わが国の食品安全行政への国民の不安・不信感は,残留農薬,食品添加物,飼料添加物などの化学物質やダイオキシン,内分泌かく乱化学物質などの問題が底流にあったことに加え,O-157食中毒事件,BSE問題,そして雪印食品の偽装表示事件をはじめとする一連の不祥事により,今や頂点に達している.政治の最も重要な使命は,国民の生命・健康を守ることであり,その意味で,麻生太郎政務調査会長の特命で設置された「食の安全確保に関する特命委員会」に与えられた課題は,政治の責任そのものを問われたことにほかならない.
1962年,ジョン・F・ケネディ米国大統領は,4つの消費者の権利を,政府が義務として遂行できるよう「消費者の利益保護に関する特別教書」を連邦議会で演説した.その4つの消費者の権利における第1番目は,「安全を求める権利」であり,健康あるいは生命に危険な商品の販売からの消費者の保護であった.40年も前のケネディの精神は,その後,関連法制度の整備として確りと根付き,今日の米国国民を守っている.
翻って,わが国の現状をみると,誠に遺憾なことに,これまでの食品の安全に関する諸施策には,消費者保護に立った視点は殆ど希薄であると言わざるを得ない.今回の危機管理に際しての対応においても,食品安全に関する行政の危機意識の欠如と行政の生産者優先・消費者保護軽視等により,BSE発生を未然に防ぐことができなかった.
本特命委員会は,わが国の食品安全に関する現行体系をあらゆる角度から見直すために,各界各層から幅広く有識者の意見を聴取するなど議論を深め,その成果をここに提言としてとりまとめた.
食品の安全に関する行政,関連法制度の整備・充実等について,国民の「安全を求める権利」として,中長期的展望も含め,いかにあるべきか,この提言を政府が真摯に受けとめて実行されることを求めるものである.
食の安全確保に関する特命委員会
委員長 野呂田芳成 |
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