症例: |
症例[1],[2](以下[1],[2])ともに牛(肉用種),去勢,3歳. |
経歴: |
[1],[2]ともに約12カ月齢でニュージーランドから日本へ導入され,[1]は静岡県内,[2]は宮崎県内の牧場で約20カ月肥育された後,出荷された.[1]については,飼料中のヨウ素量の不足が確認された. |
臨床的事項: |
[1],[2]ともに,異常を認めず. |
肉眼所見: |
[1]では甲状腺左葉・右葉とも,対称性に腫大(長径×短径:7.0×3.3cm).割面は充実性でやや膨隆,淡褐色を呈し,甲状腺固有の構造は消失していた.[2]では甲状腺左葉・右葉とも,著明な腫大は認められず,大きさ・割面ともに正常甲状腺とほぼ同様であった. |
組織所見: |
[1]の甲状腺では不整形で大小不同の濾胞の増生を認めた.濾胞の形態はさまざまで,コロイドを満たす像や充実性に増殖する像,濾胞上皮が腔内に乳頭状に増殖する像などもみられた.濾胞上皮の多くは単層で円柱状を呈し,核の異型性はみられなかった.[2]の甲状腺では大小不同の濾胞の増生を認めた.濾胞内にコロイドを含む像が多くみられたが,一部充実性に増殖する像も認めた.濾胞上皮の多くは単層で円柱状を呈し,核の異型性はみられなかった. |
診断名: |
症例[1],[2]ともにび漫性甲状腺腫. |
討議: |
[2]において,診断名や原因についてさまざまな討議があったが,両側性に病変があり栄養性と考えて妥当なこと,組織所見等から軽度の甲状腺腫と考えた.また原因についてはさらなる検索が望まれた. |