係法律の整備に関する法律案について,薬事法が大要以下のとおり一部改正される.
ア. |
許可業者以外の者による動物用医薬品の製造・輸入の禁止及び未承認医薬品の使用の禁止が規定されるが,ただし,獣医師が,その診療対象動物の診察の結果,既承認の医薬品では期待する効能・効果を得ることが困難であると判断した場合などについては,獣医師の裁量権として除外されると聞いている. |
イ. |
動物用医薬品の使用規制の対象の拡大として,現行の「専ら動物のために使用されることが目的とされている医薬品」の他,人体用の医薬品等で食用動物のために使用される蓋然性の高いものについても使用規制の対象となる. |
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[6] |
厚生労働省関係法令の整備については,と畜場法等が大要以下のとおり一部改正される.
ア. |
法の目的に「国民の健康の保護を図る」旨を明記する. |
イ. |
国及び地方公共団体の責務として,獣畜等の疾病の発生,食中毒の発生状況等を踏まえた施策の実施に努めることを規定する. |
ウ. |
厚生労働大臣と農林水産大臣の連携を明記する. |
エ. |
と畜場における衛生管理責任者等の設置とその責務について規定する. |
オ. |
と畜検査等の検査対象疾病等に関する規定の整備としては,家畜伝染病予防法等とも対象疾病の統一等が図られる. |
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なお,金川副会長から次のとおり関連補足説明等が行われた.
(1) |
BSE疑似患畜の扱いについては,スイスやドイツでは,OIEより緩やかな基準で対応している. |
(2) |
BSE特別措置法に基づく死亡牛の全頭検査について,北海道では,本年度,検査体制面等を考慮し,患畜と同時期に生れた死亡牛及び神経症状等を呈した15疾病の死亡牛等,おおむね6,000頭の検査を予定しており,次年度から全頭の検査をする予定である. |
(3) |
北海道でエキノコックス症が猫に発症したが,北海道大学の検査でも飼い猫への感染例があり,一方,弘前大学の調査では青森の豚が感染した例等もあり,道内のみならず他府県にも注意を促す必要がある.
質疑等として,[1]薬事法の一部改正については,小動物医療に関しても獣医師の裁量権に基づく例外は認められるのか.[2]海外での土産の購入は,上限20万まで認められるようだが,10万円までとされていた医薬品についても同様と考えてよいか.[3]小動物用医薬品が非常に少ない現状で公然と人体薬を使用する等の問題もあり,今後,検討の必要がある等の質疑・意見等があり,大森専務理事から[1]については,詳細は通達等で規定されると思われるが,基本的に動物用医薬品である以上,共通してその対象となる.[2]については,土産に合わせるということは考えにくく,今後はインターネットによる購入も含め,個人輸入が一律禁止されること等が回答された. |
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4.獣医学教育の整備充実(国立大学獣医学科の再編整備等)に関する件 |
大森専務理事から,現在,教育体制の整備,充実について,各種要請活動の他,文部科学省に設置された「国立大学における獣医学教育に関する協議会」での対応について大要以下のとおり説明された.
(1) |
協議会は,月1回程度のペースで開催され,獣医学教育に関する各般の関係者をメンバーに,国立大学における獣医学教育の充実を図るための具体的な推進方策が協議される.具体的には獣医学教育の現状と課題,国立大学における獣医学教育研究組織のあり方等について検討し,1年程度を目途に意見を取りまとめる予定である. |
(2) |
これまでの主な意見として,国立のみならず,私立を含めた論議,また,獣医学のみでなく,畜産学を含め農学部全体の議論の必要性,さらに大学定員枠のあり方についても協議する必要性がある等の意見があり,定員枠については,本会から質の向上をどのように確保すべきかが本題であり,具体的な再編整備のあり方に集約して議論すべき旨の意見を提示した. |
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5.獣医師生涯研修事業に関する件 |
大森専務理事から,次年度からの事業実施のため,試行3年間の状況等を踏まえて,獣医師生涯研修事業検討委員会における検討結果に基づく,15年度以降の事業概要等について大要以下のとおり説明された.
(1) |
事業目的・意義として,獣医師の自己研鑽をより体系的なものとするよう,また,本会及び地方獣医師会が支援し,専門知識・技術の高位平準化による国民への信頼の醸成等,本事業の取り組みを社会的使命と位置付けるとともに,社会評価が得られるしくみとするよう事業内容を整備した. |
(2) |
修了証・認定証の交付システム等を以下のように整備し,事業の言わば出口論を明確にした.
[1] |
研修実績が1年間に10ポイントに達した獣医師に対しては本人の申告に基づき,研修実績証明書(従来のポイント取得証明書)を交付する. |
[2] |
研修実績証明書を連続2回取得た後,研修実績の申告が3回目に当る獣医師には研修プログラム修了証(修了証)を交付する. |
[3] |
修了証を連続2回取得た後,研修実績の申告が3回目に当る獣医師には生涯研修継続参加認定証(認定証)を交付する. |
[4] |
年度末に地方獣医師会長あて文書をもって事業推進を依頼するとともに,新たに作成した手引書(保存版)を日本獣医師会雑誌第56巻第4号に同封して全構成獣医師に送付し,周知・徹底を図る. |
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