今後の対応
 飼料安全法の省令が改正され,肉骨粉等の牛の飼料への利用が禁止されたことから,今後,BSEのまん延は防止され,感染の拡大は起こらない.
 今後の対応としては,第一にこれまでの発生事例の調査が進み,感染原因および経路が究明されることにより,感染の恐れがある牛が特定され,防疫措置により清浄化が進むことである.
 そのために国が中心となって,飼料原料の徹底した追跡やBSE発生国および中間国を経由した輸入肉骨粉の国内における流通経路等の調査が進められており,一日も早い究明が期待される.
 国内飼養牛のBSE感染の有無に対する消費者の関心はきわめて強く,低迷する牛肉消費の回復を図るには,すべての牛の検査を行い,感染の有無を確認し,正確な情報を提供するとともに,実情に適合した対策を講ずることが重要である.具体的には,日本の現状を他国の発生状況に照らし合わせるとどの時期にあるのか,今後どの程度の感染牛が確認されると予測されるのか等について,検査成績を基に明らかにすることが,国内牛肉の信頼および消費回復に必要であると考える.
 また,国は家畜伝染病予防法の改正による法整備,死亡牛(24カ月齢以上)の全頭検査等について検討を進めている.
 飼料の安全検査については,すでに本県では独自に推進しているが,国の方針としてもBSE清浄化のための強化が示されている.
 さらに,今後BSEに関する研究が進められ,生前診断が可能となり,感染機序が解明されれば,発生時の疑似患畜対象も限定され,生産者の直接的な被害や消費者の不安に起因する風評被害も大幅に減少するものと期待される.
 現在,乳用廃用牛の処理が滞っており,全国で4万5千頭が待機しているとされている.
 これは食肉処理場での受け入れ体制の問題および生産者がBSE発生を懸念するための出荷自粛が大きな原因と考えられる.
 廃用牛を対象とした処理施設については,食肉処理場の分別処理や廃用牛専用食肉処理場の整備等その対策が検討されているが,生産者の発生に対する不安については,まだ解決されていない.
 本県においても,BSE発生後,千葉県産の牛というだけで枝肉価格が低く取り引きされたし,北海道や群馬県においても,発生農場のみならず周辺の肉牛農家および酪農家に大きな影響を与えている.
 発生した農場に対しては国・県等により支援対策が講じられているが,周囲に与える影響が大きいことが生産者の不安に繋がっているものと考えらる.
 これらの問題解決のためには,BSE発生による風評被害支援対策を強化・充実し,再建可能な補償体制を構築する必要がある.
 現在,生産段階においても,給与飼料の再点検によりBSE感染の危険性が否定されていること,食肉処理場におけるBSE全頭検査は世界でも最も厳しく進められており,安全な牛肉が供給されていることについて消費者に理解を得るよう努めることが重要である.


 
 終 わ り に
 BSE発生への農林行政対応に関する批判が大きい.結果論からみれば,危機管理体制の整備や行政対応の遅れなど万全であったとはいえず,反省すべき点は多々あり,改善していかなくてはならない.
 しかし,農林水産省が行ったBSEサーベイランスを受け,本県においては積極的な取り組みを行い,国内初のBSE感染牛が確認されたことは事実である.このサーベイランスが行われなければ,発見されないBSE感染牛が肉骨粉等に処理され,牛用飼料への誤混入の危険性が継続したことは否定できない.我田引水となるが,農林水産省が中心となって進めたBSEサーベイランスが必ず評価される時がくるものと信じている.
 「口蹄疫」をわずか3カ月で撲滅した日本の家畜防疫は国内外から高く評価されており,「牛海綿状脳症」に対しても,今回の確認を契機として種々の対策が講じられたことにより一日も早く清浄化し,畜産に対する消費者の信頼回復が図られるとともに,わが国からvCJDの患者の発生がないことを願っている.