行政・獣医事


牛海綿状脳症対策特別措置法の施行について

 「牛海綿状脳症対策特別措置法(平成14年法律第70号)」が本年7月4日施行された.同法のポイントおよび同法関連施行規則の概要等は次のとおりである.


牛海綿状脳症対策特別措置法(平成14年法律第70号)のポイント
 
 第1 目 的
 この法律は,牛海綿状脳症(BSE)の発生を予防し,及びまん延を防止するための特別の措置を定めること等により,安全な牛肉を安定的に供給する体制を確立し,もって国民の健康の保護並びに肉用牛生産及び酪農,牛肉に係る製造,加工,流通及び販売の事業,飲食店営業等の健全な発展を図ることを目的とする.
 第2 国及び都道府県の責務
 国及び都道府県(保健所設置市を含む.以下同じ.)は,BSEの発生が確認された場合又はその疑いがあると認められた場合には,第3の基本計画に基づき,速やかに,BSEのまん延を防止する等のために必要な措置を講ずる責務を有する.
 第3 基本計画
1  農林水産大臣及び厚生労働大臣は,BSEの発生が確認された場合又はその疑いがあると認められた場合において国及び都道府県が講ずべき措置(対応措置)に関する基本計画を定めなければならない.
2  基本計画においては,(1)対応措置に関する基本方針,(2)計画の期間,(3)BSEのまん延の防止のための措置に関する事項,(4)正確な情報の伝達に関する事項,(5)関係行政機関及び地方公共団体の協力に関する事項,(6)その他対応措置に関する重要事項を定めるものとする.
 第4 牛の肉骨粉を原料等とする飼料の使用の禁止等
1  牛の肉骨粉を原料又は材料とする飼料は,別に法律又はこれに基づく命令で定めるところにより,牛に使用してはならない.
2  牛の肉骨粉を原料又は材料とする牛を対象とする飼料及び牛に使用されるおそれがある飼料は,別に法律又はこれに基づく命令で定めるところにより,販売し,又は販売の用に供するために製造し,若しくは輸入してはならない.
3  1及び2による規制の在り方については,BSEに関する科学的知見に基づき検討が加えられ,その結果に基づき,必要な見直し等の措置が講ぜられるものとする.
 第5 死亡した牛の届出及び検査
1  農林水産省令で定める月齢以上の牛が死亡したときは,当該牛の死体を検案した獣医師(獣医師による検案を受けていない牛の死体については,その所有者)は,遅滞なく,都道府県知事にその旨を届け出なければならない.
2  1による届出を受けた都道府県知事は,当該届出に係る牛の死体の所有者に対し,当該牛の死体について,家畜伝染病予防法第5条第1項の規定により,家畜防疫員の検査を受けるべき旨を命ずるものとする.ただし,地理的条件等により当該検査を行うことが困難である場合として農林水産省令で定める場合は,このかぎりでない.
 第6 と畜場におけるBSEに係る検査等
1  と畜場内で解体された厚生労働省令で定める月齢以上の牛の肉等は,別に法律又はこれに基づく命令で定めるところにより,都道府県知事又は保健所設置市の長の行うBSEに係る検査を経た後でなければ,と畜場外に持ち出してはならない.
2  と畜場の設置者等は,別に法律又はこれに基づく命令で定めるところにより,牛の特定部位(牛の脳,せき髄等)については,焼却により処理しなければならない.
3  と畜業者等は,別に法律又はこれに基づく命令で定めるところにより,牛のと殺又は解体を行う場合には,牛の特定部位による牛の枝肉等の汚染を防ぐように処理しなければならない.
 第7 牛に関する情報の記録等
1  国は,牛1頭ごとに,生年月日,移動履歴その他の情報を記録し,及び管理するための体制の整備に関し必要な措置を講ずるものとする.
2  牛の所有者(所有者以外の者が管理する牛については,その者)は,牛1頭ごとに,個体を識別するための耳標を着けるとともに,1の情報を提供しなければならない.
 第8 牛の生産者等の経営の安定のための措置
 国は,基本計画に定められた計画の期間において,BSEの発生により経営が不安定になっている牛の生産者,牛肉に係る製造,加工,流通又は販売の事業を行う者,飲食店営業者等に対し,その経営の安定を図るために必要な措置を講ずるものとする.
 第9 協力依頼
 農林水産大臣及び厚生労働大臣並びに都道府県知事及び保健所設置市の長は,国,独立行政法人,地方公共団体,獣医師団体,牛の生産者団体,試験研究機関,検査機関等に対し必要な協力を求めることができる.
 第10 正しい知識の普及等・調査研究体制の整備等
1  国及び地方公共団体は,教育活動,広報活動等を通じたBSEに関する正しい知識の普及により,BSEに関する国民の理解を深めるよう努めるとともに,この法律に基づく措置を実施するに当たっては,広く国民の意見が反映されるよう十分配慮しなければならない.
2  国及び都道府県は,BSEの検査体制の整備,BSE及びこれに関連する人の疾病の予防に関する調査研究体制の整備,研究開発の推進及びその成果の普及並びに研究者の養成その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない.
 第11 附  則
1  この法律は,公布の日(平成14年6月14日)から起算して20日を経過した日(平成14年7月4日)から施行する.ただし,第5の2は,平成15年4月1日から施行する.
2  飼料安全法の一部改正【(1)帳簿の記載事項の追加及び保存期間の延長,(2)農家に対する報告徴取,立入検査等,(3)製造業者等の事前届出,(4)販売前の廃棄等の命令,(5)農林水産省と厚生労働省との連携の強化,(6)製造業者等に対する罰則の強化】
3  家畜伝染病予防法の一部改正【(1)BSEの名称変更,(2)死亡牛の検査,(3)農林水産省と厚生労働省との連携の強化】
4  獣医師法の一部改正【診療簿及び検案簿の保存期間の延長】
5  食品の安全に関する行政の見直し
 政府は,BSEの発生を予防できなかったことにかんがみ,関係府省の連携を強化する観点から,生産から消費に至る食品の安全に関する行政の抜本的な見直しにつき検討するものとする.

 

「牛海綿状脳症対策特別措置法」(附則部分)による措置